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第141回目のラジオ配信。「寺の過去帳」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
この番組では香川に住む浄土真宗のお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをするラジオです。
今回は「寺にある過去帳を調べてもらうこと」についてお話します。
先週、円龍寺のご門徒ではない方から、過去帳についてのご質問をメールにて頂きました。さっそく返信をしたのですが、反応がありませんので、ひょっとしたらこの音声ラジオを聞いている方かもしれませんので、この音声をもって、過去帳についてお話していきます。
質問の内容は、寺の過去帳を調べてもらう事についてでした。
まずは頂いたメールの内容を個人がわからないように、かいつまんで紹介します。
亡き祖母の墓参りに行くと、祖母の両親や古い時代の墓石があり、先祖を調べてみたくなりました。
寺の住職にお願いし、過去帳の一部を見せてもらいましたが、住職から先祖の屋号がわからないと、推測のまま見ていくことになると説明され、いったん帰りました。
ですが、またもう一度、先祖を調べてもらいたいと思っています。
墓を見ているのは、亡き祖母の弟の家で、今は疎遠となっています。
このような状態で、寺の住職に、寺の過去帳を遡って調べるようお願いするのは失礼なことなのでしょうか?
というご質問でした。
過去帳を調べてもらいたいという問いに対して、私は次のようにメール返信しました。
本文のみを読みます。
「もう一度、ご住職に調べてもらう事については、失礼には当たらないと思います。
ただし、お寺にとりましても、過去帳はご本尊と同様に大切なものとなります。
軽々に開示するものではありません。できれば、直系の方もしくはお寺と現在お付き合いのある方の紹介であれば、開示してもらいやすくなります。その親族といえども、昨今の利害関係を伴う個人情報の守秘義務については、お寺によってはためらう住職もいると思います。
それと関連することですが、常のお付き合いができている檀家であれば問題ありませんが、やはりご住職のお手を煩わす以上、ご懇志もしくは御布施をご持参する事が基本的な心得となると思います。」
以下このラジオでは、補足として、寺の過去帳について、簡単に説明していきます。
過去帳には寺が管理するものと家の仏壇にある二種類があります。
家の仏壇に置かれている過去帳は、位牌と同じようなもので、その家の先祖が亡くなった日にちやそのお名前が書かれています。
一方で、寺の過去帳は、その寺の門徒あるいは檀家の生前の名前や住んでいた場所、法名や戒名、亡くなったときの年齢、誰とのどんな関係という続柄などが書かれています。
寺の過去帳は、寺と門徒とをつなぐものとして、お寺にまつられている仏様と同じように大切な物とされます。寺が火事にあった場合、かならず持ちだすのが、過去帳だと私は言われています。
寺の過去帳も家の過去帳も、どちらも寺の住職が書きますが、寺の過去帳のポイントとしては、亡くなった順番・日にち順で書き足されていきます。
つまり家単位で過去帳が書かれているわけではありません。
過去帳を調べてもらう時には、これがやっかいなポイントとなります。
寺の門徒の亡くなった順番で書かれているので、家の先祖を調べて欲しいといわれても、すぐにそのつながりが分かるわけではありません。
自分の家の先祖を見せて欲しいとお願いされましても、他の家の先祖の情報も、目に入ってしまうので、昨今では、個人情報の守秘義務というのがありまして、なかなか、はいどうぞ見てくださって大丈夫ですよと、寺の過去帳をみせるわけにはいかないのです。
寺の僧侶が時間をかけてひとつずつ亡くなった人の名前や亡くなった日にちを見ながら、この人とこの人は、親子関係だ、兄弟関係だと確認しなければなりません。
過去帳の記録が身元調査に利用されたというケースもあるようなので、寺によっては、寺の過去帳は絶対に見せないということもあるでしょう。
なんにせよ、寺の過去帳は、寺の仏様と同じように大切な物であり外部にも漏れてはいけないものなので、例えば写真をとられたり、破られたり、燃やされたり、文字を消されたりされては一大事なので、原本の過去帳を直接見せてはなかなかくれないでしょう。
私のいる寺円龍寺の場合で言えば、常のお付き合いができているご門徒さんからの直接の依頼があった場合のみ、寺の僧侶が、過去帳を確認して、その家の先祖を書き出していきます。
その場合、その家にある過去帳や位牌箱をお預かりすることもあります。
過去帳から先祖を調べるのは簡単なように見えて、けっこう大変です。
例えば、旧字や異体字のように、現在では使われていない漢字が崩されて書かれていることがあります。
他にも、生前の名前が親子で一緒なケースや、代をまたいで何度も使われているケースもあります。
同じ地域で住んでいた人たちで、同じ名前が使われていることもあります。
また死別が多かったからか、再婚を繰り返され、この方はどちらのお子さんであるか判断が難しかったりすることもあります。
時にはお墓に刻まれている文字と、過去帳の記録が一致しないこともあります。
そんな風に、寺の過去帳、家の過去帳、位牌・墓など見比べながら、その家だけの先祖のつながりを調べていくのは大変なことです。
ですので、円龍寺の場合は、過去帳を調べて欲しいと依頼されましたら、最低でも一ヶ月、数か月はお時間をいただくことになります。
今回の話をまとめますと、寺の過去帳を調べてもらう事自体は失礼に当たらず、問題ありません。
ただし、どうぞご自由にご覧になってくださいと開示される寺は非常に少ないと思います。
過去帳を調べてもらう場合、寺との常のおつき合いができている本家筋・直系の方から依頼することをおすすめします。
寺の僧侶が調べてくれることでしょう。
また心得ですが、過去帳を調べてもらうときは、懇志、御布施をご持参することが基本です。
以上で、2022年6月21日配信の過去帳のお話を終えます。
過去帳を調べてもらう事は失礼なのか?
いただいたお便りの質問にお答えします
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過去帳とは
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「もう一度、ご住職に調べてもらう事については、失礼には当たらないと思います。
ただし、お寺にとりましても、過去帳はご本尊と同様に大切なものとなります。
軽々に開示するものではありません。できれば、直系の方もしくはお寺と現在お付き合いのある方の紹介であれば、開示してもらいやすくなります。その親族といえども、昨今の利害関係を伴う個人情報の守秘義務については、お寺によってはためらう住職もいると思います。
それと関連することですが、常のお付き合いができている檀家であれば問題ありませんが、やはりご住職のお手を煩わす以上、ご懇志もしくは御布施をご持参する事が基本的な心得となると思います。」