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第139回目のラジオ配信。「仏教の聖地」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
この番組では香川に住むお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをするラジオです。
139回目の今回は、聖地について雑談していきます。
最近、ニュースをみて思うのが、聖地や聖地巡礼という言葉がすっごく多くなってきたように感じます。
実際、今日6月7日のニュースでも、30周年を迎えるアニメ『忍たま乱太郎』では、原作者が兵庫県尼崎出身ということで、尼崎を聖地巡礼という表現で紹介していました。
アニメ・映画・ドラマに関することが多いですが、ヤフーニュースなどのインターネットで調べると、ほぼ毎日のように、聖地や聖地巡礼に関するニュースが登場します。
改めて、辞書などで「聖地」の意味を調べてみました。
ひとつ目の意味は、宗教の発祥などに関係が深く、神聖視されている土地や地域のこと。
お坊さんの私は、この一つ目が「聖地」の意味だと認識していましたが、聖地にはもうひとつ意味があるようです。
特定の分野において重要な場所。あこがれの場所。マンガやアニメ、映画などの舞台となった場所や、ゆかりのある場所のこと。
最近ニュースの話題になるのは、こちらの町おこしといった、宗教とは関係のない、聖地巡礼の言葉です。
聖地って、聖の地って書きますよね。
聖には「あこがれ」という意味はないので、なんとなく宗教的な意味に私は思いがちなんですけども、最近では、日本全国にいろんな分野の聖地ができて、聖地巡礼というものがあるようです。
さて私は仏教のお坊さんなので、今回は仏教の聖地についてちょこっとお話していきます。
聖地・聖の地はだいたいの宗教にありますよね。
例えば、イスラム教なら、預言者ムハンマドの生まれた場所の、メッカが一番有名ですね。
キリスト教なら、聖ペトロの墓があるバチカンがカトリックの大聖地ですね。
ちなみに同じキリスト教でもプロテスタントには聖地という考えがないので、バチカンはプロテスタントでは聖地になりません。
さて、世界の宗教にはいろんな聖地がありますが、仏教ではどこでしょうか。
仏教には仏教四大聖地という言葉があり、2500年ほど前に仏教を開かれたお釈迦様にまつわる場所が聖地となっています。
この四大聖地は、後の人が、ここが仏教の聖地だと決めたわけでなくて、お釈迦様が亡くなる直前の最後の旅でお話した内容・最後の説法の涅槃経の中で、お釈迦様自身が示した場所です。
涅槃経はいろいろ訳されているんですが、その中の一部をここでは紹介しますね。
場面はお釈迦様が沙羅双樹の木の間で横になったところです。
お釈迦様のもとに安居という修行を終えた修行僧がやってきました。
修行僧らが、お釈迦様に今後あうことはできないかと心配します。
すると弟子の阿難に対してお釈迦様は言います。
信仰心のある人たちは、次の4つの場所で、仏になる菩提心を起こすだろう。
如来が生まれた場所・如来が悟った場所・如来がこの上ない法を説いた場所・如来が涅槃(亡くなった)場所。
阿難よ、この4つの場所は、如来が亡くなったあとでも、修行する男女、そうでない一般の家庭の男女も訪れることでしょう。
このお経文のお話の部分が、仏教の4つの聖地のもととなった由来です。
ちなみにこの4つの聖地の後に、阿難はお釈迦様の遺体について質問しますので、お釈迦様は自分の遺体はこうこうこうして処理して、塔をたてなさいと具体的な葬儀のお話を続けていきます。
そんな風に仏教では、お釈迦様が言われた場所が四大聖地として定められています。
1つ、生まれた場所はインドの北・ネパールの南にあるルンビニー。
2つ、悟った場所はインドの北東、菩提樹のあるブッダガヤ。
3つ、この上ない法を説いた場所はお釈迦様が悟りを開き、最初に説法をした鹿野園(サールナート)。
4つ、お釈迦様が涅槃(亡くなった)場所は、クシナガラ。
この4つが仏教の聖地で、すべてインド北部に集中しています。
また補足として、四大聖地の他にも、仏教八大聖地というものもあります。
四大聖地にあと四カ所が加わったのが八大聖地なのですが、残りの四カ所がいつ・どのように加わったのかは私は知りません。
場所は、サールナートで最初の説法をした後のラージギル(王舎城)です。
ラージギル王舎城は竹林精舎という最初の精舎が作られた場所で、観無量寿経や法華経などが説法された霊鷲山という山がある場所です。
また舎利弗や目連といった弟子が加わった場所もラージギル・王舎城です。
次の場所は祇園精舎という場所です。舎衛城というお城の外にある精舎で、当時とくに賑わっていた場所だったようです。
次の場所は、ヴェーサーリーという場所です。
あんまり耳にしない場所だと思います。場所で言うと、ラージギル王舎城と、生まれた場所ルンビニーの間にある町です。
ヴェーサーリーはお釈迦様が最後の旅をする中で立ち寄ったところで、ちょうどインドの雨の時期に重なり、長いことお釈迦様がとどまった場所です。またお釈迦様自身が自らの別れ・もう間もなく死ぬことを弟子の阿難に告げた場所です。
生まれの地ルンビニー、悟りの地ブッダガヤ、説法の地鹿野園(サールナート)、亡くなったクシナガラの4つ
と他、ラージギル(王舎城)、祇園精舎、ヴェーサーリー、ここまでが八大聖地のうちの7箇所です。
最後の一つはサンカーシャというお釈迦様が亡くなった後の伝説がもとになった場所です。他7つの聖地と比べると、だいぶ西のほうに位置します。
伝説がもとになっているので、私はなんとも言えないです。
以上、八箇所が仏教でいうところの聖地です。
私もいずれは仏教の聖地に行きたいところですが、まだ海外に出たこともないので、はたして生きているうちにいけるか分からないところです。
ちなみに日本には日本の仏教聖地なるものもあるそうです。
ひとつは弘法大師空海が開いた和歌山県にある高野山金剛峯寺。もうひとつが、伝教大師最澄が開いた滋賀県にある比叡山延暦寺です。
どちらも空海・最澄の最後の場所ですね。
ただ冒頭にお話したように、今は日本全国いろんなところにいろんな形の聖地があります。
日本の仏教聖地は高野山金剛峯寺・比叡山延暦寺ともされるようですが、それ以外にもいろいろあって、聖地巡礼・お参りしたらいいと思います。
例えば私の住む香川県なら、善通寺という寺があります。
善通寺は弘法大師空海が生まれたとされる場所です。
他にも高松には浄土宗の法然が立ち寄り、法然が彫ったとされる阿弥陀様がある法然寺などなど、自分が住んでいる周りにもいろんな縁の地ってたくさんあるもんです。
誰かが決めた・今、話題になっている聖地を巡礼するのもいいかもしれませんが、まずは身近な聖地・縁の地にも足を運んでみてはどうかなあと思うところです。
以上で、2022年6月7日の聖地をテーマにしたかっけいのラジオはここで終了します。来週もまた聞いてくださいな。
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