こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。
法事をするときに悩むことはいろいろありますが、その中の一つにどこで法事をしたらよいのかが決められない時があると思います。
昔ながらの感覚だと年忌法事は自宅でするのが当たり前だと思われるでしょうが、最近では変わりつつあります。
その場所の変化の一つがお寺での法事です。お寺での法事を「上げ法事」と呼ばれています。
今回は家とお寺での法事の違いを紹介します。
追記。お寺での法事の様子を知りたいとの要望がありましたので写真を交えて紹介しました。
家とお寺での場所による違い。
家での法事の特徴。
- 場所:自宅(施主の家)
- お参りの人に飲食の接待を家の者が基本する。
- 参列者に対して宿泊場所や駐車場所を用意することも。
- もしくは送り迎えを検討する。
- 家でするので法要場所が広く取れず、少人数になりがち。
- 遠方に住んでいる場合は、法事の用意のために、実家に帰らなければならないことも。
- 掃除が大変。
- 親戚が慣れ親しんだ場所なので落ち着く。
法要場所はもちろん自宅ですね。そして法事をする部屋はお仏壇が置かれている部屋。仏間であることが多いと思います。
家での法事の場合、やはり気になるのがお参りの方への対応ですよね。
遠方から時間をかけてお参りに来て下さるので、香川では最初にうどんをもてなす習慣があります(主に西讃の中讃よりで)。他にも地域によってはお寿司や赤飯などですね。これら以外にもお茶やお茶菓子の接待もあります。これは家の人がすることです。もちろん親戚の女性たちが手伝ってくれることもありますが、台所に入られるのが好まれないこともあります。
また遠方に住んでおり法事をする実家から離れたところにいる施主は、法事のために実家にたびたび帰らなくてはならないこともあります。例えば、掃除であったり、お花やお餅や果物などのお飾りの用意、引き出物の用意、食事処や仕出し屋の手配、参列者への宿泊場所の手配などなど、実家に帰らないとなかなか法事準備ができないこともあります。
長くなりましたが簡潔に言うと、
施主の家の人の負担が大きいのが家での法事です。
お寺での法事の特徴。
- 場所:寺(檀那寺・菩提寺)
- お参り時の最初の食事の接待はない。
- 休憩時のお茶の接待はお寺の人がする。
- 広い駐車場がある。
- 食事を場所を変えてする場合もあるが、お寺のお座敷でもできる。
- お堂の中は広いので、人数の規模は気にならない。
- 遠方に居ても、頼めば事前にお寺が用意をしてくれる。
- お堂は法要儀式をするための場なので、厳かな雰囲気となる。
法要場所は檀那寺のお堂です。お堂には須弥壇があり仏様が安置されています。ここで法事をします。
お寺は家と違い、広い駐車場・広い法要空間があります。そのため駐車場の手配や参列者も人数を気にせずお参りをすることができます。
ただ基本的にお寺の人が接待しますので、最初に軽めの食事は出ません。休憩時のお茶の接待が出るくらいです。
法要後の食事は場所を変えてホテルや食事処でもできるが、お寺のお座敷でも食事することができます。ただしその場合は仕出しに限られますね。
また何と言っても有難いのが、法事の用意をお寺が代わりにしてくれることです。
もちろん家の人が当日にお花を持ってきたり引き出物を持ってきたり、食事処の手配をすることができます。しかし遠方に居てそのような用意ができないことを伝えておけば、お寺が施主と相談した範囲で代わりに手配をすることができます。円龍寺の場合は、ほぼすべてのことを代わりにしています。金銭面でも施主が指示した金額で領収書付きの立て替え払いにしていますので、施主が自分で手配する場合と余分にお金が発生することもありません。
そのため施主やお参りの人は年忌法事の当日に決められた時間にお寺に来るだけですぐに法事を始められます。
簡潔に言うと、
施主の家の負担が大幅に軽減されるのが上げ法事の特徴です。
家やお寺での法事でも同じこと。
法事の内容は何も変わりません。
上げ法事について勘違いされていることに、上げ法事は簡素にするべきだ・簡素な法事だ、ということです。
これは誤りです。
参列者は施主の家族・故人の兄弟と言う人もいますがそのような決まりはありません。また、お飾りも控えめ、引き出物をしなくてもいいと説明する人もいます。なぜですか。
身内だけで法事をするのがお寺での法事ではないですよ。
むしろ各ご家庭のお仏壇というのはお寺の仏様を安置している内陣をイメージして作られているものです。そのもとになったお堂、故人が生前にお世話になったお堂で勤めるのがより故人を丁寧に偲んでいることになりませんか。
