僧侶のかっけいです。
法事といえば僧侶による読経と法話をまずイメージするでしょう。
しかし法事の後のお参りの人達とのお食事も大切な時間です。このお食事は「お斎(おとき)」と呼ばれます。
一昔前は法事の会場は自宅が当たり前でしたが、最近では家だけでなく、葬儀会館やお寺も増えつつあります。また意外に思われるかもしれませんが、ホテルやお食事処が法事の会場になることもあります。
どこで食事を参列者にふるまえばいいのか
単純な疑問に見えますが、いざ施主の立場になりますと悩むところでしょう。
今回は法事のあとの食事の場所について書いていきます。
法事後の食事はお斎といい、大切な時間
仏教では食事に関して、「お斎(おとき)」と「非時(ひじ)」という言葉を使います。(禅宗では「点心(てんじん)」も使いますが)
お釈迦さま在世の時代、仏弟子は一日の間で決まった時間に食事をしていました。
朝、人の住むところに托鉢に出かけ、持ち帰ったものを昼までに食べ、余れば他の人や生き物に分け与えていました。これが「斎時(さいじ)」です。
斎時以外の時間は食事をすることを基本控えていたので、食べる時ではないということから、「非時」と呼びます。
現代では非時が死語になりつつありますが、地方では葬儀の前にふるまわれます。本来は食事をとる時ではないが、葬儀のような特別な時に集まった人たちが食事をするので「お非時」といいます。
法事の後の食事は、午前中の食事ではありません。
しかし亡き人をご縁として有縁の人が集まり、亡き人を偲びつつ仏法に出あえることから、正しい時の食事という意味から「お斎」と親しみを込めて呼び、仏教行事の欠かせない一場面です。
「法事の後の食事をなしにしたい」と相談されますが、食事(お斎)あっての法事ですので、できるかぎりお食事をふるまっていただきたい所です。
食事は和食でも洋食でも、内容はなんでもOK
法事の食事は精進料理(しょうじん)をイメージするかもしれません。
もちろんお肉やお魚など動物性の食材を口にしないことは、本来の仏教の戒律的には正しいことでしょう。
しかし現代の法事において、野菜・豆類などの植物性の食材のみのお食事がふるまわれることはほとんどありません。
食事の内容をこだわることは現代の法事ではそんなにありません。
- お肉料理が出てきても問題ありません。
- お刺身や鯛料理がでても問題ありません。
- 派手な盛り付けや豪華な食事も問題ありません。
浄土真宗的な考えになりますが、法事とは悲しい出来事・弔事ではありません。
むしろ普段会えない人たちが亡き人のご縁から集まり、仏法に出あい、ともにコミュニケーションをとれることからおめでたいこと・かけがえのないことと意識しています。
食事のメニューは和食でも洋食でもなんでもOKです。
しいて言うならば、メインが肉料理だったり、手や服が汚れるような食事(カレーや手づかみ料理)は控えた方がいいですよ。年配の人が多い場合はイタリア料理やフランス料理よりも、口に合った和食の方が好まれることも。
(個人的経験では、ドイツ料理店での法事お斎で、肉料理が3連続で出てきたときはちょっと驚きました。)
食事場所によるメリットとデメリット
法事のお食事内容はなんでもOKです。
精進料理にこだわる必要がないので、おもてなしの幅も広がることでしょう。
家で法事をしていた頃は食事の場所も自宅が多かったのですが、最近では法事会場から移動して、外で食事をすることも多くなりました。
食事場所ごとのメリットとデメリットを紹介します。
家で食事をする時は、仕出し料理が基本
かつては自宅の法事が当たり前で、簡素ながらも精進料理のようなものを家の人やお参りに来た親族女性らが作っていました。
しかし現代では家での法事でも、自分たちで食事を作ることはほとんど見なくなりました。せめてちらし寿司やお赤飯、お吸い物を用意するくらいでしょうか。
家での食事は仕出し料理が基本です。
仕出し料理とは簡単に言えば「出前(でまえ)」ということです。
- 何日の何時何分ごろに
- 何人前分を
- 一人前の費用はこれくらいで
- 吸い物・茶わん蒸し・鍋物はつけるのか
などと施主が事前に依頼しておきます。
配膳・下げ膳のサービスは当たり前のこと、最近では椅子・座布団や机の貸し出しをする仕出し屋も増えつつあります。
家での食事ながら、家の人の負担がずいぶん減ります。
メリット | デメリット |
|
|
メリットは何と言っても施主が楽できることです。
場所も移動する必要がないので、大型連休やお祭りの時など交通量が多い時でも安心です。また高齢の人や足の悪い参列者がいるときも喜ばれます。
