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第84回目のラジオ配信。「お仏壇」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
2021年4月20日の今回はお仏壇をテーマにして雑談していきます。
最近ではお仏壇を閉じられる・しまわれる・処分される家が増えつつありますが、一方でお仏壇を新しく迎えられるご家庭もあります。
その時によく聞かれることが、お仏壇をどこにどのように置くかについてです。
お仏壇とはご家庭の中でお参りされる仏様であり、お寺でおまつりされている仏様と同じように扱っていただければいいのですが、それだけだと分かりにくいですよね。そこでもう少しお仏壇の配置や向きをお話していきます。
ただし注意点ですが、お仏壇のことは宗派によっても違いますし、地域性による違いもあるでしょう。また昔のご家庭の置き方もあれば、今風の置き方もあるでしょう。
これは香川県の浄土真宗のお坊さんの私がする仏壇のお話だとご留意くださいませ。
さてお仏壇の配置と向きですが、結論をコンパクトに先に言いますと、どこに置いてもOKですし、向きもどっちを向いていてもOKです。
浄土真宗10派すべての決まりは知りませんが、私の知る限り、浄土真宗はお仏壇の配置や向きをこうしなさいよとハッキリ決めてはいません。お好きなように、それぞれのご家庭の事情に合わせて、お仏壇を迎えてくださればOKです。
一方で、こんな風に置けばどちらかと言えば浄土真宗では相応しいですよ。仏様に参るときにはいいですよという置き方もあります。
浄土真宗の仏様は阿弥陀如来で、この阿弥陀という仏さまのお浄土の世界は西方極楽浄土です。ですので、どの向きに置けばいいのかと言われれば、お仏壇を東向きに置きます。するとお仏壇の中に安置した阿弥陀様の仏像を、西に向かってお参りすることができます。
阿弥陀様の西方の極楽の仏の世界に思いをはせるのであれば、やっぱり仏壇は東向きがふさわしいと考える人も多いですし、昔はそのようにしていた家が多かったと聞いています。
でも阿弥陀様は西の極楽の仏の世界にいるとは言いながらも、私たちのそばに自在に、いつでも常にいらっしゃるので、絶対に西に向かって拝まないといけないんだ!と、気にしすぎる必要もありません。
むしろ仏さまを置く場所を気にかけたほうがいいかもしれませんね。
家の中で仏さまを安置する部屋・おまつりする部屋のことを仏間といいますよね。仏間は仏さまを粗末にならないようにおまつりし、心静かにお参りできる空間のことです。
仏間という特殊なつくりの部屋があるわけではなく、仏さまを安置している部屋、仏壇のある部屋が仏間になります。
それを踏まえて大切なのが、
- 仏さまを家族そろってお参りできる空間であること
- 仏壇にお参りしやすい場所・集まりやすい場所であること
の二点が大切です。
よくあるパターンですが、昔はお座敷と言われる畳の敷かれた広い部屋に仏壇が置かれていました。
家族や親戚と法事などでのお参りの人数が多い場合、広い部屋が必要なので、自然と広い部屋に仏壇が置かれるのですが、そうなると家の中の隅っこの部屋に仏壇が置かれてしまい、日常ではなかなかお仏壇にお参りしにくくなりますよね。
特別な時にみんながそろって仏壇にお参りできるように広めの部屋に仏壇をおくことももちろん大切なことですが、毎日の常の時にもお参りしやすいようにすることも大切です。
最近では仏壇を置かない家や、仏壇があっても建物の隅っこで仏様のすぐ後ろは建物の外という家も多いです。
でもかつての仏壇は家庭の中心となるもので、家の大黒柱のような存在でした。寺のお堂の中央に仏様が安置されているように、仏壇もまた家の中央付近がふさわしいと考える人もいます。地域性もありますが、昔は家の中央に仏様が安置されるようにしていた家もあります。
中央付近にあることで、日々の生活の中でも自然と仏様にお参りすることもできますし、お花を入れ替えたりお供え物をしたりと、粗末にならないようになります。
それこそ仏さまを安置する場所を仏間というように、家の中央付近に安置される場合は、本当に仏様専用の空間がコンパクトに用意されています。
そのような家にお参り行きますと、仏様の左右にふすまがあって、そこから家の人が出入りして仏様にお光を灯したりお花をお供えしたりしています。
もちろん現代では新たにそんな空間を設けるのは難しいですし、そこまでする必要もないです。
ただ私が言いたいことは、仏壇はお参りしやすい場所・集まりやすい場所であることです。お仏壇はただ家にあれば良いのではなくて、なるべくお参りできるようにするのが大切です。お仏壇は家の中の仏様ですから。
常にはお仏壇に十分なお世話ができなくても、日常の中で視界に入り近くを歩き、お仏壇の存在を生活の中で感じることが大事です。
それこそ浄土真宗ではお仏壇のある空間のことを、お内仏と表現したりします。お内仏とは、簡単に言えば、家の内側にある仏様のことです。
お寺にも本堂とは別に、お坊さんが住む居住スペースの方にお内仏という仏さまを安置する空間があります。
お仏壇は家にただあれば良いのではなく、家庭の中で家族を見守る存在として、家の内側の家族が気軽に集まれる場所で手を合わせていきます。
お坊さんも寺の本堂だけでなく、居住スペースの方にも日常の身近な仏様としてお仏壇、お内仏をおまつりしています。
今日のお話をまとめますと、浄土真宗ではお仏壇をどこに置いてもOKですし、向きもどっちを向いていてもOKです。明確なルールはありません。
ただしかつては西に向かって拝められるように、仏壇を東向きに配置することもありました。
しかし家の造りも昔と今とで違うでしょうし、そこまでこだわりすぎる必要もないでしょう。
むしろ仏壇を家の誰もが気軽にお参りできる場所に、そしてみんながそろってお参りできる場所に置くことがより大事なことだと言えます。
仏壇は家の内で、大黒柱のように家族を見守る存在として、また粗末にならないように、常に身近な存在であるようにしていきましょう。
ちなみにですが、浄土真宗では阿弥陀様の西方極楽浄土を拝むように言われ、寺の本堂も西に向かって拝められるようにお堂を西から東方向に、東向きに配置されているんだよと説明されることも多いでしょう。
ところが実際には、浄土真宗のお寺も西から東方向と、東向きにお堂が配置されていなかったりするんですよね。
各末寺の寺院は東向きでなくても、さすがに真宗十派の浄土真宗の10の本山はすべて東向きだと思われるでしょうが、実は、三重県にある真宗高田派本山の専修寺と、滋賀県にある真宗木辺派本山の錦織寺は、南向きの本堂で仏さまを北に拝むようになっています。
高田派専修寺の南向きは、風向きや道路事情によるもので現実的な理由です。
木辺派錦織寺は実は浄土真宗の本山の中では最も歴史が古くて、858年の天安年間に毘沙門天の象を安置したことが始まりで、毘沙門天は北を守護する神さまとされて、北に拝む南向きのお堂となっています。
なので浄土真宗なんですが、この2つの本山の本堂は西に拝む東向きではなく、南向きにお堂が造られています。
真宗十派本山の本堂の向き
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