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第155回目のラジオ配信。「見る肥料」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
この番組では香川のお坊さん、私かっけいが、短い雑談をするラジオです。
2022年9月27日配信予定の今回は、「趣味の家庭菜園と見る肥料」をテーマに雑談します。
さて、先週は台風14号と15号が来ましたね。
幸いにも私の住む香川県は、それほど雨風は強くなかったんですが、九州の宮崎県などでは、多くの田畑が水没して大変な被害にあったそうですね。
また静岡県では記録的な大雨が発生して、大規模な停電があり、これまた大変な被害だったそうです。
秋の台風は夏の台風と比べて、あっという間に通り抜けていくので、被害はそれほど起きにくいイメージなのですが、ここ最近は、異常気象が続いているのか、秋の台風でも、夏の台風みたいに激しい雨、長い時間の雨が降るようになったんですかね。
台風がやってくるたびに畑のお野菜や果物、お米が被害にあってないかなあと思います。
農家の方達が精一杯作ったものが、台風一つで、駄目になってしまうのは、本当に辛いものだと思います。
私はお坊さんなので、お野菜や果物やお米を作る農家ではないのですが、私も小さな畑で、ちょっとした家庭菜園をしています。
私は地元の大学の農学部に行ったからか、今でも、お野菜や果物を作ったりするのが、趣味だったりするわけなんですね。
今年は梅雨に雨が全く降らなかったり、夏のほとんどが35度の猛暑日だったりと、毎年毎年、いろんな天候で、毎年お野菜の育ち方が違うなあと感じます。
でも今年は、素人の私なんですが、割と家庭菜園が上手くいったような気がします。
畑でお野菜を作ってますと、散歩をしている近所の人、顔の知らない人が、上手に作ってるね、何を作ってるの、とか、他にもこうこうした方がいいよとか、いろんな事を声掛けしてくれたりしてくれます。
ご近所の方からは、私が農学部を卒業しているのを知っているでしょうから、野菜作りはお手の物と思っているのかもしれませんが、実際はそんなことなく、本職の農家と比べたら、お遊びみたいなもので、取れたらラッキーぐらいな感じで育ててます。
本当に趣味のレベルで、病気にあったり十分に大きく育たなかったり、草で覆われたりと、お店で売られている野菜と比べると、ぜんぜんレベルが違います。
プロが作るのとは全然違いますが、それでも、お野菜を作るのって面白いなあと思います。
それで私が趣味で家庭菜園をするにあたって、一つだけ自分の中でのルールがあります。
それは農薬を使わないことです。
でもそれは農薬の存在が悪いからではありません。農薬は虫や病気や草を取り除いて、人為的な環境で、農作物の収穫量・品質を最大限に高めようとします。また作る人の負担も大幅に減らしてくれます。
営利的な目的でお野菜を作る農家にとって、農薬はなくてはならない存在です。
一方で、私の場合は趣味の家庭菜園です。
農薬をわざわざ使う理由がありません。
時間や病気はかかり、取れる量は減りますが、一方で、農薬を使わないと、お野菜作りが楽しくなると私は思います。
簡単に言えば、手間が増えるからです。
農薬を使わないと、同じように種まきして、同じように苗を植えても、育ち方に差が出てきます。
いろんな要因があるんでしょうが、その育ち方の違いが面白かったりするんですね。
野菜って、ひ弱に思える一方で、実は意外に強かったりもして面白いです。
こんなに虫に葉を食われても、大きく育って、実をつけるんだなあって、その植物の生命力に驚かされます。
農薬を使わないと、畑が雑多な感じがして、こんな環境でよく育つなあと最初は思いましたが、一方でいろんな生き物の生態系があって、お互いがうまく関係しあって、いいところ悪いところを補いながら育っているんだと思います。
趣味の家庭菜園の面白いところは、畑の様子を見るのがとにかく飽きないことです。
私が農学部に行ってた学生時代に、大学の図書館で、「見る肥料」について書かれていた本があったと思います。
「見る肥料」という言葉が書いてあったかは、ハッキリ記憶していませんが、たしか、「毎日、作物にあなたの足音を聞かせるのが最高の肥料」みたいなことが書かれていたと思います。
