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円龍寺の古狸と一つ目小僧.ラジオ#107

第107回目のラジオ配信。「円龍寺の昔話」をお話します。(BGM:音楽素材MusMus)

香川県円龍寺を舞台とした一つ目小僧の昔話
円龍寺切り絵製作者-寒川幹子氏-
ラジオテーマ「昔話」の内容まとめ
  • 円龍寺は香川県丸亀市金倉町にある寺
  • 円龍寺の周り金倉川あたりには古狸・豆狸がいたそうな
  • 夜遅くにお寺に行くと狸に化かされるかも
  • 一つ目小僧に追いかけられたらお寺に駆け込もう

かっけいの円龍寺ラジオ

この番組では香川県にある円龍寺のお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをするラジオです。

前回は「お寺の門」がテーマでした。

  • お寺の門の開け閉めは、お寺に住むお坊さんの一番大事なお仕事。
  • お寺の門はお参りの人が門をくぐり、仏さまに出あうためにあります。
  • お寺は常に開かれていること。

そんなことを前回、お話しました。

さて、今回の107回目では、お寺の門に関連しそうな円龍寺の昔話を2つします。

それではまずは一つ目の円龍寺の山門の狸のお話をします。

昔々のお話です。

夜遅く円龍寺に行くときは、必ず2人連れで行くことになっています。

ある晩のこと、善通寺の鳥坂峠に住む檀家の人がお寺にやってきました。

山門をくぐると、すぐに大きな声で「院主さん!鳥坂峠のもんじゃが、ご門徒さんに不幸があったきん、すぐきてつかさい」

すると、院主はわざわざ鳥坂峠から夜遅くに来たことを労うように、豆腐汁・たくあん・ごはんを出しました。檀家の人は食事をいただき「それでは葬式たのんます」と告げて、山門から出て鳥坂峠に向かって走りだしました。

ところが、どうしょうか。

いくら走っても峠には着きません。それどころか、円龍寺の山門の前に戻ってきてしまいます。

「おかしい・へんだ」とブツブツいいながら走りますが、やはり山門の前にやってきます。

やがて夜が明けて東の空が薄明るくなってきたころには、すっかり疲れ果てて、山門の柱に寄りかかってため息をつくばかりでした。

円龍寺の周り、金倉川あたりには古狸・豆狸がすんでおって、夜遅くに来る人をきらって、化かしていたそうです。

そんなことがあってからは、たとえ檀家の人でも、夜中に円龍寺を訪ねることは慎むようになりました。どうしても夜遅くに行くときは、狸に化かされないように必ず2人連れて行くようになったということです。

これが一つ目の昔話です。

この昔話から言えることは、

  • お寺の門は夜でも檀家を受け入れていた。
  • でも真夜中にやってくるときは、本当に一大事のときだけ。
  • もし真夜中に来るのなら、1人は危ないから2人で行きましょうね。

ということです。

続けて二つ目の昔話をします。二つ目は円龍寺の一つ目小僧のお話です

昔々のお話です。

円龍寺の東側の裏口あたりには小川が流れ水車もあり、大八車がやっと通れるくらいの小道がありました。

その道には夜中になると一つ目小僧があらわれて、夜遅くに通りかかった人たちを驚かせておったそうです。この一つ目小僧に出会った人は、災難が降りかかるといわれていました。

