コロナ2年がたち変化した仏事.ラジオ#117

第117回目のラジオ配信。「仏事の変化」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

ラジオの内容まとめ
  • 日本では2020年1月から新型コロナウイルスの感染が確認された
  • 2回目の12月、750日もたつとコロナに対する人々の意識も変わった
  • 当初は県をまたいでの移動はもちろんのこと、外出もかなり制限されていた
  • 2020年は法事の延期・規模縮小がかなりあった
  • 2021年になるとワクチンの接種が進んだ
  • 春になると、県外ナンバーの車もよく見かけるようになった
  • 自宅での看取り、自宅での葬儀、リモートでの法事、寺での法事などがいっとき増えた
  • 2021年12月になると、コロナ前の仏事にだいぶ戻ってきた。
  • お葬式では50人近く、法事では20人ほど
  • 法事の後の食事はまだないが、お参りはじめのおうどんの軽食はでることもある

かっけいの円龍寺ラジオ

この番組では香川に住む浄土真宗のお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをするラジオです。

2021年最後の火曜日定期配信の今回は、「新型コロナウイルスが流行した2年間で仏事はどう変化したのか」について2年の月日を振り返りながら、10分をめどに雑談していきます。

なお注意点ですが、この仏事の変化については日本全体での大きな流れではなくて、香川県丸亀市にある地方の一寺院、私のいる円龍寺でのこと。ご門信徒でのこと。地域での体験ですので、所変われば全く違った仏事の変化があったと思います。

そのことに注意して聞いてくださいませ。

結論を先にお話しますと、2021年の12月現在、新型コロナウイルスが日本に入ってくる前と、同じくらいの仏事の形にだいぶ戻りつつあります。

2019年の12月8日に中国の武漢で最初の新型コロナウイルスの感染が確認されました。この頃はまだ未知のウイルスが遠い外国に出てきたというくらいで、日本はそんなに危機感はありませんでした。

日本国内では1月15日に初めて確認されたのですがやっぱり危機感はなくて、時の総理大臣も春節という中国圏での新年の大型連休による訪日を歓迎するお祝い動画メッセージを発信するほどでした。

この1月や2月入ってしばらくは私たちも特に変化はなく、50人規模のお葬式があったり、県外から家族親戚がそろって、おうどんを振舞ったり法事の後の食事を食べたりと、賑々しい法事の形でした。

2月になるとクルーズ船や北海道をはじめ感染が広がり、2020年2月の終わりに北海道は独自の緊急事態宣言を出します。

この頃にはコロナはよくわからないけど、なんか恐ろしいウイルスじゃないだろうかという空気感が私たちの周りに漂い始めました。

3月になると全国の小学校中学校が休校になったことや、大阪のライブハウスに集まった参加者に感染者が複数確認されたことで、自分たちのそばにもウイルスが迫ってきているんじゃないかと不安になる人が多かったです。入国者は2週間の待機、感染者は一か月以上の隔離という措置もとられ、これはオリンピックはできる状態じゃないんじゃないの?北海道や東京は独自の宣言を出しているのに、どうして国は宣言を出さないのという雰囲気がありました。

この空気感は仏事にも表れて、3月4月に入っていた法事の多くが夏以降に延期となりました。

これは私のところの話かもしれませんが、夏の7月8月9月といった暑い時期・台風の時期がご命日の家では、新年度前後で時候のよい春3月4月に前もって法事をされる人がそれなりにいます。

ですがコロナの恐怖からか、その3月4月の法事を取りやめて、夏以降に延期された人が多かったです。ちなみに浄土真宗ですから法事の日取りは、ご命日よりも前でも後でもどちらでも大丈夫です。

私の寺でも毎年4月4日に春の法要をしていましたが、世の中の状況を鑑みて、5月にひと月遅らせることを早めに決めました。

国がなかなか対応しないなあと愚痴がお参り先で出始めていたころ、3月29日にコメディアンの志村けんがコロナで亡くなったニュースを受けて、その不安・不満がより急激に広がった感じです。