作物に足音を聞かせたところで、何が変わるのかと思う人も多いかもしれませんが、私はけっこう変わると思います。
それは、変わるのは、作物ではなくて、私自身の見る目が変わると思います。
畑を眺めていると、いろんな生き物が生きていることに気がつきます。また、同じように育っている植物でも、お隣通しで、微妙に育ち具合に差がありますし、一つの植物の中でも、虫が集まっている所、集まらない場所があるとか、いろんな違いが見えてきます。
それに毎日見ると、植物のたくましさと言いますか、一日でこんなに成長したんだなあとか、あんなに小さい種からよくこんなに大きくなったんだなあと感慨深くなります。
畑によく足を運び、様子を何度も見て、ちょっとした変化に気がついて、お世話をしてあげることで、作物が育っていく、これが「見る肥料」なんだと思います。
畑にただ立っているだけの私を見かけることもあるかもしれませんが、あれは私なりの「見る肥料」です。
畑で飛んでいる虫、風で揺れている葉っぱ、育ちの良い野菜、悪い野菜、どれも毎日違う様子を見せてくれるので、5分でも10分でも15分でも、いつまでも畑にいれるぐらい楽しい場所です。
農薬を使わない私は、別に面倒なことをしたいわけでなくて、育つ植物、そこに生きる生き物の様子を見ることが大好きなんだと思います。
それでその畑の生態系、環境を崩さないためにも、農薬を使わないだけです。
それと、趣味での野菜作りで面白いなあと思うところが、野菜ってけっこうたくましいから自分流の育て方で育てても、形や大きさは悪くても意外と収穫できることです。
ここ数年は、土を耕さずに、種まきしたり苗を植えることをしたりしてます。
単に耕すのが面倒なのと、土の中の生き物にとって、地面がかき混ぜられたら嫌だろうなあと思って、土を耕していないだけなので、深い意味はないのですが、意外に耕さなくても、野菜は育つんだなあと最近つくづく感じます。それと雑草があまり生えないような気がします。
「見る肥料」は私なりの言葉なんですけど、見るというのは、本当に野菜にとって、いい栄養なんだなあと思います。
それは言い換えると、愛情や思いやりなんだと思います。
別に見ることそのものが、野菜にとって、すくすく育つ栄養になるわけでないのですが、畑の生き物の様子やその植物の微妙な変化にいち早く気がついてあげて、手を差し伸べられる。
それが野菜の成長にとっていいんじゃないのかなあと思うところです。
意味がない人には意味がない行為なのでしょうけど、「今日も元気に育ってるね」とか、声をかけるのも、肥料だと思います。
声をかけてもらうと植物が育つのではないですが、人が植物の近くに行って、声をかけるということは、植物の様子を目の前で見ることになるので、体調の変化に気がつきやすくなると思います。
特に用事がなくても、畑の様子を見る・畑に立つ。
見る肥料は、趣味の家庭菜園で重要なものだと私は思うところです。
プロ農家のような野菜を作るのが好きな人もいるでしょうが、私の場合は、畑の環境を残しながら野菜や生き物を見て育てるのが好きです。
以上で、2022年9月27日配信の 「趣味の家庭菜園と見る肥料」の話を終えます。
私の育て方を参考にしてほしいわけではなくて、私が畑で何にもしていないのに、ただ立ってたり座ってたりしてるのは、そんなわけがあるんですよという話でした。
ちなみに余談として、プロの農家でも、野菜の苗を手でなでるとか、クラシック音楽を聞かせるというものがあるらしいですね。
これは見る肥料に近いような気がしますが、実は合理的な理由があります。
野菜の苗をなでる、例えば、ネギや白菜の小さな苗をなでるのは、たしか植物ホルモンのエチレンを発生させて、植物の徒長を防いでがっちりした苗を作る働きがあるそうです。
またクラシック音楽を聞かせるのは、400から500ヘルツの空気の振動を発生させて葉っぱの呼吸が促されて、よく成長するというものです。
植物がなでられて喜ぶとか、クラシック音楽を聞いてリラックスするわけでないのですが、やっぱり人が愛情を
こめて気をかけて育てると、それに応じて、植物は影響されるんだなあと思います。
それで言うと、人が畑を歩くときの微妙な振動も、植物の成長が促されるというのもあるらしいので、そういう意味でも、畑に足を運ぶのは植物の成長にとっていいのかもしれませんね。
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