僧侶のかっけいです。
法事では「引き出物(ひきでもの)」と呼ばれるお返しがあります。法事当日にお参り来てくださった方に感謝の気持ちを伝え、持ち帰っていただく手土産のことをさします。
法事の引き出物はギフトショップや葬祭業者などに依頼することが多いと思いますが、施主が自分の手ですべて用意することもできます。
地域によって引き出物の見た目・中身は違うかもしれませんが、ここでは一例として香川県に住むお坊さんの私が、法事の引き出物を実際にどのように用意しているのかを紹介します。
引き出物の手提げ箱(袋)と中身について
引き出物はお供えでもある
私の住む香川県では法事の引き出物は、お仏壇の横といったお参りの人から見える位置にお飾りします。
理由は引き出物とは単なる参列者へのお返しの品という意味だけでなく、仏前のお供えであり仏様からのお下がりを分け与えるという意味があるからです。
そのため香川では引き出物の手提げ箱には、「心」の文字が書かれていたり「胡蝶蘭」といった花のデザインが施されていたりします。ギフトショップに行き『法事引き出物の箱をください』と言えば、サイズによって違いますが一枚200~250円程度で買えるでしょう。
中身は食品のみでいい
本当は法事のお礼の品々は「タオル」や「洗剤」や「カタログギフト」などの実用品なのですが、それは後日お礼としてお送りしてもいいでしょう。
今回は仏前にお供えした品をお持ち帰りいただく引き出物ですので、食品を用意します。金額は2000円~3000円程度でしょうか。
選び方は軽くて大きくて日持ちがするものを中心に選びます。それプラス果物ですかね(旬のものならなおよし)。
この写真は今回用意した中身です。
- わかめの乾物は軽く日持ちもする。(鰹節でも良かった)
- ゆであずきの缶とポン酢容器とビーフカレーで重さとボリュームを。
- ポテトチップスのお菓子は子供にも喜んでもらえるように。
- 雑炊と吸い物は便利な食品として。
- うどんは香川の名産だから。
- 果物にはリンゴとバナナを。
これだけの品数をギフトショップや葬祭業者に依頼すると結構な料金が発生しますが、自分でお店に行きそれぞれを購入すると一人当たり2000円かからずにそろえることができます。
品数は多く10種類ほどにする方が貰った方は嬉しく感じます。なるべく多品目にする。
引き出物の箱に詰める時のコツ
詰め方に決まりはありませんが、中身が乱れたり潰れたりないようにする必要があります。
あともう一つ大事なのが、箱によって詰め方が変わらないことです。箱を開けた時に人によって見え方が違っていたら不格好です。すべて同じように詰めていきます。
ですのでまずは一箱をモデルケースとして先に詰めていきます。
- まずは重さ・高さ・硬さがあるものを隅に配置する。
- 次に変形しても大丈夫な柔軟性があるものや向きをこだわらないものを隙間に置く。
- 続けて傷めてはいけない果物を上の方に置く。その時に隣が柔らかければなおよし。
- さいごに乾物などの軽量のものを置く。
上の写真は今回の詰め方です(リンゴの保護材や乾物のわかめが写っていませんが)。果物が一番傷みやすいので、果物の上には乾物などの軽く柔らかい物がくるようにします。
モデルケースが完成しますと、あとはどんどん詰めていくだけです。
ただ注意点として一箱ずつ作っているのではなく、すべての箱を同時進行で作った方が良いです。ですのでまずは箱を組み立てて一列に並べます。
作る数が5つ程度と少なければ一箱ずつ作ってもいいのですが、20箱以上を作成するならばすべての箱を同時に作った方がいいです。
理由は2点です。
- 品物の向きが揃って見た目が優れる。
- 用意した品物の数が合わなかったとき、どの箱にミスがあったのかがすぐわかる。
多くの数を作るとどんなに注意してても最初と最後で詰め方が変化してしまいますし、もしも用意した数の過不足が発生した時に、どの箱に何を入れた入れてないかがすぐに分かりません。
一品ずつ順番に詰めていくことで、最初から最後まで効率的に美しく詰めることができます。
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さいごに。引き出物は仏前にお飾りする
完成した引き出物は仏壇横や床(とこ)の位置に置き、お参りの人の目に見えるところにお飾りします。
そして法事当日にお参りに来られた人が持ってきたお供え物も引き出物に合わせてお飾りします。
その理由は繰り返しになりますが、法事の引き出物とは、参列者に持って帰っていただくお礼の手土産という面だけでなく、仏さまにお供えした品々のお下がりという面があるからです。
引き出物を事前に作るのは、法事のお勤めの後では引き出物を作るのが困難なので、施主がある程度事前に用意しておくためです。
参列者が当日に持ってこられたお供えも法事後にばらして、箱の中の余裕があれば引き出物の箱の中に詰めていきます。余裕がなければ持ってこられた品々だけで別に持ち帰りの袋を用意します(地域によって違いますが)。
なお最後に余談ですが『法事の返礼品を「引き出物」というのはおかしい。「粗供養」と表現するべき』・『引き出物は結婚式といった宴・慶事で使う言葉』と主張する人がいます。
しかしどうでしょうか、私の住む地域では法事のお礼の品々のことを引き出物(引き物)と当たり前に使います。
というのも法事とは仏法にであう有り難いご仏縁であるからです。ですので本当はめでたい(喜ばしい・尊い)出来事なのです。ですので宗派・地域によって違いますが水引も赤白色を使います。
引き出物は単なる返礼品と扱うのではなく、故人や仏様へのお供えでありそのお下がりとして配り、施主からの布施と思うべきなのです。