お寺での法要は大勢の人に来ていただいても問題ありません。円龍寺の上げ法事では20~30人以上の規模でお参りがあることも多々あります。
上げ法事は粗末だと考える人も中にはいるかもしれません。
いいえ、違います。丁寧です。
仏様の荘厳は家のお仏壇よりも厳かですし、親戚縁者一同の方々がお参りをし、果物を盛った盛り籠や供花をしていただいても問題ありません。その後の食事も施主の判断ですればよろしいのです。
家でする法事と同じことができ、なおかつ規模を大きくでき厳かな雰囲気でできるのがお寺での上げ法事です。法要時間やお勤め内容は変わることもありません。
繰り返しますが、上げ法事は粗末ではありません。
有縁の方々にぜひお参りしていただきたいです。
さいごに。上げ法事(あげほうじ)ってどんな言葉の意味。
冒頭で触れましたように上げ法事とはお寺でする年忌法要のことを指します。
しかしなぜお寺でする法事が上げ法事と言われているのでしょうか。
私はお寺の人間ですが明確なことはわかりません。昔からお寺での法事は上げ法事と呼ばれていたそうです。
私が今まで訪ねてきた中で、もっともらしい上げ法事の名前の由来を紹介します。
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お寺の本堂に上がってお勤めをするから「上げ法事」
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弔い上げの法要をお寺でするから「上げ法事」
この二つが私の中ではもっともらしいです。他にもお寺でお経をあげてもらうからというのも聞いたことがありますが、違う気がします。
個人的には1のお寺の本堂に上がってお勤めをする方が正しい由来のように感じます。なぜかと言うと、お寺の空間は家とはまた違うんですよね。門をくぐること、石段を上がって縁を歩くこと、お堂の中に入ること、そして御本尊の前で手を合わすこと。お寺の上げ法事とはすべての行動が仏教につながります。
そもそもお寺のお堂に入ることを、縁に上がるやお堂に上がると言いますよね。そのことからお堂に上がってする法事をそのまま「上げ(あげ)法事」と呼ぶことに私は違和感がないのですが。
他にも例えばお寺の法要で導師が登礼盤にあがって座ることをそのまま登壇と言うように登る・上がるという言葉は割とそのまま使うと思います。
2つ目の弔い上げの法事をお寺でするから上げ法事という説明も聞いたことがありますが、私は違うように感じます。なぜなら私の住んでいる香川の丸亀ではそのような習慣は聞いたことがありません。家でしますよ。そもそも法事に終わりの年忌法要は決まっていないはずです。それがなぜか一部では、「33回忌などが最後に勤める年忌法要ですよ」とまことしやかに伝えられています。人によっては50回忌を勤めますし、それ以降の年忌法要も勤めます。年忌に終わりがあると思いますか。
それなのにいつの間にか、弔い上げ(最後の年忌法事)はお寺でするから「上げ法事」と呼びますよ、は違うでしょ。いやいやたとえ最後であっても、家で年忌法事を勤めたらよろしいじゃないですか。なんで最後と決めた法要だけお寺でするのですか。意味が分からないよ。
ちなみに辞書では弔い上げの説明に「揚げ(あげ)法事」と類語が示されています。いやいやどこから揚げという漢字がやってきたんですか。謎です。
ちなみに私の過去記事では、お寺で勤める年忌法事の増加傾向やメリット・デメリットについて紹介しています。
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【追記】お寺で法事を行っている様子。
内陣のお飾りの様子。
お寺で法事をする場合、施主がお花やお供物を用意されることもありますが、お寺に頼まれている場合はお寺の手で事前に用意をしておきます。
法事当日は施主は故人のお写真と繰り出し位牌(もしくは過去帳)を持って来てください。
上の写真はお寺が事前に準備しておいたお花とお供物の飾りです。それに施主が遺影を持って来てお飾りした様子です。(当然、お蝋燭もお香もお寺が準備しておきます)
その他、当日に持ってこられたお供えなどのお飾り。
内陣には事前にお寺が用意したお餅や果物などのお供えや供花をお飾りしていますが、法事当日にはお参りの人がそれぞれにご仏前としてお供えを持ってきます。
そのときは上の写真のように、外陣に飾られた引き出物の左右に新たに机を用意して、ご持参されたお供え物をお飾りする場所を用意します。
読経と読経後の法話の様子。服装についても紹介。
お寺で法事をする場合も家でするのと同じように、お勤めが進められます。中休みも一回は挟みます。