ある夜の事。

丸亀城下にすむ職人さんが円龍寺のそばを通りかかりました。

すると、前に立ちはだかるものがいます。

はていったい誰だろうと、提灯をかざしますと、なんと一つ目小僧でした。

職人さんは驚き、一目散で近くの円龍寺に駆け込みました。

すると不思議なことに、すごい勢いで追っかけてきた一つ目小僧が、寺にはぴたりと近づいてきませんでした。

この噂が広がり、一つ目小僧に出あったときは、円龍寺の山門に駆けこめばいいということになりました。

院主さんが思うに、これはご本尊様の阿弥陀さんがこわくて、人を驚かせる一つ目小僧も、寺の境内や本堂にまでは追っかけてこれないのだということになりました。

それからは夜遅く、一つ目小僧が出そうな気配がしたときは、すぐに円龍寺に駆けこむことになっということです。

これが二つ目の昔話です。

この昔話からは

  • 夜出歩くときは気をつけましょうね。
  • 危険を感じたら、寺に駆けこめば大丈夫。

ということ伝えているのだと思います。

さてこれで、円龍寺の門に関係しそうな昔話を2つ紹介しました。

前回に引き続き、私が言いたいのは、

  • お寺の山門を開けるのは大切なこと
  • お参りの人は山門をくぐること
  • お寺はいつでも開かれていて、受け入れること

お寺を預かるお坊さんは、門をもっと大切にしたほうがいいと思います。

2021年10月12日のお話はここで終わります。

かっけいの円龍ラジオはポッドキャストでも配信していますので、「レビュー・評価・登録」してくれたら嬉しいです。来週もまた聞いてくださいな。

ちなみに今日お話した昔話の内容は、池原昭治という香川県出身の日本画家が、実際に丸亀を歩き人びとから取材して「丸亀の絵本」というのにもまとめられています。

私の祖父の円龍寺住職からもお話を聞いたようで、本の最後にその名前が紹介されています。

「丸亀の絵本」は丸亀駅そばの丸亀市立中央図書館にて借りられます。興味のある方はぜひ読んでみてください。

107回目の音声コンテンツは、106回目の「寺の門の役割」に引き続いたお話です。

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夜にお寺に行くこと

夜にお寺の門をくぐる

昔は夜遅くにお寺に行くことはあります。

円龍寺の昔話にあるように、人が死んで不幸があったときに、急いでお寺さんに知らせるために檀家の人がお寺に行くことがあります。

本来お寺というのは困っている人がいれば、いつでも応じるものです。門は侵入を拒むためにあるのではなく、お寺の境内は仏さまのいる神聖な空間として、仏縁に出会う場所を表わすものです。

現代では夜に門を閉じるのが当たり前となっていますが、緊急の用事があれば、夜に山門をくぐるのはおかしなことではありません。

現代では山門をくぐるというよりも、電話をかけることに置き換わっているでしょうか。しかし電話も真夜中は避けて、朝5時や6時にするのが常識となっているようです。

しかし本来はお寺はいつでもどなたでも駆け込める場所です。


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池原昭治・丸亀の絵本

丸亀の絵本

今回紹介した円龍寺の古狸と一つ目小僧のお話は、日本画家の池原昭治さんの著作「丸亀の絵本」にも紹介されています。

池原昭治さんは丸亀を歩き、地元の人びとから話を聞いて、丸亀の心の文化財ともいえる伝説や昔話をまとめています。

その中には円龍寺住職の金倉孝の名前もあります。

金倉町の伝説では、他に金倉川での豆狸の小豆洗いや、金倉川沿いの八十主神社の「槍たおしの宮」が紹介されています。

丸亀の絵本は丸亀市立中央図書館に借りられます。

  • 公式サイト:丸亀市立図書館
  • 休館日:第2・4・5月曜日と毎月の月末
  • 所在地:丸亀市浜町80-1
池原昭治
  • 1939年香川県高松市生まれる
  • 現在は埼玉県狭山市水野在住
  • 童絵作家・日本漫画家協会会員・高松短期大学客員教授
  • 日本各地の民話を訪ね歩き、「童絵」という独自の画風を確立
  • 1983年からテレビ『まんが日本昔ばなし』の演出・作画・美術を担当
  • 「丸亀の絵本」は1985年に、どんどろ文庫より発行

池原昭治公式ホームページより

2021年にはKDDI 「au三太郎シリーズ」の「コラボ会議編」でイラストを担当。

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