特需で盗まれた寺の鐘.#154

第154回目のラジオ配信。「盗まれた寺の鐘」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

ラジオテーマ「盗まれた寺の鐘」内容まとめ
  • 特別な需要のときは物が不足する
  • 1950年から1953年まで朝鮮戦争があり特需があった
  • 特需により金属類の盗難があった
  • 円龍寺の本堂に吊り下げられていた喚鐘(半鐘)も盗まれた
  • 幸運にも円龍寺の鐘は戻ってきた
  • 有名なものでは広島の平和の鐘が盗まれ、現在も行方不明
香川県丸亀市円龍寺の本堂に吊り下げられている喚鐘(半鐘)
円龍寺本堂の縁の喚鐘

かっけいの円龍寺ラジオ

この番組では香川のお坊さん、私かっけいが、短い雑談をするラジオです。

2022年は台風が少ないなあと思ってましたら、9月になって、急に台風がたくさん日本にやってきていますね。

9月の頭には台風11号が沖縄の方に近づいて、そして今の9月19・20日頃は、台風14号が沖縄から九州、本州の方へと日本を直撃していますね。

ニュースを聞きますと、大型の台風がくるたびにスーパーなどでは、食料品などの生活必需品が商品棚から買いだめで消えるらしいです。

なかなかお店の商品棚から物が消えるなんて光景は、「そんなバカな」と、あまり考えにくいようにも思えますが、よくよく思い出しますと、そういえば、新型コロナウイルスが流行った最初の時は、全国のお店で、マスクがなくなり、アルコール消毒がなくなり、さらにはトイレットペーパーまでもなくなり、あげくにはうがい薬のイソジンまでもが姿を消したのは記憶に新しいと思います。

こういう非常時のときは、特別な需要が発生するのは仕方のないことなんでしょうが、血眼になって、どこかにないのかないのか、と探し回るのはちょっと恐ろしいなあと思ったりもします。

それに関連して、私の寺の鐘も今から70年前の特需で盗まれたことがあるんだよと、祖父から聞いたことが思い出されました。

今から70年ほど前の1950年に朝鮮半島では、朝鮮戦争がありました。その戦争が始まると、日本では金属や食料品など、さまざまなものが輸出され、第2次世界大戦後の日本経済を大きく回復させたそうです。

それでこの70年ほど前の朝鮮特需ですが、物がたくさん売れるのはいいことなんですが、やっぱり今と同じ感じで物が不足する、売るものが不足する状況だったそうです。

特に金属類は高く売れたようで、お墓に置かれているちょっとした金属や電話線とか、油断すると何でも盗まれるそんな頃だったそうです。

別にこれは昔だけの話じゃなくて、新型コロナウイルスが影響しているのか、ここ数年でも世界中で金属価格が高騰しているらしく、金属類の窃盗が全国で5000件以上と、水道の蛇口や、マンホールや、雨どいなど、人気がないところの金属が盗まれるのは、今も昔も似たようなものです。

さてそれで、今から70年ほど前、朝鮮特需の時、私のいる寺、香川県丸亀市金倉町の円龍寺でも、寺の鐘が盗まれる事件が起きました。

住職だった祖父が、朝のお勤めをしようと本堂の方に行きますと、本堂の東南の縁に吊り下げられていた鐘が無くなっていることに気がつきました。

喚鐘というそれほど大きくはない半鐘の鐘ですが、それでも30キログラムはあると思います。

その鐘がおそらく夜中の内に盗まれたのでしょう。

急いで盗んだのか、はしごが掛けられたままだったそうです。

寺の鐘が盗まれたとなれば一大事です。

すぐに警察に届け出をして、町内の人たちと、町中を探し回って、ある人は船で遠くに運ばれたらお手上げということで、港にも行って探してくれたそうなのですが、捜索むなしく見つけることはできませんでした。

結局それでその後、どうなったのかと言いますと、幸運なことに翌日無事に鐘が戻ってきました。

理由はわかりませんが、丸亀市の中府町にある田んぼの中に隠すように捨てられていたのを、通りかかった人が見つけて警察に連絡していたようです。

具体的な場所でいえば、丸亀城西高校と西中学校の間にある鳥居さん、金毘羅街道一の鳥居の西側にあった田んぼの中に捨てられていたそうです。

現在はマンションや住宅街になっていて田んぼは残っていませんが、この場所に円龍寺の鐘が捨てられていたのをたまたま通りかかった人が見つけてくれたそうです。

警察から連絡があって、翌日、無事に寺に戻ったとのことです。

円龍寺では金属が不足していた朝鮮特需の時に、本堂に吊っていた喚鐘が盗まれる事件がありましたが、運よく寺に戻ってきました。

昨今の金属価格の高騰による金属類の窃盗が増えていることや、台風のたびに品薄が続いているというニュースを聞きますと、昔、寺の鐘が失われていたかもしれないという祖父からの話が思い出されます。

ちなみに朝鮮戦争の特需のときに、鐘が盗まれたのは別に円龍寺だけではありませんよ。

特に有名なものだと、原爆地の広島市の平和記念公園の「平和の鐘」も朝鮮特需の1951年に盗まれました。

広島の平和の鐘は非常に有名な鐘ですが、一番最初の鐘は結局未だに戻ってきていません。

それを思えば、円龍寺の鐘が盗まれたのに戻ってきたのはありがたいことだなあと思います。

以上で、2022年9月20日配信の154回目のかっけいのラジオはここで終了します。

今回は台風による品不足、特別な需要のできごとから、70年前の朝鮮特需のときに寺の鐘が盗まれたという話をしました。

鐘に関する内部記事

香川県丸亀市にある円龍寺の除夜の鐘の音

2020年の大晦日は新型コロナウイルスにより、日本全国、大勢の人が除夜の鐘を鳴らしに行くのを断念したことでしょう。そこで2020年の大晦日は、私かっけいが除夜の鐘の音を録音したので、その音をリンク先で公開しました。

鐘をつく棒の漢字について

釣鐘を鳴らす棒を「しゅもく」と言います。漢字表記は「撞木」が一般出来ですが、梵鐘の場合は「橦木」の方がいいような気もします。

「円龍寺かっけいラジオ」では、番組へのメッセージを募集しています。ご感想や取りあげてほしいテーマなどもお寄せ下さい。



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