僧侶のかっけいです。
法事などに行きますと「お寺さんは正座を長時間しても痺れないのですか」とよく聞かれます。
痺れは大人になっても、もっと言えばご年配になってもなかなか解決しない問題だと思います。
自分自身が足がしびれてしまうので、子供にも正座をすすめることを躊躇する人もいるのではないでしょうか。
今回はお坊さんの私が正座での座り方のコツを紹介します。
どうして足がしびれるのか
そもそもどうして正座をすると足が痺れてしまうのでしょうか。
それは膝から下への血流が悪くなるからです。
なんとなく理解できるのではないですか。
体や頭の下に腕を敷いたままにしてそのままの姿勢を保っていると、腕が足の痺れのように痛みや力が入らなくなる状態を経験したことがないでしょうか。それと同じことが正座をしたときに足にも同じ症状として現れるのです。
もう少し足の痺れについて詳しく説明します。
- 人の膝の裏には下肢静脈という血管が通っています。
- この血管が正座をすることなどによって、強く圧迫されることで、血の流れが悪くなってしまいます。
- すると足の先端にある末梢神経に血液が十分に届かなくなります。血液が届きにくいということは、酸素が不足してしまうということです。
- この酸素不足の状態が続きますと、末梢神経の機能が低下し、体の異常を知らせる信号が発生します。
- この体の異常が痺れというものです。
つまり長く膝下を圧迫すればするほど、それだけ痺れやすいということです。それを回避すれば痺れにくくなります。
お坊さんは長時間の正座をしても痺れないのか
痺れます!!
しかし痺れるのですが、正座に慣れていない人とはちょっと事情が違う痺れ方です。
おそらくどんな人でも初めて正座をすると、数分程度で足が痺れることでしょう。それは座り慣れていないからです。
それがコツを掴んでくると、5分が10分となり、10分が30分となり、そして1時間とだんだんと正座をしても痺れにくくなります。
お寺さんは正座をしている機会が多いので、正座のコツを掴んでいる人が多いんですね。また仮にしびれてもその痺れを素早く取り除く方法も経験で知っています。
その慣れと経験があるので、正座の姿勢からあっという間に立ち上がって、何事もなく歩いているように見えるんですね。
私は割と早く30分程度で痺れてしまいますので、お勤めの間は足が痺れて痛いのですが、立ち上がる前のちょっとした動作をすることで涼しい顔ですスッと立ち上がり歩いています。
正座で痺れにくくなる方法・コツ
正座をすると痺れるのは膝下の血流が悪くなるからということを説明しました。ということはしびれない為には単純に血を足先にまで巡らしてあげればいいということですね。
ただし正座というのは姿勢を正してきちんと座っている様子のことなので、足を崩してしまうとそれは正座ではなくなってしまいます。
お坊さんも足を崩して座っていないですよね。足を崩さずにいかに足先にまで血を流すのかを説明します。
[しびれにくくする方法・コツ]
- 重心を少しだけ膝側(前側)にもってくる
- かかとを少しだけ開く。かかとをそろえない
- 足の親指を重ねるイメージで座る
- 膝先を少しだけ開く。膝をそろえない
- 時おり上半身をわずかに動かし、重心を前後左右にずらす
- ゆったりとした服装(ズボン)にする
今回は6つのコツを紹介します。これ以上に細かいコツはありますが、だれでもすぐに実践できるこの6点に絞りました。
先ほども言いましたが、正座ですから背筋を正して足を崩さないことが大前提です。ですので、俗に言うお尻を床につける女の子座りや足を横にずらす斜め座りは紹介していません。
お坊さんが痺れないのは正座という姿勢を保ちながら、血を流すために微妙に体勢を変えているからですよ。目立たないように血を流しています。
6つのコツをそれぞれ説明します。
1の重心を膝の方に持っていくのは、足先に余裕をもたせ、かかとや足の甲の圧迫が軽減されます。
このことで足先まで血が届きやすくなります。またちょっとしたコツとして、両手を股の付け根に置かずに膝の方に揃えますとより痺れにくくなります。イメージとしてはお尻が浮き上がるような感じですかね。ただし背中は丸めないこと。
2番目のかかとを少し開くというのはお尻をかかとに乗せないということです。
悪い例としてかかとの先でお尻を乗せますと支えている面積が狭いのですぐに足が痺れてしまいます。またお尻も痛くなってしまいます。イメージとしては土踏まずの空間でお尻全体を包むような感覚にすると上手くいきます。
3つ目の足の親指をそろえるというのは、足を組みすぎないということです。
痺れている人を見ますと足の甲と裏を深く重ねている人が多いです。もしくは全く指をそろえない人もいます。
親指を重ねるメリットは足の甲がぴったりと圧迫されるのを防くことができること。また親指の上下を組み替えることで、簡単に目立たず交互の足の上下を入れ替えることができます。
