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第35回目のラジオ配信。「総代」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
なかなかコロナウイルスが終息しませんね。
このラジオでも3周ぐらい続けてコロナウイルスのワードを使っていますが、今回もコロナウイルスに関連したことをラジオテーマにしました。
2020年3月24日に放送予定の今回は、「総代」をテーマにお話します。
私の住んでいる所は香川県です。そして私はお坊さんです。
3月にはお涅槃やお彼岸、4月になると春の法要が多くのお寺で開催されます。でも2月の終わりに、安倍総理大臣が小学校・中学校・高等学校の休校要請をして、さらには集会の自粛要請もしましたよね。
お寺の法要もいうなれば、仏教イベントの集会ですから自粛の対象です。でもご門信徒には数週間前からすでに法要の案内をしているので、3月上旬に開催予定のお寺の多くは、法要をしました。
その時に「あんたのところはどうするんや」「私のところは延期・中止を考えとる」、「金比羅の金丸座は歌舞伎をする予定らしいで」などと、法要に集まったお坊さんたちがごぞごぞと相談しているんですね。
あれから3週間ほどたった今現在ですが、多くのお寺が中止もしくは延期を決定しました。こんぴら歌舞伎も4月11日から26日までの全日が中止になりました。
コロナウイルスがどこまで広がるのか、いつ終息を迎えるのか見当もつかない時ですが、文部科学省も4月からは学校も再開する指針を発表しました。
密閉・密集・密接な環境を避けることで、お寺も仏教イベントができるのではないかと考え、私の寺では4月4日の春永代経を5月5日に延期して法要をすることを決めました。
さて今回のテーマは「総代」です。
- 寺の総代にはどんな役割があるのか。
- どんな人が選ばれるのか。
- 世話人とどう違うのか。
など、総代について知らない人がおおいのではないでしょうか。
しかし寺院運営において、総代は必要な存在なのです。今回のコロナウイルスによる法要の中止・延期においても大切な役割を持っています。
あんまり複雑なことを言って、聞いてくれている人を混乱させてはいけないので、先に要点を3つに絞って言いますね。
まず第一に大切なことですが、お寺は住職(お寺の人間)の財産ではありません。そして総代の財産でもないんですね。
大切なことです。
じゃあお寺の財産は誰のものかと言えば、お寺とは宗教法人の法律によって認められているものであり、お寺の財産は法人の財産であります。お寺の人間は、自由に好き勝手にお寺のお金を使ってもいいのではありません。
じゃあ、どうやって、お寺の運営していけばいいのでしょうか。
これが2番目に伝えたいことで、お寺の運営は責任役員が行っていることです。
お坊さんは宗教や儀式に関するお仕事をします。寺の運営は責任役員の仕事です。
3番目に伝えたいことが、宗教法人法の法律では「総代」と呼ばれる役職の規定はないんですね。
つまり皆さんが総代って言っているのは、古くからの慣習で使われている言葉なのです。
- お寺のお金はお坊さんが自由に使えない
- お寺の運営は責任役員の仕事
- 総代という言葉は、宗教法人の法律にはない
この3つを踏まえて、総代の仕事や役割をもう少し詳しく説明します。
今回のコロナウイルスによるイベントの延期・中止においても、お寺はなるべく早く法要をするのかしないのかを決めて門信徒に伝えないといけなかった。
でもこれは、お寺の住職の独断で決めることはできないんですね。
法要はお寺の行事であり、世話人の助けも必要ですし、他のお坊さんもお参りに来ます。ご門信徒の人たちも他を休んで都合をつけてお参りに来ます。
当然、お寺も法要にむけて掃除をしたり仏前を飾ったりと準備します。
住職の独断で、法要をするしないと決められたら、お寺の運営も楽になりますが、それだと宗教法人として認められた寺が好き勝手な活動をして、寺が住職の私物化となる恐れがあります。
寺の運営は責任役員が決めます。宗教法人法では3人以上の責任役員が必要です。ちなみに寺の責任役員は誰なのかという書類は、所轄庁に提出しなければなりませんよ。
そしてこの責任役員の中から代表役員が選ばれます。例えるなら法人のリーダーですね。
大抵のお寺では住職が代表役員を勤めているのですが、だからと言って、住職が独断で寺の運営をしていいわけではありません。
必ず他の責任役員と相談し意見を聞き、了承を得なければなりません。
今回のコロナウイルスでもそうです。さっさと法要を延期・中止したらいいだろう。なんですぐに決めないんだと思う人もいるでしょうが、寺は責任役員と相談し、寺院運営を決定するのです。
時々「住職は一国一城の主」と大きな勘違いをしているお坊さんもいます。でもそれは違います。なんぼ自分が宗教法人の代表役員であろうと、寺を私物化することはできず、寺を改築したり、イベントをしたり、教室をしようとするといった、宗教法人のお寺の場所やお金を広く使うときには、必ず他の責任役員と相談し決定しなければなりません。
「あっ、あれしたいなあ」や「これはさっさと止めるべき」と、フットワークが軽く活動できるお坊さんが褒められたりしますが、寺院運営は責任役員全体で決めることです。
さて総代という言葉がいつまでたっても出てこないので、飽きてきた人もいるでしょう。
すでにお気づきでしょうが、責任役員を勤めているのが総代なのです。絶対ではないですが、多くのお寺では責任役員=総代のことが多いです。
総代というのは、ご門信徒の中からの代表者であり、ご門信徒をとりまとめ、寺院の運営も任される。リーダーシップと責任感・信頼される人が選ばれます。
より具体的な選び方は寺によって違いますが、一般的には、そのお寺とつき合いが古い家、地元のその地域に影響力のある家、そして寺の将来や問題点を真剣に考えてくれる人が選ばれます。
私がなりたいと立候補し、責任役員になって寺を自由に運営しようといった考えでは、総代にはなれません。
総代が責任役員であるお寺がほとんどであり、総代は寺の人間や住職が寺を私物化しないように寺院運営を管理し、またご門信徒をまとめることができる重要な存在なのです。
さて最後に、世話人についてもかるく説明します。
簡単に言えば世話人とは、お寺の世話をしてくれる人ことをさします。
世話人は総代とは違い、つまり宗教法人の責任役員とは違いますので、所轄庁に届け出る必要がありません。最低限必要な人数というのもないです。
総代は責任役員として、住職と一緒に寺院運営を取り決める役割がありますが、世話人にはそういった役割はありません。
お寺の世話の内容もお寺によって異なりますが、もっとも一般的なのが、法要の案内状を自分の住む地域の門信徒の家にお知らせすることでしょうか。
- 寺の人間は仏教法要の場を用意し宗教活動をします。
- 責任役員総代と代表役員の住職は寺を管理します。
- 世話人は法要の案内などにより寺の活動を支えます。
今回のコロナウイルスでも、世話人の中からは、いつになったら春の法要の案内状が用意できるのかと催促がありました。
お寺のことを気にかけていただき有難いことです。社会の情勢を見ながら、なるべく多くの人が安心してお参りできる法要の場を設けられるのかを、住職や総代が見計らっています。
今年の円龍寺は総代の了承を得て、4月4日から5月5日に延期することを決めました。また感染症予防の対策もいたします。
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