遅くなりましたが、4月7日に東京大阪などの7都府県に緊急事態宣言が出て、4月16日に全国に拡大されました。

あのときはコロナにかかったら100%死ぬんだとイメージするほど皆さん恐れていた状況で、宣言内容も生活健康維持以外の不要不急の外出をしないでください。公園や図書館なども利用禁止などといった、私たちの生活を不自由にするものでした。外出するならマスクは絶対でしたが、そのマスクそのものが売られてなく、国からの布マスクもいつまでも届きませんでした。

私の周りでは、寺の法要を取りやめたところは半分以上ありました。

またご門信徒へのご命日の祥月参りはあるにはあったのですが、家にお坊さんが伺わずに、寺で代わりにお勤めをするという形のものもありました。

あのころはありがたいことに、ご門信徒の中からはお坊さんがお参りに来れるようにと、手作りのマスクをたくさんの人が作ってくれました。コロナを理由にお参りを断る家が少しばかりある一方で、マスクを手作りしてお参りのサポートしてくれる人たちもいました。お寺にお参りできるか分からないからと、遠方からお香などをお供えして下さった人もいます。

法事や葬儀は人の移動ができない雰囲気でしたので、お参りは家族だけという形でしたが、法事や葬儀そのものがなくなることはほぼなく、規模はかなり小さかったですが、ありがたいことに故人を弔い偲ぶ法事や葬儀は勤まれ続けていました。

あの頃はマスクだけでなく手指消毒液も不足していて、5月に予定していた円龍寺の法要もどう対応しようかと悩んでいました。

3密を避けることが呼びかけられていて、本堂に並べる椅子は2m以上あけて、本堂の扉も外しました。お参りに来られる他のお坊さんや布教使もお断りをし、法要時間も通常の半分以下に短く規模を縮小して行いまいた。

ありがたいことに、消毒液の確保に困っていることを知ったご縁ある人が、ちょうど岡山県の酒造メーカーがコロナ用に製品化したばかりの手指消毒液をギリギリ間に合うように届けてくださいました。

そんな風に、さまざま支えがあって、なんとか私の寺では春の法要が勤められました。

未知のコロナウイルスの恐怖から、お参りの人数はかなり少ないだろうなあと思っていたのですが、実際には例年よりも多くの人がお参りに来られました。

5月の宣言があける頃は自粛疲れという言葉も出始めるほど、皆さまの気持ちも沈んでいたので、お寺で法要があるのがいいリフレッシュになったのかもしれません。

実際、用意した椅子が足りずに法話を聞けずにお帰りになる人がいて、急遽お堂の外に椅子を置いて、対応したところです。

香川県はどういうわけか、2020年のあの頃も2021年の12月現在も、コロナの感染があまりでていない県となっています。

そんなわけで、香川県ではあんまり法事や葬儀、寺での法要といった仏事ができないといったそんな切羽詰まった雰囲気ではないように私は感じました。

香川県で感染が拡大したタイミングも、2020年の7月の終わりごろから始めたgotoトラベルや10月のgotoイートがはじまってからです。香川県は全国と比べると何か月も感染者が出ていなかったり、出ても一日数人と、安全そうな県みたいなイメージを持たれたのか、2021年からは県外ナンバーの車がグッと増えた印象です。

2020年の終わりごろくらいまではgotoもあったりして、感染者が減っては増えを繰り返して、県外からのお参りも無し、地域のお祭りもなし、集会もなしという状況でしたが、それでも規模は小さいながらも法事や葬儀はありました。

それでいうとお仕事のリモートワーク・テレワークが呼びかけられ、寺によってはネット環境を整えて、リモート法事ができますよと宣伝していたところもあります。ですが後から聞きますと、結局リモート法事の依頼はほぼなかったそうです。まだまだ寺でのリモート法事の導入は速かったのかもしれません。

一方で、私のお参りしたご門信徒の家での法事では、仏間にタブレットやパソコンが置かれていて、東京や愛知や福岡や大阪など、遠隔地から画面越しにお参りするというのをいくつか経験しました。

機械の性能がよくなっているのか、お互いの声がタイムラグもなくクリアにはっきりと聞こえるので、遠方からのお参りが難しい今はこれはこれでありがたいなあと思った所です。

