死んでいる土でサツマイモを育てる.#253

第253回目のラジオ配信。「死んでいる土を育てる」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

ラジオ内容まとめ
  • 雑草一つ生えない固く締まった土で野菜は育てられるのか
  • 緑肥ヘアリーベッチともみ殻で土をよくする
  • 堆肥や栄養のある土は持ち込まない(面白くないから)
  • 最初の年は碌に育たなかった
  • 二年目からあきらかに土がよくなった
  • 土の中に空気と水が入るようになるのが大事
  • いろんな野菜を育てるのが大事
  • 家庭菜園では強くて育てやすい品種を選ぶ
  • ミミズは急に増える
  • 家庭菜園はいろんなことを自分なりに試せるので楽しい趣味

かっけいの円龍寺ラジオ

これは香川県丸亀市にいるお坊さん、私かっけいの音声配信です。

先日、家庭菜園で育てていたサツマイモを収穫しました。今回も仏教の話ではなくて、私の趣味の家庭菜園をテーマにしたお話をしていきます。

お話の内容は、死んでいるレベルの土で、サツマイモを作れるかチャレンジしているといったことです。

3年分の話なのでちょっと長くなるかもしれません。

さて、話をする前に、まず死んでいる土とはどんな土かということですが、まあ定義の難しい言葉ですよね。死んだ土なんてないと考える人もいるかと思います。

今回、私が育てている土は、数年間雑草も全く生えない、スコップで掘ることもできない、固くしまった土のことをさしています。

実は私のお寺では5年ほど前に、建物の修理をするにあたって、工事車両の進入路を設けないといけませんでした。その時に、畑に大量の花崗土、真砂土とも言いますね。花崗土を入れて、その上に砂利を敷き詰めて工事車両の進入路を作りました。

工事が終わったあと、撤去するのにもお金がかかるので、上の砂利だけある程度撤去してもらって、残りの花崗土はそのままにしてもらいました。

大きな重機が通れるようにするだけあって、しっかりとガチガチに固く締まった状態になっていました。

観察すると、3年たっても草一つ生えないコンクリートのような不毛な土だったので、この場所で野菜を作れるようになったら面白いんじゃないかなあと思って、今チャレンジしているところです。

なので、私が今回表現として死んでいる土と言っているのは、「栄養分がないとか、微生物がいないとか、有機物がない」といった成分としての土ではなくて、見たまんま、雑草一つ生えてこない固く締まった土ということです。

そんなわけで、こんな雑草一つ生えない土でお野菜が作れるのかと遊んでいる訳です。今年で3年目になるわけですが、ちょっとずつ土が変わってきて面白くなってきているので、今回この音声で話しているところです。

さてまず最初にこの死んでいる土に手を掛けたのは2年前の秋です。

まずは土が固く締まっていて水も通さない状態だったので、ある程度は土をほぐさないといけないなあと思って、スコップを使ったんですが、ガキンガキンとまるで金属に打ち付けているかのようにまったく土が掘れません。

仕方なくツルハシを使ったのですが、それでも3㎝掘るのが限界なくらいでした。

もはや掘る・耕すレベルじゃなくて、表面を削るといったものでした。

よくここまで土を固く締めることができたなあと感心しました。

それで2年前の秋にツルハシで表面だけ3㎝くらい削ったんですが、水も全然染み込まないといった野菜を育てるのは不可能なレベルだったので、まずは緑肥のヘアリーベッチをまいてみました。

言い忘れてましたが、堆肥を入れたり、他所から栄養分のある土を足したりするのは禁止です。

堆肥を入れたら土が良くなるのは当たり前ですし、土を足しても面白みがないですよね。

あくまで、今あるこの死んでいる土から野菜を作れるようにしたいというのが今回の楽しみです。

それと結果としてですが、肥料も一切使っていません。使ってもいいのですが、あまり面白くなさそうなので、ちょっとまだ使っていません。

それと私は家庭菜園の野菜作りにおいてふだんから耕すことはほぼしないタイプの人間で、この場所で使った道具はスコップとツルハシの二つくらいです。

話は戻って、一番最初に手をかけた2年前の秋は、表面を頑張って3㎝ほど削ってヘアリーベッチの種まきをしました。

けっこう緑肥って育てる人は少ない、あまり評価されていないように思うのですが、私は割と好きです。特にヘアリーベッチは春も蜂もよってくれるので大好きな緑肥です。

ヘアリーベッチには土に窒素の補給や土壌性の改善、有機物の補給を狙って種まきをしました。

しかしやはり土がダメダメで、発芽率はかなり悪かったです。

それでも春になり、メチャクチャ育ちは悪かったですが、草が伸びて花を咲かせてくれました。わずかですがダンゴムシも寄ってくれました

それでさあ何を植えようかなあと考えたところ、やっぱりサツマイモがベストかなあと思いました。

栄養分のないやせた土地でも作ることができると言われるサツマイモですが、ここは、やせているというより死んでいる土で、サツマイモの実力も知りたかったので、サツマイモを植えてみました。

