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寺院運営において商標は取得するべきはないだろうか

こんばんは。 真宗興正派僧侶のかっけいです。

寺院(宗教団体)は宗教法人を所有しています。

お寺というのは一般的に古くから存在しています。新しいお寺でも明治から大正頃に建立され100年は経過していることが多々あります。

それこそ宗教法人法(昭和26年)の制定よりも前からその地域と密着し、人々の信仰・礼拝・聞法・修行の場となっています。

古いお寺になると、江戸時代以降、400年・500年・600年以上も前から地域に根付いています。

お寺は有って当たり前。寺院運営にケチをつける人なんていないなんて思うかもしません。

しかし実際にはお寺というのは宗教法人という一部免税されている部分や、僧侶の私物化にもとれる部分などにより、時々内外から揉め事が発生します。

今回は商標について書き綴ります。(私も法律については素人なので、詳しくは説明できませんが、お寺の護持を考えるうえで心にとどめておく必要があると感じます)

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お寺のアイデンティティーは何だろうか。

アイデンティティとは、本人にまちがいないこと、身分証明、自分自身の存在を明らかに示すこと、の意味です。 

お寺全般のアイデンティティーと言えば、例えば、その宗派の教義・ご本尊がありますよね。

浄土真宗のお寺なら本尊は阿弥陀仏。真言宗なら大日如来などですね。

じゃあこれを一つ一つのお寺に絞ると、何がアイデンティティーとなるのだろうか。

例えば寺紋(じもん)ですね。家紋と同じでそれぞれのお寺にあるでしょう。

でも皆様にもっと馴染みがあるアイデンティティーがありますよね。

そう、お寺の名称です。

例えば自坊の寺号は、円龍寺(えんりゅうじ)です。

でも円龍寺だけだと全国に20か寺ほどあって、アイデンティティーになりえそうにないでしょう。

でもお寺の名称は寺号だけでなく、山号と院号がある場合もあります。

自坊は金顕山智浄院円龍寺です。この名前の寺はどこにもないので、この寺独自のアイデンティティーですよね。

例えば真宗興正派の本山は興正寺(こうしょうじ)です。この寺号も全国探せば数ヶ寺あります。

しかし本山正式名称は圓頓山華園院興正寺であり、やはりアイデンティティーですよね。

お寺は宗教法人ですので、役所には住所や寺院名称等を添えて提出します。これで本人だと示しているのです。

お寺にとって寺院名は非常に大切なのです。いや、お寺に限らず、法人・企業は自身の名称を非常に大切にしています。

商標登録している寺院名はどれだけあるのだろうか。

一般的に大きな企業は自社のブランドを大切に守ります。

ブランド化して誰にも侵されない企業の柱とするのです。

『コーポレートアイデンティティ』という言葉があります。

企業文化を構築し特性や独自性を統一されたイメージやデザイン、またわかりやすいメッセージで発信し社会と共有することで存在価値を高めていくことです。

企業・法人がアイデンティティを確立するためには、人々に認知されるということだけでなく、ロゴやマークやキャッチフレーズ、商品名、自社名を知的財産として商標登録していくことが不可欠です。

  • 例えばシャープペンシルは商標であり、一般名はメカニカルペンシルのこと。
  • セロテープも商標なので、一般名のセロハンテープにすること。

このように身近な道具でも商標があり、一般名よりもより普及しています。他の企業に利用されず、なおかつ自社のブランドとして世の中に浸透できる、これが企業努力です。

例えば私たちがよく使用する宅急便もヤマト運輸の商標ですので、他の宅配サービスは名称の変えなければなりません。

では振り返ってみてお寺の現状はどうなっているのだろうか。

どれだけのお寺が自坊の「寺紋」・「寺号(山号院号)」を守っているのだろうか。

おそらく商標権を取得している寺院はほとんどないだろう。

これは一般の企業からすれば常識外れの行為ではないだろうか。

お寺というのは有って当たり前という驕りがあり、まさか明日から『あなたのお寺の紋や寺号は使用禁止ですよ。私から使用許可貰ってください』と言われて対応することができるのだろうか。

有名な寺院名は商標出願を却下されるのではないか?

さて大きな企業は自社ブランドの確立のために様々なものに対して、細かく特許や商標を取得しています。

それだけ特許や商標は大事なのですが、内容によっては出願を却下されることがあります。

  1. 自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの
  2. 公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの
  3. 他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの

例えば本願寺や知恩院や善通寺などは非常に有名な本山寺院でしょう。(商標を取得しているのかは私は知らない)

これらの寺院名称を特許庁に出願しても、歴史があり、広く周知されている場合は却下されるのではないだろうか。

詳しくは特許庁のページ『出願しても登録にならない商標』を参考にしてください。

だから本山クラスの有名寺院は、まさか他人に商標権を取得されることはないと考えているのではないだろうか。

それは私の属する本山興正寺もそうです。興正寺も2世真仏上人から数えると900年近く歴史のある浄土真宗の一本山です。また寺としては皇族に最も近い血縁です。まさか興正寺の名称や紋の商標を取得できないだろう。

でもスローガン・メッセージはどうなる?

お寺の名称は寺院のアイデンティティです。お寺が門前に掲げるのも寺号です。

悪用や嫌がらせで他人に商標権を取得された時に対応できるのだろうか。

本山でも寺院名称の商標を取得していないのではないだろうか。他人が出願しても却下されると踏んでいるのだろうか。

でももしもこれがスローガンやメッセージならどうなるだろうか?

興正寺のスローガンは「興隆正法(こうりゅうしょうぼう)」運動です。

興隆正法は正しい仏法を興隆するという願いが込められた言葉です。この言葉は聖徳太子の言葉と伝えられ、興正寺の名称の由来ともされています。

もしも興正寺での申請が不可能でも、興隆正法という言葉はどうなるのだろうか。

一般的にありふれた言葉でもなく認知もされていないでしょう。ひょっとすると許可が下りるやもしれません。

そうなると興隆正法運動を進めるにあたり、旗や書籍に興隆正法を印刷するときに商標権の問題が生じてきます。そんな事態になれば興正寺は本山としての危機感・使命感に疑念を抱かれるのではないだろうか。自分たちにとって最も大切なスローガンを使えない。それは本山としていかがなことか。


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さいごに。寺の存在意識が怪しい時代だからこそ足元を固める必要がある。

お寺というのはこれからの時代どんどん縮小消滅していきます。

それは末寺だけでなく本山の護持にも関わってきます。

商標の法律が定められてから60年が経とうとしています。寺院名称や紋は誰にも侵されない財産と思われていたのかもしれませんが、それが確かなものかは怪しいところです。

一般企業ならば自社ブランドの確立のために必ず特許や商標を取得します。

寺院が商標を取得する必要はないという意見もあるかもしれません(お金がいるからね)。

でも時代はどんどん変化し、寺院の存在意義が問われ、寺院や仏教や宗教への意識・関心が失われつつあります。

中には悪心から商標を取得し嫌がらせをすることもあるやもしれません。

そのような不安を取り除くためにも、自分たちの持つ権利を取得し、地盤を固める必要があるのではないだろうか。

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