鈍色の衣と葬儀のかたち.#323

第323回目のラジオ配信。「鈍色(にびいろ)」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

内容まとめ
  • 別の宗派のお寺の葬儀で見た、七条の衣で導師をつとめる住職夫婦
  • 自分の寺では、現住職は導師ではなく「喪主」として葬儀にのぞんだ
  • 葬儀で着用する「鈍色(にびいろ)」の衣について
  • 宗派や地域などによって葬儀の形はさまざまで、それぞれに大切な意味があるだろう

かっけいの円龍寺ラジオ

これは香川県丸亀市にいる浄土真宗のお坊さん、私かっけいの音声配信です。

今回は「鈍色(にびいろ)」という色と、葬儀の装いの違いについてお話していきます。

先日、私はご縁があって同じ丸亀市内にある別の宗派のお寺の葬儀に参らせていただきました。

そのときの葬儀の形が私が思っている葬儀の形と全然違っていて、印象に大きく残りました。

亡くなられたのはそのお寺の前のご住職であり、その葬儀では、現住職ご夫婦が二人とも七条の衣をつけて、導師として正面に座りお勤めをされていたんですね。

七条とは格式があり華やかな見た目をしている衣のことです。

私はその住職夫婦のお姿を見て「こういう形の葬儀もあるんだな」と感じました。

というのも、私のお寺の場合は少し違うからです。

たとえば前住職や前坊守が亡くなったとき、現住職は導師として前に出るのではなく、喪主としてその葬儀の空間にいます。

そしてそのときに身につけるのが「鈍色の衣」です。

この「鈍色」という言葉、みなさまはあまり聞きなれないかもしれませんが、鈍色とは黒と白が混ざったような、少しくすんだ灰色のような落ち着いた色合いの衣です。

黒でもなく、華やかな色でもない。どこか光を抑えたような色です。

一番分かりやすいたとえで言うと、葬儀の時のお香典の袋に書かれる色、薄墨の色に近いです。

ちなみに香奠袋に書かれる薄墨の色は、突然のお悔やみで、濃い墨をする時間がなかったこと、つまり急いで駆け付けたこと、お別れにあたり涙がこぼれ墨が薄まってしまったことを表しているとされます。

さて私の寺円龍寺では円龍寺住職坊守の葬儀のときに喪主は鈍色の衣を着ます。私はこの鈍色という色には、「喪に服す」という意味が込められているのではないかと感じています。

これまでに多くのご門信徒たちの葬儀を送ってきたお坊さんであっても、このときは導く立場として前に出るのではなく、故人を悼む、哀悼する一人としてその葬儀の空間に身を置くこと。

そんな姿を表しているのが、鈍色の衣なのではないかと思います。

実際、私のお寺では、現住職は鈍色の衣を着けているだけで、お勤めには加わりません。

他の一般のお参りの方々と同じように、本堂の外陣のところにいて、あくまで喪主として、そのご縁に向き合います。

今回、別の宗派のお寺の葬儀にお参りして、同じお寺の葬儀であっても、導師として前に立つのか、あるいは喪主として一歩引いた位置に立つのか。

そのあり方は、本当にさまざまな形があるんだなと、あらためて感じさせられました。

ここで一つ大事なことを言うと、どちらが正しい、どちらかが間違っているということではありませんよ。

それぞれの弔い方の形の中に、それぞれの考え方や大切にしている思いがあるはずです。

七条の衣をつけてお勤めをされる姿には、そのお寺を受け継いでいくという強い意志や、仏法を伝えていく役割が表れていたのかもしれません。

一方で、鈍色の衣には、お寺の人間、お坊さんであっても一人の人間として、大切な方との別れに向き合っていく姿勢が表れているように思います。

葬儀の形というのは、本当に一つではありません。

地域によっても違いますし、宗派によっても違います。家によっても違います。

そしてまた、各お寺ごとの歴史の中で培われてきた形もあるでしょう。

だからこそ、こうして他のお寺のご葬儀に参らせていただくと、新しい気づきをいただくことがあります。

鈍色という色一つをとっても、ただの色ではなく、その場にどう身を置くのかという姿勢が表れてきます。

葬儀に参列された方の中には、「どうして今日は、このお寺の住職は、この色の衣を着て、この位置にいるのだろう?」と感じた方もいらっしゃったかもしれません。

そう考えると、装い方一つをとっても、いろんな大切な意味、メッセージがあるのだと思います。

時代とともに、葬儀の形はこれからも変わっていくかもしれません。

簡素化、簡略化が進んでいる時代ではありますが、葬儀という儀式の中に込められている「故人を悼む気持ち」や「ご縁を大切にする心」は、形を変えても変わらず受け継がれていって欲しいところです。

今回他のお寺の葬儀に参列してこうした違いに出あえたことも、また一つの大切なご縁だと感じました。

皆さまの地域では、葬儀のときの服装や作法はどのようになっていますか?

鈍色の服装をする習慣はありますでしょうか。

もしよろしければ、ぜひまた教えてください。

今回は鈍色と葬儀の装いについてお話ししました。


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鼠色・鈍色・墨色…それぞれどんな色?

音声の中で出てきた鈍色ですが、似たような色「灰色や鼠色などと何が違うの?」と気になる方もいらっしゃるかもしれませんね。

日本には似たような色がたくさんありますが、並べてみると、ちょっとした違いが見えてきます。

灰色〜墨色までのグラデーション

色の名前印象説明カラー例
灰色標準的なグレー黒と白の中間。いわゆる一般的な灰色
鼠色(ねずみいろ)やや明るめ灰色より少し軽やかで、日常的に使われる色
鈍色(にびいろ)くすんだ暗い灰色光を抑えたような、重みのある落ち着いた色
薄墨色やわらかい灰色墨を水で薄めたような、にじんだ優しい色
墨色ほぼ黒書道の墨のような、深い黒に近い色

感覚でとらえるとこんな違いかな

・灰色 → 一番ベーシックなグレー
・鼠色 → 少し軽くて日常的なグレー
・薄墨色 → やわらかく、にじむようなグレー
・鈍色 → 重みがあり、落ち着いたグレー
・墨色 → 黒に近い深い色

同じ「灰色系」でも、明るさや質感の違いで受ける印象はずいぶん変わりますよね。特に墨色はほとんど黒色です。

鈍色はグレーの中でも落ち着いた色

こうして並べてみると、鈍色は明るすぎず暗すぎず、ちょうど中間あたりにあるように思います。

だからこそ強く主張せず、静かにその場に寄り添うような葬儀の場でふさわしい色として使われてきたのかもしれません。


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Q&A

Q
鈍色とはどんな色なのですか?
A

黒と白が混ざったようなくすんだ灰色で、落ち着いた印象の色です。派手さを抑えた、静かな色合いが特徴です。

Q
なぜお坊さんが鈍色の衣を着ることがあるのか?
A

導師ではなく喪主として故人を悼む立場を表すためだと思います。

Q
七条の衣との違いは何ですか?
A

七条は華やかな色の衣で、格式ある法要で着用されます。私のいる地域では葬儀の時に導師が着ています。

一方、鈍色の衣は落ち着いた灰色の衣です。葬儀の時、喪主が着ます。

Q
葬儀の形式に正解はありますか?
A

宗派や地域、お寺ごとに違いがあり、一つの正解があるわけではありません。

Q
なぜ装いが大切なのか?
A

服の色や着方は、その人の立場や心構えを表します。

たとえ言葉にしなくても、その場の意味や関係性を伝える役割があります。葬儀のような故人を偲ぶ厳かな場では、服装がおのずと整うことでしょう。

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