配膳をしてくれている間に、お墓参り・納骨所参りすることもできます。
一方でデメリットも多くあります。
仕出しですので時間を指定すればその時間前後に持ってきます。施主は時間を気にしなくてもOKと言いたい所ですが、実際には僧侶に『食事の都合があるので、何時までには終わるようにお願いします』と相談されますし、ひっきりなし時計を確認して気が気でない様子です。
仕出しはどうしても食事の質が劣ります。調理してからだいぶ時間がたっているのであたりまえです。味の代わりに彩りを重視していることもあります。また食中毒の問題もあり、夏は刺身などの傷みやすい食材は用意されないこともあります。
料理の用意は仕出し屋に任せてもお茶やビールの飲み物の接待は家の人がします。ですので施主家族の忙しさは相変わらずです。またせめてお吸い物ぐらいは自分たちで用意することもあり、完全に楽できるわけではありません。
家での法事はある程度の部屋の広さが必要です。歩くスペース・接待するスペースも欲しいので大人数は辛いことがあります。飲み物・食べ物をこぼしたりと床や畳が汚れることもよくあります。
なお、お寺で法事をしお寺で食事をする場合も仕出し料理が基本です。お寺によってはお寺に頼めば施主に変わり全て準備してくれることもあります。
お店での食事は美味しさや楽さを重視
メリット | デメリット |
|
|
仕出し料理は折箱に詰められており、すべての料理が最初から提供されます。
しかしお食事処のコース料理では一品ずつ、温かいものは温かい状態で、デザートは冷えた状態で、刺身は捌いてすぐにと料理人が腕を振るって提供します。仕出しでは使えなかった食材も用意でき、施主は食事内容を幅広く選ぶこともできます。
一方で食事利用時間が2時間程度と、のんびりと食事ができずに慌ただしく感じることもあります。また食事の提供も一番早く食べている人が基準ですので、ゆっくりと食べている人の前にはどんどんお皿がたまっていきます。
また家で法事をしたのに、食事会場を変えることが面倒に感じる人もいます。
お食事処にによっては送迎バスを手配してくれることもありますが、仕出しと一緒で、時間ばかりが気になってしまいます。
法事後に渡す引き出物も食事後の解散時に参列者に手渡しするので、施主家族は面倒に感じることもあります。
金銭的費用も仮にですが、仕出し料理なら5000円だったところが、7000円と少し大きくなるかもしれません。
また参列者にがっかりされることとして、場所を変えたのに食事内容がコース料理ではなく、仕出し料理と同じように折り詰めだと何のために移動したんだと思われるかもしません。
食事の味・お店の雰囲気など施主のお店チョイスのセンスが問われます。
ホテルで食事をするケースも増えている
最近ではホテルでの食事も増えています。(もっと言えばホテルが法事会場のこともあります)
ホテルでの食事もお食事処・割烹での食事と大きな違いはありません。費用は少し割高になるかもしれません。
違う点は2つあります。
- 法事参加者が宿泊できる
- バリアフリーで車いすの人も食事ができる
お食事処や割烹の食事は魅力的ですが、一般の食事利用者もいて落ち着いた状態の食事ができないこともあります。
段差が随所にあり、車いすや足の不自由な人には不便に感じることもあるでしょう。
一方でホテルでは会食部屋を設けていたり一般利用者とは階層が違っており、落ち着いた雰囲気でお食事を楽しめるでしょう。車いすのまま利用できる会食部屋が用意されていることもあります。
また最近の法事ではアルコールが入ったお酒・ビールが飲まれなくなっています。飲酒運転ができないからです。
しかし施主が法事参列者の宿泊場所を食事会場と同じホテルで用意しますと、参加者は気兼ねなくお酒を飲めることもあります。食事の後そのまま部屋に戻り休めるからです(ただ最近ではその日のうちに帰る人も多いですが)
広告 - Sponsored Links
さいごに。食事の場所はどうする
法事のあとの食事場所の選択肢はたくさんあります。
どこがベストなのかは答えはありません。
法事も少人数になりつつある昨今、自宅での法事や食事もやりやすくなっています。
食事をしない家も増えているかもしれませんが、法事後の食事も先祖を偲ぶ供養の一つ、生きている人の交流も合わせて大切にしていきたいところです。
私の住む地域では法事に来た人に、まず最初に軽食として、おうどんの接待があります。しかし最近は省力化して消滅した家もあります。
参列に対する感謝・労いもこめて、満足のいくのお接待・お食事をしていただければ幸いです。