4つ目の膝先を少し開くのは2番・3番のコツをしやすくなるからです。
両膝を揃えて座りますと、足先を動かす動作が目立ちやすくなり恰好が悪くなります。
5番目は1番目と違ったことを言っているようですがこれも重要なコツです。
膝の方に重心を持っていくのは足先に余裕ができ痺れにくくなりますが、今度は膝が痺れてしまいます。
そこで上半身を少し反らしたり、手の位置を変えることでわずかに重心を動かすことが長時間正座を保つコツになります。この時も上半身の姿勢は正しましょうね。姿勢が悪くなると体の負担が増え、逆に痺れやすくなります。
6番目は裏技みたいなものですかね。ぴっちりしたズボンやジーンズをはくと痺れやすいです。また少し足を動かしても目立ちやすいです。痺れたくなければゆったりとした服装の方がいいと思います。実はお寺さんは衣を着ているため、足先をごぞごぞがしても目立ちにくくなっているんですね。
痺れたときに素早く立ち上がるコツ
ここまで痺れにくくするコツを説明しましたが、それでもやはり長時間の正座は痺れてしまいます。
原因は繰り返しますがやっぱり血流不足です。
ですのでしびれを解消する時も、血を足先まで流してあげることが解決方法になります。
痺れを取る方法をおすすめ順に紹介します。
- 立ち上がる少し前に、両足のつま先を立てて座っておく
- 合掌・礼拝(らいはい)をするときにお尻を少し浮かす
- 正座の姿勢を正す動作をすることで大きく体を動かす
これら以外にも片方の足に体重を預けてしびれを取り、さらにもう片方も同様に体重を預けてしびれを取る方法がありますが、時間がかかりますし体が大きく傾いて格好悪いです。他にも足を横に出したり足のマッサージをする方法がありますが、やっぱりごぞごそしてかっこ悪いです。
痺れをとるのは両足同時にできた方が早いですし、姿勢も崩れにくいです。
おすすめの方法を1から順番に説明します。
1番の立ち上がる前に両足のつま先を立てて座るというのは、両かかとの内側をそろえてそのかかとの上にお尻を乗せている状態のことです。
この時も上半身は背筋を伸ばして姿勢を正しています。この姿勢は跪座(きざ)と呼ばれ正座の形のひとつです。ですので見た目も美しいです。
つま先を立てることで、足の甲や膝下が圧迫されずにあっという間に血の巡りがよくなります。
2番目では法事で通用する方法ですね。読経の最後は手を合わし頭を下げる動作をします。
合掌・礼拝(らいはい)をするときは上半身を前に倒さないといけないので、自然とお尻が浮き上がるような感じになります。このときにしかっりとお尻を浮かして、足のしびれをとりましょう。
3番目は私がよくする方法です。3番目がおすすめなのは一番動作が大きいからです。
動作が大きいから血の巡りもいいですし、素早くしびれが無くなります。堂々としないとただごぞごぞしているように見えますので、この方法をとるのは最後の時だけにしましょう。痺れているからといって立ち上がる前から何度も大きく動くと恰好が悪いので一度だけで決めましょう。
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さいごに。どうしても無理な場合は椅子を使う。正座をしない
どうでしょうか。お坊さんの私が実践している比較的やりやすい方法を紹介しました。
これらのコツを全てを使わずに一つ使うだけでも十分に効果があると思います。
後は正座に慣れていくことがよい解決方法になるでしょう。しびれるという人・痺れた後動けない人というのは単純に痺れた経験が少ない人ではないでしょうか。
ちょっとずつ回数を増やし正座・痺れに慣れていけばやがては一時間座っていても、すぐに動けるようになります。
正座に慣れていない最初のころは座布団を使ってもいいでしょうね。
足への圧迫が和らぎますので、長時間の正座をしやすくなります。逆に言うと、お坊さんでも地面や石の上に座りますと非常に硬いのですぐに痺れてしまいます。
ちなみに座布団に座るときの私なりのコツを一つ紹介すると、座布団の後ろ端に正座することをおすすめします。
座布団の後ろから足先を少しだけ座布団からはみ出すように座るだけです。はみ出した分だけ足先を動かせますので血の巡りが段違いです。ただし足先を出しすぎると座布団の前の方が空いて不格好になりますので、そこは座布団の大きさに応じてバランスをとってください。
正座というのは非常に楽な座り方です。
椅子に腰かけてもお尻が痺れたりしますよね。でもお尻をごぞごぞしたり、足を絶えず動かしているから痺れていないように錯覚しているだけなんですね。
正座も慣れれば慣れるほど、痺れにくくなり痺れもとりやすくなります。
しかし正座がどうしても無理と言う人もいます。そういう場合は無理をせずに椅子に腰かけたり、正座をあきらめて足を崩してあぐらになってもいいでしょう。法事などのお仏事では合掌礼拝をするときだけ姿勢を正していただければOKです。