あとこれは持論ですが、土は一つのものだけを作るよりもいろんな種類の植物がある方がより良くなっていく、バランスがとれると思っているので、サツマイモのほかに、ゴマやオクラやシソの種も合わせてまきました。

堆肥は入れない縛りでしたが、ヘアリーベッチだけでは土はほぼ変わらず5㎝も土を掘ることはできず、土はすぐに固く締まり、空気や水の入る相がなかったので、もみ殻をある程度入れました。

それでもまだかなり酷い土でしたが、かろうじて植物がなんとなく育ちそうな状態になったので、サツマイモの苗を植えました。

一年目に植えたのは、「べにはるか」という品種です。

サツマイモに限った話ではないですが、プロの農家ではない家庭菜園を楽しむ人は病害虫に強い品種を選んだ方が無難ですよね。

「べにはるか」は比較的新しい品種で線虫や立ち枯れ病に強く収量性もよく育てやすいサツマイモです。

サツマイモって家庭菜園の中でも特に簡単な野菜でとりあえず苗を植えておくだけでいいんですが、一年目はダメでしたね。

植えたあと4割ぐらいが枯れて無くなりました。

やっぱり土が固く締まりすぎていて、根がつかなかったのと、水がうまく吸えなかったからだと思います。

ちなみに垂直植えをしました。土がひどくて寝かせて植えても収穫できるかわからなかったので、とりあえず一個でもとれればという思いで、垂直植えにしました。

オクラやシソも種のほとんどが発芽せず、かろうじて出たオクラも最終的に高さ10㎝ほどでとまって、シソもほとんど成長せず黄色い葉のままでした。

意外にもゴマは発芽して育ってくれていました。さすがアフリカのサバンナが原産と言われるだけの野菜だと感じました。

ただ土が終わっているのでいいゴマはとれないだろうなあと思ってある程度育ったら切り倒して、有機物の補給ということでサツマイモの上にマルチ替わりに敷きました。

それと夏場の有機物補給に緑肥のおたすけ麦をサツマイモの間にまきましたが、これも発芽率が悪く、でてきたものもほとんど生長しませんでした。

さて、そんなこんなで4割くらいが枯れてしまった一年目のサツマイモですが、何とか秋の収穫にはこぎつけました。

ツルの伸びは周りの畑と比べたらかなりひどく、一メートルも伸びていない、葉っぱはかなり薄い色、一枚一枚の葉っぱはかなり小さいものでした。

そして収穫はかなり大変だったです。最初の秋みたいにガキンガキンと音が鳴るほどではなかったですが、相変わらずスコップが刺さらないので、ツルハシでちょっとずつ土を削りました。

さながら発掘作業のようでした。

面白いなあと思ったのは、地上部は全然葉っぱがないので、一個も芋はできていないだろうなあと思ったのですが、意外や意外、一つ二つはまんべんなく芋ができていました。

こんな固い岩みたいなところでも芋ができていて感動すら覚えました。

ただ収穫はほんとうに大変で、普通なら苗をさしたところに芋があるものですが、苗をさしたところから30cmや50㎝も離れたところまで伸びて芋をつけていたりと、ツルハシで芋を探しながら、削るように収穫するのは時間がかかってかかって仕方ありませんでした。

お芋のサイズは大きいもので、子どもの握りこぶしぐらいでしたが、こんな雑草も生えないような土でもサツマイモが実際にとれたのでかなり嬉しかったです。

それでサツマイモ収穫後は、もう一回全体をツルハシで表面を削って緑肥のヘアリーベッチをまきました。

一年を通して植物を何かしら育てた土なので、最初の頃よりも少しは土がよくなっていて、二回目のヘアリーベッチは発芽がよかったです。お芋を収穫した時にもみ殻も混ぜたので、空気の層が土の中に一時的に出来たのがよかったのだと思います。

それで2年目の春、今年の春になりました。

2回目のヘアリーベッチは最初の年と比べるとしっかりと育っていました。肥料分や堆肥は何も与えていない土ですが、植物を育てていくとやっぱり土はよくなるもんですね。

それで今年は二種類のサツマイモを植えました。

一つは去年と同じく、ベニハルカです。強くて育てやすいのでおすすめです。

もう一つは、金時芋です。西日本で昔からよくつくられているサツマイモですね。

今から80年ほど前に高知県で作られた品種ですが、未だにつくられ続けているのはそれだけ優れた芋だということです。

徳島県では鳴門金時というブランドの芋になっていて、同じ温暖で雨の少ない香川県、瀬戸内の気候のこの場所でもいい結果がでるのかなあと思って今年、試してみました。

2年目の今年は一年目の反省点を生かして、サツマイモを植える時に、ある程度もみ殻を混ぜこんでできるかぎり土を寄せて畝っぽい形にしました。

サツマイモは30cmくらいの高畝がいいらしいですが、私のとこは5㎝くらいでした。それでもヘアリーベッチと籾殻がきいていて、一年目よりもあきらかに空気と水の層ができていていい土になっていました。

