お坊さんは本堂のどこでお話するのか.#232

第232回目のラジオ配信。「お坊さんは正面でお話しない」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

ラジオテーマ内容まとめ
  • 節談説教は高座を置いて仏教法話をする
  • 高座は真ん中に置かない
  • 浄土真宗のお坊さんは本堂の真ん中、仏さまの正面位置でお話しない
  • 机や演台も真ん中を避けて、左右どちらかに置く
  • 黒板やモニターといったものも真ん中に置かない
  • 浄土真宗の本堂のメインは仏様(阿弥陀様)だから
  • 仏さまにかわってお取次ぎをしている

かっけいの円龍寺ラジオ

これは香川県丸亀市にいる浄土真宗のお坊さん、私かっけいの音声配信です。

今回は浄土真宗のお寺でお坊さんがお話する時、どこに演台が置かれて、どこでお坊さんはお話しているのかといったトリビア的なことをテーマに雑談していきます。

先日、近くのお寺の春の法要で節談説教がありました。

節談説教は最近ではかなり珍しいものになったので、皆さんも節談説教って言われてもあまりピンとイメージが湧かないかもしれませんね。

節談説教とは浄土真宗オリジナルの話し方のスタイルで、今でいう落語や講談のもとになったらしいです。高座という高さのある演台の上にたんたんたんと登っていて、高い所からの目立つ位置で身振り手振りと独特な節回しの話し方で仏さまのお話をしていきます。高座とは高く座ると書きます。

先日お参りしたお寺さんの高座は立派で、子供の身長くらいもあるような一メートルくらいの大きな高座がありました。

さてそれで皆さんにクイズです。

高座は本堂のどこに置かれるでしょうか。

ちょっとイメージしてください。本堂のどこに高座を設置して、皆様にお話されるでしょうか?

本堂の真正面、仏さまの真ん前だと思いましたか?

いいえ。違います。

正解は本堂の真正面を少し避けた左右どららかに高座を置きます。

一般的な落語や講談の風景を思い出していただいたら、おそらく劇場やホール、集会所の真正面に屏風や幕などをかけたりして、その正面前に高座を置き、そこに登ってお話されていますよね。

でもお寺では違います。

お寺の場合は高座は正面に置きません。

真正面ではお話ししないのが浄土真宗のお寺での特徴です。今度お寺の法要に行ったときに確認してみてください。

それとまたこれは高座に限った話ではないですよ。

普段するごく一般的な布教スタイルでも机・演台は真正面に置かず、お話される人は正面を避けた左右どちらかでお話されます。

さて、なぜだと思いますか?

もしかしたら真ん中・真正面に立たないのは、黒板・ホワイトボード・スクリーンモニターを正面に設置するためだからじゃないのと、こう考える人もいるかもしれませんね。

いいえ、それは違うんですね。

浄土真宗のお寺では黒板やホワイトボードやスクリーンモニターも正面に置かれません。お話される人と同じように真正面の場所を避けて、必ず左右どちらかの位置にあります。

正面・真ん中の位置にあった方が書かれた文字が読みやすいのになあと思うかもしれませんが、正面には置きません。

節談説教のような登ってお話する大きな高座を置く場合でも、ごく一般的なお話スタイルの小さな机や演台を置く場合でも、浄土真宗のお寺では、お寺の真ん中の位置を避けて左右どちらかの位置にずれています。

さてそれはいったいなぜなんでしょうかね。

理由は至極簡単です。浄土真宗のお寺の中心はご本尊の仏さまだからです。阿弥陀様が一番大切だからです。

浄土真宗のお寺は仏さま・阿弥陀様を敬う場所です。

お寺で仏さまのお話をされる時、そのメインとなるのは仏さまです。お話をされる方ではありません。

お話される方というのは、阿弥陀仏の教えや智慧や慈悲、お念仏のいわれ、仏さまのご本願、そういったものを仏さまにかわって、お手つぎ・お取次ぎしているにすぎません。

もちろんお話をされている方の存在はとてもありがたいものです。

しかしお参りの私たちは、その人の話を聞いているのではなくて、その向こうの仏さまのお話、仏法を聞いているのです。

浄土真宗のお寺でご法話されている布教の方、説法されている方はこんな言い回しをされているのを耳にしたことはありませんか?

仏さまのみ教えをいっしょに味合わせていただきたいと思いますと。

お話されている人自身も、お参りの皆様といっしょに、このご縁を通して、ともに仏さまのお話、仏法に出あっているということです。

浄土真宗のお寺では、お話されている人は仏さまのお取次ぎ・お手つぎをしているのであって、その人が特別偉いわけではありません。偉いのはご本尊の阿弥陀様であって、私たちが敬い拝むのはお寺の本堂の真正面に安置されている仏さまです。

そういったわけで、お話される方はお寺の真正面に仏さまの前に立つことはしませんし、仏さまを隠すように正面に黒板やホワイトボードやスクリーンを置くといったことはしません。歩きながらお話をされる人も仏さまの真ん前で立ちつくすことはありません。

さて、今回はこんなトリビア的な雑談をしてみました。

今度浄土真宗のお寺の法要にお参りされる方は、布教のお話をする方がどこにいるのか観察してみたら面白いかもしれませんね。おそらく正面を避けているはずです。

ただし注意点があります。

例えば仏教講演会のような場面では正面でお話されているようなケースもあるかもしれません。

浄土真宗のお坊さんは阿弥陀様の前でお話しないのが身にしみついていますが、他の色んな仏教宗派のお坊さんや学者さんや研究者さんがお話に来られる場合は、そういった方たちは正面に位置どるやもしれません。

今回の内容は、浄土真宗のお坊さんに当てはまるお話です。

ちなみにもう一つ余談をいうと、最近、お葬式の多くは葬祭業者の会館ですることが多くなりましたよね。お寺の本堂じゃないああいった場所でも同じことが言えます。例えば会館での葬儀や初七日法要のとき、読経の後、お坊さんがお話するとしますね。

浄土真宗のお坊さんは転座と言って、正面の位置から移動して横にずれて、わざわざ座る場所を変えてお参りの皆様の方に向き直ります。

葬儀や初七日といった場面でもその中心となるのはご本尊様、阿弥陀様です。

そのことを心にとめて、お寺での法要やお葬式や仏事といった場面では、お参りの皆様は、仏さまからのお話と思って、聞いていただけたらなあと思います。

お取次ぎ・お手つぎとは

お取次ぎ・お手つぎとは「つなげる・つなぐ」という意味です。

つまり、仏さまの教えや宗祖の教えを、私の言葉を通して、お参りの皆様に伝えつなげていくことを意味します。

お取次ぎは浄土真宗が、お手つぎは浄土宗でよく使われる言葉だと思います。

仏さまの正面でお話される人

浄土真宗では阿弥陀様の真正面ではお話しません。

しかしご門主様は仏さまの前でお話されます。本堂の内陣から外陣に降りられるときも、正面から降りられます。

ご門主様は宗派の教えを伝え、宗派全体をまとめる存在です。

「円龍寺かっけいラジオ」では、番組へのメッセージを募集しています。ご感想や取りあげてほしいテーマなどもお寄せ下さい。



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