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第106回目のラジオ配信。「寺の門」についてのお話。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
この番組では香川に住む浄土真宗のお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをするラジオです。
円龍寺では毎朝、お寺の門を開けるのを坊守または住職がしていました。
2021年9月からは私かっけいが寺の門を開けるようになりました。そして門を開けた後は、本堂と偲朋堂の2か所のお堂で朝のお勤めをしています。
今回は「寺の門」をテーマにしてお話していきます。
さてお寺の門についてですが、私は小さなときから、祖父から「寺に住む人の大切なお仕事は門の開け閉め」と繰り返し繰り返し何度も言われてきました。
寺の坊主の仕事といえばお経を読む「読経」をイメージされる人も多いでしょうが、私の祖父はまず第一に門の開け閉めを私に伝えていました。実際、私の祖母も毎朝5時過ぎには門を開け、本堂に手を合わせ、参道をかるく掃除していました。
門の役割といえば、外からの敵を侵入を防ぐためみたいな意味があると思われがちですが、お寺の場合はそんなことはありません。
寺の場合は、ここからは仏さまの領域、仏の教えを聞いていく場所、先祖や仏さまに対して敬っていくといった、聖と俗を心構えとして分けていく境目を意識づけるものです。
祖父から「寺の人の第一の仕事は、門の開け閉め」に加えて、私はもう一つ大切なことを教えられています。
それはお寺にお邪魔する時は、必ずお寺の正門から入ることです。寺に参る時に寺の裏口・勝手口から、お寺の境内地に出入りしてはいけないよと教えられました。それこそ夏目漱石の書いた小説「草枕」や「門」を引き合いに出せば、寺に出入りする入り口の階段や門というのは、仏の教えに出あう場所、仏法を求める場所、俗世の自分中心のものの考えとは逆様になっていく場所となります。
寺の門というのは敵の侵入をブロックするためではありません。仏さまを敬い、仏の教えを聞いていくためのものです。
実際、大きなお寺に行ってみてください。塀はなく門だけがひとつずんと存在することもあるでしょう。門の横はスカスカで、侵入しようと思えば簡単に横をすり抜けていけます。
しかし寺にお参りするというのはそういうことではありません。
門をくぐり一礼するというのは、仏さまの教えにであっていくためです。門はその象徴です。
お寺の門には応じる門とかく「応門」、山の門とかく「山門」、三つの門とかく三つの解脱の境地を表す門の「三門」といったよび方があります。
寺の門はお寺に参る人が仏にであっていくために、開かれていなければなりません。
ですのでお寺に住む人のまず第一の仕事は、門を開けることです。
そしてお参りする人が心がけることは、寺の正門、本堂に通じる表の門から一礼して出入りすることです。
円龍寺ではこれからは私が門の開け閉めという大事な大切なお仕事を引き継いでいくことになります。
2021年10月5日のお話はここで終えます。かっけいの円龍ラジオはポッドキャストでも配信していますので、「レビュー・評価・登録」してくれたら嬉しいです。来週もまた聞いてくださいな。
さいごに余談を2つします。
ここ10年20年ほど前から、「開かれた寺」という言葉をよく聞きます。
寺というのは立ち寄りにくいというイメージがあるのでしょう。
開かれた寺を目指し、ヨガ教室や子どもの学習教室、寺カフェ、寺での宿泊、インターネットによる情報発信などを展開する僧侶はいますが、肝心かなめの自分の寺の山門を閉じたままの寺がけっこう多いように私は感じます。
開かれた寺を目指すなら、一にも二にもまずは、寺の表の門を大きく開放するべきだと思います。
2つ目の余談は、円龍寺の開門時間と朝のお勤めについてです。
開門と閉門時間は、寺によって時期によって、変化するでしょう。
円龍寺は修行の寺ではないので、朝の3時4時に門を開けることはしません。
円龍寺では日の出と日の入りの時間を目安に門の開け閉めをしています。10月なら朝6時過ぎから6時半ごろに開け、夕刻6時頃に閉めます。
これが6月の日中が長い時期だと、朝5時過ぎに開けて、夕刻7時半ごろに閉めることになります。
観光で有名な寺では朝8時過ぎの開門や夕刻5時の閉門だったりすることもありますが、地域の檀那寺の場合は、人びとの生活に合わせた太陽の出入りの時間に合わせて門を開け閉めします。
円龍寺では門を開けたあと朝の読経がお堂でつとまれます。どなたでもお参りできますので、どうぞご自由にお堂にお入りください。
なおお勤めの時間は5分から10分ほどなので、お堂が閉まっている場合は朝のお勤めがすでに終わったのだと思いますので、ご了承くださいませ。
寺の門については、107回目の音声コンテンツ「円龍寺の古狸と一つ目小僧」でもお話しています。
人を驚かせたり追いかけるタヌキや一つ目小僧も、寺の門の内側、仏さまのいらっしゃる空間には入れないようです。
「円龍寺かっけいラジオ」では、番組へのメッセージを募集しています。ご感想や取りあげてほしいテーマなどもお寄せ下さい。