寺が用意したのはあまり使われなかったですが、ご門信徒が自分たちで用意したリモート環境の仏事はそれなりにあった印象です。

あと変化したなあと思ったのが、自宅での葬儀が増えたことと、お寺での法事が増えたことです。

2021年の5月までの話ですが、私の寺では一年で5つの自宅での葬儀がありました。ここ10年ほどは葬祭業者がする葬儀会館での葬儀がほとんどとなっていましたが、昔に戻った感じで、自宅での葬儀が5つありました。

その理由は、お参りの人が遠方から来られないことです。

10人も満たないほどの少人数の家族・顔の知った人しか葬儀に来られないんだったら、わざわざ会館費用を払って、場所を移動するんじゃなくて、生前住んでいた自宅で亡き人を送ろうと、家でのお通夜・葬儀がありました。

中には葬祭業者を使わない葬儀もありました。自治体がしている葬祭制度を使ったもので、丸亀市なら数万円程度で、祭壇や霊柩車や仏具などの手配ができるので、一昔前の自宅での葬儀が戻った感じがしました。

ただその自宅での葬儀も夏以降は、今のところ経験していません。最近はまた葬祭業者の会館での葬儀ばかりです。

お寺での法事が増えたのは、2021年の夏くらいまでですね。週に一度は寺で法事がありました。

ちなみに、地域によっては寺での法事は上げ法事といって、弔い上げの最後の法事という言い方をする人がいますが、私のところでは仏様をおまつりする寺のお堂に上がってするから上げ法事といっています。

上げ法事は最後の法事ではなくて、寺でする丁寧な法事の事です。

コロナ前でも月に1・2回は寺で上げ法事があったのですが、コロナのときはぐっと増えました。

  • その理由は寺のお堂は空間が広く、密にならないこと。
  • 法事のお花やお供え物・お飾りは寺が用意してくれること。
  • 施主やお参りの人が寺に集合して、現地解散できること。
  • 集まる場所がわかりやすく、各々が車で行っても駐車場所に余裕があること

などなど、コロナのときはおうどんを出さない、お食事を出さない、公共の乗り物を使わず自家用車で来るようにと、法事の形が変わってきたことがあります。

お寺の本堂は仏壇のもとになった建物です。

皆さまの信仰の場であり、厳かに仏様をおまつりし宗教儀式をする専用の建物であるお寺の本堂でする法事に、コロナ禍だからこそ需要が高まったのだと思います。

実際、施主やお参りの人は特に準備する物はなく手ぶらで集まり、法事の後は寺で現地解散したらいいので、非常に楽なものです。

2021年の夏くらいまでは、私の寺では本堂での法事が頻繁にありました。

2021年の夏以降、法事や葬儀といった仏事はだいぶコロナ前の形に戻りつつあります。

香川県は夏に一瞬だけ、一日の感染者数が100人を超えたりと緊張感がありましたが、それを除けば0人の日が多く、この配信をする12月終わりの今も40日以上新規感染者が0人と続いています。

街には県外ナンバーの車が多くみられるようになりました。観光バスも一日に何台も目にします。四国八十八カ所の札所のお寺を見ますと、駐車場が一杯になっていて、車やバスや自転車で巡るお遍路さんが多くなっています。また12月頭の頃ですが、30人以上いたでしょうか、大勢の団体の歩き遍路さんたちも見ました。

またご門信徒の中に琴平町こんぴらにあるホテルで勤めている人がいるのですが、11月から12月まで部屋が埋っていると、昨年はホテルを閉じていたのに、今年は観光客で一杯ですと話していました。

コロナの感染が発表されてから700日余り。

当初は感染したら高齢者は絶対に死ぬ。後遺症が恐ろしい。東京でも人が全く出歩かない状況でしたが、2年も経つとだいぶ皆さまの意識も変わったのか、コロナ前のような人の流れに戻ってきています。もちろんマスクは必須ですよ。

法事や葬儀にしても、県外からのお参りも普通にあるようになりました。

つい最近私が経験したことは、香川の実家にいる親を大阪の家で看取り、わざわざ親のご遺体を香川県の実家にまで連れて帰って、故郷の香川で葬儀をしたのもありました。県をまたいでの移動や葬儀は、一年前では社会がゆるしてくれなかったでしょうが、今はそれができる状況に戻りつつあります。