自坊ではまだ普通法事はお坊さん2人でお勤めすることが多く、読経時の写真は撮れませんでした。
上の写真は導師を勤めた住職が読経後に黒板を使いながら法話をしている様子です。
お参りの人の様子を見ていただいたらわかりますように、お寺での法事(上げ法事)だからと言って少人数の粗末な法事ではありませんよ。
お寺での法事は厳かであり、多くの人がお参りできる空間です。
また服装についても少し触れておきます。
お寺での法事も家でする法事と同じですので、家で法事をするときと同じフォーマルな服装をしてください。
つまりカジュアルやラフな普段着でお参りに来られるのはなるべく避けてください。(例えばジーンズや短パン、シャツ姿のこと)
法事の服装について決まりはありませんが、常識の範囲では次の一例を示します。
男性 | 女性 |
黒色系統のスーツ姿。 ネクタイも忘れずに。 靴はシンプルな黒色系統。 |
パンツスタイルはなるべく避ける。 アクセサリーは極端に目立たないようにする。 靴はシンプルな黒色系統。 |
スーツや喪服を持っていないお子さんの場合は、整った普段着でもいいですし、幼稚園や小学校、中学校、高校で着ている学生制服でもOKです。
まああまり難しく考えずに普段の法事と同じ服装でOkです。(今の時代なら略礼服ぐらいの姿ですね)
法事の後の食事。
お寺で法事をした後は、引き続いてお寺のお座敷でも食事をとることができます。もちろん場所を変えてホテルや食事処でも大丈夫です。(食事の場所を変える時、食事処がバスを手配できる場合はお寺の駐車場に迎えを頼んでもいいですし、そのまま各人が車に乗って向かってもいいです)
ただしお座敷はそれほど広くなく20名程度の食事スペースしか取れません。
そのため、30名以上がお寺で食事をする場合は自坊では断るような形になります。
お食事の内容は施主が事前打ち合わせで提示した予算に応じてですが、基本は「仕出し料理+茶碗蒸し+お吸い物」になります。予算に応じて刺身盛り合わせやちらし寿司、鍋などが追加されます。
法事にかかる時間。
繰り返しますが、お寺での法事(上げ法事)も家でする法事も法事の内容は同じです。
ただ事前準備をお寺に任せている場合はお参りの人や施主はお寺に来るだけでいいので、法事開始の20分前程度に来ていただければOKです。
法事そのものの時間も、浄土真宗の場合は中休みを一回はとりますので、法話も含めておよそ1時間30分くらいです。
その後の食事も含めると2時間から2時間30分程度ですかね。
法事にかかるお金。
法事にかかるお金は、繰り返しになりますが、施主との事前打ち合わせによって決まります。
自坊円龍寺の場合は、仕出し業者や花屋、餅屋、果物屋などからキックバックを頂いていませんので施主が提案した通りの金額で用意をすることができます。
またお寺に準備を依頼すると施主が負担以外にも助かることがあります。
それは多少の無理が通るということです。
お寺というのは仕出し屋や花屋・餅屋などなどに年間に何度も注文をします。するといわゆるお得意様のようになっていますので、あちら側もお得意様(お寺)からの要望にできる限り答えてくれようとしてくれます。
例えばご仏前にお飾りする鏡餅は一番小さいサイズは5合からですが、無理を言って3号で用意してもらうこともできますし、引き出物の品に無理を言って一品だけ予算に収まるように見栄えのするものを用意してくれることもあります。(無理な場合はあちらも商売なので断ってくれます)
これは一例になりますが、法事にかかるお金を示します。人数は15名とします。
- 食事料金:一膳6000円×15人。計9万円。
- 持ち帰り用ばら寿司:1000円×15人。計1万5千円。
- 引き出物:2000円×15人。計3万円。
- 本堂使用料(仏花やお香・お蝋燭などの諸経費+接待料)1万円。
この場合は総計で(13万5千円+消費税)+1万円をお願いすることになります。立て替え払いですでに各業者にお支払いしているのでお寺から施主に領収書をお渡しすることになります。
もちろん上の金額はお寺で法事をするために施主と事前に打ち合わせた範囲で発生したお金です。これに加えて施主はお布施をします。
さいごに。
どうですかね。お寺でする法事の進行・内容が伝わりましたでしょうか。
お寺によっては、「お花は持参してきてください」・「食事はお寺ですることはできません」・「お寺は事前準備ができません」などなど自坊とは違った条件で上げ法事をしている場合はもあるでしょう。
いずれにしても上げ法事とはお寺でする法事のことです。
お寺の人と何度も連絡を取り合い間違いの無いように法事の準備を進めてください。