それで二年目は土も少しはまともになったので、水平植えにしました。

一年目は土を動かすこともできないくらい酷い状態だったので垂直植えでしたが、二年目は水平植えで植えられました。

それとサツマイモの周りにはバジルと途中からトマトの挿した苗を植えました。

一年目に好感触だったゴマは、昨年たくさん収穫したので、今年は植えるのを控えました。

トマトは枯れはしませんでしたが、成長もしない感じでした。バジルもそこまで大きくならず色も薄かったですが、一年目のシソよりもよく成長してくれたので、ときどき上部を刈り取ってサツマイモ周辺にバラまきました。

それと一年目の反省を生かして、いかにサツマイモといえども水が切れていたら碌に成長しないので、夏には麦刈りが終わったところから麦を持って来てサツマイモにマルチングして、たまに水やりをしました。

そのおかげか、2年目の今年は1年目よりもずっとツルがよく伸びました。

周りの他所の畑と比べるとツルの伸びは半分ほどですが、一年目と比べるとずっとよく成長しているので、だいぶいい環境になったのかなあと思いました。

それでこの前植えてから150日がたったので、収穫しました。

相変わらず主な道具はツルハシですが、部分的にはスコップもザクッと土に刺さるところもあって、一年目よりもずっと収穫しやすかったです。

お芋の位置も去年は苗をさしたところからだいぶ離れていましたが、今年はすぐ近くにあって、かなり収穫しやすかったです。

結果的に取れた量は全体で去年の3倍以上で、大人の拳よりも大きな芋も思った以上にとれました。

それでいて収穫にかかった時間も去年の倍以上短くなったので、やっぱり手を加えていけばいくほど土はよくなっていくんだなあと思いました。

今回死んでいる土からサツマイモを育ててみて感じたことはたくさんありますが、やっぱりサツマイモはつよいなあと感じたのが一番なのと、土を育てるのは面白いなあと思いました。

来年もまたサツマイモを植えて、今年以上の芋をとれたらなあと思います。

もちろん肥料や堆肥は使いません。使ったらあんまり面白くないからね。

緑肥のヘアリーベッチや籾殻だけでも土がよくなっている実感があるので、当分これでいこうと思います。

それともうひとつ大きく感じたことはミミズがかなり増えたなあと思いました。

一年目のサツマイモを収穫した時はミミズが1匹でるくらいの生き物がほぼいない土でしたが、2年目の今年はサツマイモを収穫していたら、芋を掘り上げるたびにフトミミズがゴロゴロと出てきました。

いったいどこからこんなにミミズが出てきたのか分かりませんが、ミミズが土の中にいるくらいの環境になってきたんだなあと思いました。

それと一個反省点をあげると、お芋のとれる量が増えたのはいいことなんですが、丸っぽい形のおいもが多いのを何とかしないといけません。

本来ベニハルカや金時芋は紡錘形といってラグビーボールやマグロみたいな形をしているんですが、私のとこではころころした丸っぽい形の芋ばかりです。

土が硬すぎたり、水が上手に吸えないことが原因としてあるので、まだまだ土の物理性の改善はしていかないといけないなあと思います。来年はマメ科のヘアリーベッチ以外にも、イネ科の緑肥も育てて、土をよくしていければと思います。

それとサツマイモ以外も作れるようになりたいので、例えばゴマか玉ねぎでも来年は育てようかと検討しています。

家庭菜園はいろんなことを自分なりに試せるので楽しい趣味です。

皆さんも場所があるなら、何か野菜や果物やお花を育ててみてはどうですか。思った通りの結果や、上手くいかなくてもけっこう楽しいですよ。

サツマイモの品種情報サイト

日本いも類研究会』のウェブサイトをリンクするのでご確認ください。

  • べにはるか(農林64号)
  • 高系14号(鳴門金時とも呼ばれるタイプ)
サツマイモから仏教を説いているサイト

固い土の中にあるサツマイモに学ぶこと(新米和尚の仏教とお寺紹介)』より

このお坊さんのウェブサイトでは、固い土と柔らかい土で作ったサツマイモを比較して感じた禅を教えています。

  • 何度もサツマイモの栽培を繰り返して養分が少ないけど、サラサラの柔らかい土
  • 山を削った際に出た固い土

この二つを比較して、上のお坊さんは「山を削った際に出た固い土」の方が「収穫量も多く、大きさも立派」とのことでした。

私自身はどちらの方がサツマイモ栽培に適しているのかはっきりとした答えはでませんが、このお坊さんの中では答えがあって、そこから禅につながっているようです。リンク先より一度お読みいただけたらと思います。

「円龍寺かっけいラジオ」では、番組へのメッセージを募集しています。ご感想や取りあげてほしいテーマなどもお寄せ下さい。



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