もちろんお参りの人数はまだ完全には戻っていません。

それでもお葬式では40人から50人ほど見られるようになって、地域の講中・ご近所が受付の手伝いをしたり、お参りに並ばれたりするようになりました。

法事も20人ほどになってきました。

また私の住む香川の西、丸亀・多度津・善通寺方面では、法事のお参りに伺うとまず最初におうどんさんの軽食がふるまわれるんですね。最近ではおうどんをふるまわれる家も少しずつ出てきて、元の形に戻りつつあります。まだまだ法事のあとのお食事はないですが、来年以降は少しずつ再開していくかもしれません。

オミクロン株という新しく変異したものがでていますが、昨年のこの時期は一日に4000人から5000人もの人が感染していました。

2021年の今はワクチンの接種が進んだからなのか、クラスターの発生や重症化や死亡がぐっと減り、12月今現在は一日の新規感染者が300人前後となっています。

昨年の10分の1くらいですね。

最初の2020年4月の第1波のときの全国の致死率は5%でしたが、2021年9月の第5波では致死率が0.2%とだいぶ下がってきました。

そんなこんなで新しく変異したものが出てきたんですが、感染のリスク・脅威もそんなに感じられなくなってきているので、人の流れもぐっと増えていますし、法事や葬儀といった仏事もだいぶコロナ前に戻ってきてるように感じます。

一方で地域の集まりや地域のお祭りごとは、まだ少し慎重な感じです。

香川県は獅子舞が盛んな土地柄で、香川県全体に獅子組は800以上あるそうです。香川県の獅子舞は、家々を回って太鼓や鉦を打ち鳴らします。

10月、獅子舞ができそうな流れもあったのですが、まだ大事をとって多くのところが獅子舞を2年続けて取りやめていました。夏以降、個々の人の流れ、飲食店での食事、観光はだいぶコロナ前に戻ってきているのですが、地域の人たちの集まってする行事というのは、まだ少し慎重な感じです。

昨年は幸先詣という12月1日から2月いっぱいまでを初詣期間とする、新しい言葉が出ましたが、今年は幸先詣の呼びかけもほとんど聞きません。

お寺と同じようにこれからは神社のお参りも、だいぶしやすくなってきているのではないでしょうか。

最後に、今日の話をまとめます。

新型コロナが入ってきた3月4月頃は、法事や葬儀を夏以降に延期されていました。

2020年はマスクや消毒液も不足気味でしたが、ご縁があって規模を縮小して、法事や葬儀などの仏事は勤められ続けました。また自宅での看取りや、自宅での葬儀、リモートでの法事、寺での法事などがいっとき増えました。

2021年春以降はワクチンを打つようになり、皆さまのコロナとの接し方も変化し、街に出る人、県をまたいで移動する人もかなり増えました。

法事や葬儀も徐々にコロナ前に戻りつつあります。

2021年の秋以降になると、葬儀も40人以上、法事も20人ほど、最初のおうどんも出されるくらいと、徐々に仏事の形が戻ってきています。

おそらくですが、あと数日後の年末年始にある除夜や正月三が日の寺社仏閣のお参りは、昨年と比べるとずっと多くなるのではないでしょうか。

雑談が少し長くなって申し訳なかったですが、以上で2021年12月28日火曜日の配信を終えます。来年はもっといい年になればいいですね。

かっけいのラジオはここで終了します。

香川県丸亀の円龍寺では今年も大晦日の午後11時過ぎから、私かっけいが除夜の鐘を撞き鳴らしています。また午後11時45分頃からは本堂で住職が除夜会のお勤めをしています。どなたでもご参加できますので、よろしければお参りくださいませ。

それでは良いお年を。

来年もよろしくお願いいたします。

「円龍寺かっけいラジオ」では、番組へのメッセージを募集しています。ご感想や取りあげてほしいテーマなどもお寄せ下さい。



    メール内容は暗号化され、安全に送信されます。

    タイトルとURLをコピーしました