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第219回目のラジオ配信。「法事の掛け軸」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
これは香川県にいる浄土真宗のお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをする音声配信です。
年忌法事やお祥月命日のお参りを家でする時に、皆様お仏壇のなかのお供え物はきちんとお飾りしようと頑張っていますよね。
でも床の所までは気にかかっていないのか、床がごちゃごちゃとしていることもあります。
法事のときに床に仏さまの掛け軸が掛けられていると、おっと、ご丁寧にしているなあと感じます。
今回は法事をするときの掛け軸についてお話していきます。補足も最後に3つ紹介します。
まずはお仏壇がないときの掛け軸から話します。
お仏壇がないということは、家におまつりする仏さま、つまりご本尊様がないということですね。
例えば、ご家族が亡くなってすぐの枕のお勤めのときに、お仏壇がないというケースがあるでしょう。
こういうときは、お葬式をする仏教宗派、招くお坊さんの宗派に合わせた仏さまの掛け軸を掛けることになります。
例えば浄土真宗なら、南無阿弥陀仏の六字のお名号や阿弥陀仏のお姿がかかれた絵の掛け軸をかけるのが一般的です。
他の仏教宗派のことはよく分かりませんが、禅宗なら南無釈迦牟尼仏、真言宗なら南無大師遍照金剛、日蓮宗なら南無妙法蓮華経といったものになるようです。
詳しくはお勤めをするその宗派のお坊さんに聞くのが間違いないです。
続いてお仏壇がすでにあるときについてのお話をします。
つまり家にご本尊様の仏さまがまつられている場合です。
お仏壇がある場合は床に掛け軸をかけることになりますが、法事のとき、すでに拝む対象のご本尊様はお仏壇にまつられているので、床に掛ける掛け軸はなんでもいいです。
でもやっぱり仏教行事である法事に相応しい掛け軸の方がなおいいです。
なので、法事のときは、日本の神様が描かれているもの、天照大神・天照皇大神や七福神といった神様の掛け軸、亀や鶴や干支といった動物、松竹梅や風景といった掛け軸よりもその宗派にあったものを掛けた方がなおいいです。
お仏壇にまつられている仏さまとダブっても何も問題ないです。
お仏壇に阿弥陀様の掛け軸や像がまつられていた場合でも、床に南無阿弥陀仏のお名号の軸を掛けていただいたらなおご丁寧です。
法事のとき、床にかける掛け軸はなるべくそのおつとめする仏教宗派に関係するものがいいです。
なので、浄土真宗なら、阿弥陀様に関係するものです。
阿弥陀様でもいいですし、阿弥陀様のそばにいる観音菩薩や勢至菩薩が描かれた掛け軸でもいいです。
また宗祖の掛け軸、親鸞聖人でもOKです。
他の宗派のことはあまり分かりませんが、例えば真言宗なら弘法大師空海であったり、13の仏が描かれた十三仏の掛け軸を掛けたりするようです。
以上で、法事のときにかける掛け軸についてまとめますね。
お仏壇がないときは、例えば葬儀のときは、おつとめする仏教宗派の仏さまの掛け軸を掛けます。浄土真宗なら阿弥陀仏のお名号や絵像です。
お仏壇がすでにあるときは、床のところに、おつとめする仏教宗派に関係する掛け軸をかけます。お仏壇の中に掛けられている掛け軸とダブっても問題ないです。
今回のお話は短いので、以下、補足を3つ紹介します。
補足一つ目は、風鎮は使わない方がよろしいことについてです。
床に掛ける仏さまの掛け軸に風鎮を用いない方がいいと言われています。
風鎮とは掛け軸の一番下にある丸い軸の両端にぶら下げられるものです。
風鎮を仏さまの掛け軸に使わない理由は正確にはよく分かりません。
ただ風鎮は装飾品という扱いです。
お掛け軸にかかれている仏さま・仏さまのお姿が大事なのであって、装飾品である風鎮はおまけです。
お寺の本堂やお寺のお内仏・仏間に掛けられている掛け軸を見ていただいたらわかりますが、お寺の仏さまの掛け軸には風鎮がついていません。
風が強く掛け軸がバタバタと動き、重しとしてどうしても風鎮を使わざるえない時は、仕方なく使ってもいいですが、法事が終わると速やかに外してください。
風鎮を使うと、その重みで掛け軸が傷みやすいからです。
二つ目の補足です。掛け軸を下ろすタイミングについてです。
法事の時には床に仏さまや宗祖のお掛け軸を掛けるとより丁寧です。
じゃあ、その掛け軸はいつ下ろしたらいいでしょうか。
