仏様参りの時にお香をお供えしていますか。お香の役割を紹介。

こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。

皆さんは仏様参りをするときにお香を焚いていますか。

お香の仕方にも種類がありまして、線香に火をつける場合と粉末状の抹香を焚く場合があります。

有名な観光寺に行きますとお線香が売られていて、大きな香炉にお線香をお供えすることができるところもありますね。

実は仏様にお参りするときはお香をお供えすることがすすめられているのですが、お香の役割を知っている人はどれくらいいるでしょうか。

今回は仏教におけるお香についてお話します。

香炉の香煙

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なぜ仏様にお香をお供えするのか。

真宗では仏様へのお飾りの基本は「献灯・献花・献香(けんこう)・献供」と言われています。

仏様にお飾りする光も花もお香も浄土の様子を表しており、私たちに仏様のお浄土の様相を目に見える形で示しています。

浄土真宗の所依の経典『仏説無量寿経』の中にある阿弥陀様の四十八の誓願には以下のようにお香の説明があります。

設我得佛 自地已上 至于虚空 宮殿樓觀 池流華樹 國中所有 一切萬物 皆以無量雜寶 百千種香 而共合成 嚴飾奇妙 超諸人天 其香普薫 十方世界 菩薩聞者 皆修佛行 若不如是者 不取正覺

第三十二願ー妙香合成の願ーより

簡易に部分的に訳しますと、阿弥陀仏の浄土はあらゆる宝や何とも言えない妙なる香りが十方世界に漂い、その香りをかいだものは仏道を歩むようになるとされます。

お仏壇やお寺と言うのは仏様を安置している所です。

そして仏様を安置している所を須弥壇と表現するように仏様の世界を表しています。

仏前にお香をお供えするというのは仏様の世界の妙香を表しており、仏国土を偲ぶために使います。

ですので最近では香りのしない線香や電気で代用するお香もありますが、お香の香りを嗅ぐことで浄土への思いを馳せるべきなのです。

お香の煙には意味があるのか。

これは宗派や地域によって考え方が違っているので参考程度にしてください

よくお香の煙には意味があるという人がいますね。例えばこんなことです。

  • お香の煙は仏様の食べ物。
  • お香の煙は故人を浄土に運んでくれる。
  • お香の煙に乗って私の願いが浄土に届く。

真宗興正派の僧侶の立場から言えば、これらは何を根拠に行っているのか甚だ疑問です。

間違っているとは言えないですが、あっているとも思えません。

真宗の所依の経典にはお香の煙については書かれていません。無量寿経には第三十二願に妙なる香りが十方世界に薫るや、阿弥陀経には浄土に咲く蓮華はどれも計り知れないほど見事に美しく香っている(微妙香潔)とされています。

お香の煙が仏様の食べ物と言う人はお仏飯も仏様の食べ物と言うのでしょうか。

お香の煙が亡くなった人が浄土に運んでくれるというのも迷信ではないでしょうか。確かに故人の枕には渦巻き型のお線香をお供えして常にお香をお供えする慣習の地域が多いでしょうが、それはやはり仏様への荘厳という意味合いでされているのではないでしょうか。

お香の煙に乗って仏様に願いが届くというのも真宗的ではありません。他宗ではわかりませんが、真宗では私たちの方こそ阿弥陀様に願われている存在なので、こちらから仏様にお願い事をするのではありません。

ただお坊さんが仮にこれらの説明をするときは方便的な役割があると思います。

お香の香りが浄土の様相を表していると説明しても納得してお供えする人は少ないでしょうが、お香にはこのような御利益があるんですよと言われるととりあえずしとくかとなるでしょう。

またお坊さんはお香の煙が空中を漂い儚く消えていくことから諸行無常を表しているんですよと説明する人もいます。とってつけたような言い分ですけども。


【余談】

お香の煙の有り無しは真宗お坊さんから言えばどちらでもいいです。

しかし個人的には煙のしっかり出るお香の方がおすすめです。

これは個人的な感想ですが、最近は無煙タイプのお香が増えてきているのですが、そのようなお香をお供えしている時にお勤めをしますとすぐに喉が痛くなってしまいます。

またお香の煙がしっかりと出ることで、嗅覚からお浄土に思いを馳せるだけでなく、視覚的にも仏事に参加できお香のはたらきが実感できると思います。(蚊取り線香の煙がないと効いているように思えないのと一緒でしょうか)

浄土真宗でお香をあげる意味。まとめ。

  1. 阿弥陀仏の浄土には常に素晴らしい香りで充満されており、ご仏前のお香はこの浄土の様相を表現している。
  2. 良い香りのするお香には悪臭を打ち消す働きがあり、それから転じて煩悩に満ちた心身や空間を清浄にする意味もある

【2番目の意味の補足】

親鸞聖人は自身の御和讃(浄土和讃)の中で染香人(せんこうにん)という言葉を残しています。

染香人のその身には 香気あるがごとくなり

これをすなはちなづけてぞ 香光荘厳ともうすなる

染香人とはお香のはたらきを示した言葉ではないのですが、香りが自身の身に付くほど仏様に参り合掌念仏をした人とは、仏様の智慧の光がその人自身から芳しいお香のように身についているということです。

お香の匂いが体に染みたからといってその人に功徳が身に付くかは分かりませんが、お浄土の妙香を表した香が身に付くほどお参りするということは、そのお香に接している時だけでも清浄な気持ちで仏様に向き合えていたということです。


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さいごに。

お香の煙

お香をお供えするというのは私たちがお浄土の様相が目に見えるようにするために表現した方法であり、その香りのよい香を嗅ぐこと・部屋に充満させることでお参りの方々を清浄な気持ちにさせる働きがあります。

お香をする作法は宗派によって異なっており、焼香の回数が一回or二回or三回と異なっていたり、線香を折らずに立たせたり、折って横にするところもあります。また線香の本数が決まっていたり決まっていなかったりとします。

真宗興正派ではお焼香の回数は2回であり、いただかずにそのまま香合から香炉に抹香をくべます。
またお線香の本数は何本でもよく、横にしてお供えします。

お香は仏様参りの時には常に使いますので、自分に合った香りのお香を求めてください。お線香の香りが嫌い、好きになれないという人もいます。
個人的印象ではお香は高価なものほど香りが複雑になっていきます。基本は白檀や伽羅などの香木なのですが、高価なお香はさらに多くの漢方・生薬が混ざっており、それこそ妙香な香りを目指しています。お坊さん好みの香りはスパイシーな桂皮や丁子が混ざっており、慣れていない人には鼻につくような刺激臭と感じるかもしれません。
まずはお手頃なお香から求めたり、お仏壇屋に相談してみるのも手かもしれません。

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