これは、法事と平時のメリハリをつけるために、法事が終わると、床にかけていた仏さまの掛け軸はすぐに下ろしていただいたらOKです。
掛け軸は掛けっぱなしにするよりは、やはりその時その時に応じたものに入れ替えてあげた方がよりいいです。
法事の時が終わると、平時として、いつもおかけになっている掛け軸にすぐに戻していただいてOKです。
ツルカメの縁起物でもいいですし、天照大神のような日本の神様でもいいですし、内容はそれぞれお任せ致します。
ちなみにお寺の場合、平時にはどんなものをかけているのか紹介します。
私のいる寺、円龍寺のお座敷の床を例に挙げると、普段は祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きありと平家物語の冒頭の言葉のお掛け軸をかけています。
お寺の法要のときには、浄土真宗の宗祖親鸞聖人がよまれた高僧和讃の最後、回向にあたる「南無阿弥陀仏をとけるには 衆善海水のごとくなり かの清浄の善身にえたり ひとしく衆生に回向せん」のお掛け軸を掛けています。
祖母が亡くなったときには、お座敷で枕のお勤めをしました。そのときには、「帰命尽十方無礙光如来」という阿弥陀様の掛け軸を床にかけました。
参考になれば幸いです。
また、他のお寺さんの床を見ますと、お正信偈の御文であったり、宗祖親鸞聖人の肖像のお掛け軸のこともあります。
掛け軸は平時のときとのメリハリをつけるために、法事・法要が終わったら、ほどよいタイミングで下ろしていただけたらと思います。
最後3つ目の補足です。
仏さまの掛け軸には落款や署名がない方がいいとされます。
お寺にまつられている仏さまやお仏壇の仏さまを見ていただいたら分かると思いますが、お寺の掛け軸には、落款の印や誰それが書きました、謹んで書きましたという署名はないと思います。
落款や署名があると、その掛け軸は作品、美術品のようなものになってしまうからです。
法事の時、拝むのは仏さまです。作品ではありません。
なので、もし床に仏さまに関する掛け軸をかけられる場合は、落款や署名が入っていない非常にシンプルな掛け軸がよろしいです。
落款とかがないと、誰が書いたのか分からない、いつ書いたのか分からないと思う人もいるかもしれませんが、そういうのは、掛け軸を納める箱や、掛け軸の裏側に裏書として書かれています。
本山から下付された阿弥陀様のご本尊様の掛け軸をひっくり返してみたら分かりますが、本山よりたまわった仏さまだと、裏に方便法身尊形のお言葉と本山ご門主様の名と判が書かれていることがわかります。
あってもダメではないですが、法事の際に掛ける仏さまの掛け軸の表には、落款や署名はない方がいいです。
法事の時の掛け軸に関するQ&A
- Q風鎮(ふうちん)は使わない方がいい?
- A
使いません。風鎮は仏事の掛け軸にはふさわしくないとされます。
風鎮は装飾品であり、メインは掛け軸の仏さまから。
法事で掛けられる仏号・仏画の掛け軸には使いません。
- Q掛け軸は法事のあと、いつ下ろしたらいいのか?
- A
法事が終わったらすぐに下ろしていただいて大丈夫です。
法事のあとは、平時の掛け軸に入れ替えてください。
法事でない時は、鶴亀や松竹梅といった縁起物や、七福神や天照皇大神といった神様でもいいです。
法事の時には仏教行事にあった仏さまの掛け軸をかけていただければと思います。
- Q落款(らっかん)はない方がいいのか?ある方がいいのか?
- A
法事のときの仏さまの掛け軸には落款がない方がいいです。
落款の印や署名があると、その掛け軸は作品になってしまうからです。
法事では仏さまを敬い拝み、作品を拝むわけではないからです。
落款があっても構いませんが、ない方がよりふさわしいとされます。
- Q仏さまの掛け軸はいつ掛ける?
- A
年忌法事や祥月参りの他、以下のときも掛けます。
- 葬儀・中陰の間
- 春と秋のお彼岸
- お盆
- 年末年始
なるべく法事のときには、仏さまの掛け軸をかけることを心がけましょう。
浄土真宗なら、阿弥陀仏や宗祖親鸞聖人に関する掛け軸です。
- Qお仏壇がある場合は、床に掛け軸はいらないのか?
- A
お仏壇がある場合でも、床に掛け軸をかけていただけたらと思います。
ポイントとしては、お仏壇のご本尊様(仏さま)の掛け軸は、その宗派の本山より授かってください。
床の仏さまの掛け軸(仏号・仏画)は、どこでお求めになっても大丈夫です。
「円龍寺かっけいラジオ」では、番組へのメッセージを募集しています。ご感想や取りあげてほしいテーマなどもお寄せ下さい。