僧侶のかっけいです。
お坊さんはお布施を受け取ることが多いです。皆さんはお布施を渡すことの方が多いことでしょう。
お布施をお坊さんに渡すときに次のような疑問を持ったことはないでしょうか。
- どうしてお坊さんはお礼を言わないんだろうか
- なぜ「お預かりします」と言うのだろうか
今回はお布施を受け取る時の言葉について説明します。なおこれはお坊さんだけでなく、皆さまがお香典を受け取る時にも通じる考え方です。
お布施は僧侶への対価ではない
- お布施は僧侶に支払う読経料
- お布施は僧侶へのお礼代金
ひょっとすると多くの人はこのようにお布施のことをお参りに来た僧侶への対価・報酬だと思っているのではないでしょうか。
そう考えているならば、お布施を渡すときにお坊さんが「どうもありがとうございます。申し訳ありません」と、感謝の言葉を述べたり、へりくだった態度をとらないことにムッとするかもしれませんね。
お金を受け取っているんだから、もっと感謝しろよと思うわけです。
でもお布施は僧侶への対価ではないんですね。
布施は双方向のやりとり
お布施は仏様へのお供えであり、皆さまがされる財施(ざいせ)という布施行のことです。
布施行というのは仏教徒がする修行の一つです。
ちょっと難しい説明をすることになりますが、仏教徒には六波羅蜜(ろくはらみつ)という修行があるんですね。仏様の世界に近づくためにはこういうことを心がけなさいよ行動しなさいよという話です。
六波羅蜜の一つ目に布施波羅蜜があります。
布施にはいろいろあるのですが、代表的なものに「財施(ざいせ)」と「法施(ほうせ)」があります。財施は金銭や物を分け与えること、法施は仏法を分け与えることです。
読経法話に行ったお坊さんは法施の布施をして、皆さまはお金をもって財施の布施をしているんですね。
布施というのは一方通行ではなく、双方向のやり取りなんですね。
お布施はお寺や仏様へのお供え
さてお参りに行ったお坊さんは読経や法話により布施をします。
するとお参りに来てもらった人は布施のお返しとして、財施のお布施をします。
この時の布施はどちらも仏教徒としての修行ですので、仕事ではないんですね。ですので料金ではなく「気持ち」なんですね。
じゃあこの気持ちは何に対する気持ちかというと、仏様やお寺に対する気持ちです。
お坊さんは仏様の金言であるお経を読み、仏様の法を伝えただけです。
皆様はその有難いご縁へのお礼を表すため、またこの法縁がいつまでも続くために、仏様やお寺にお金をもって布施をするのです。
お寺のお坊さんはお布施の預かり人
しかし皆様がお寺や仏様にお金をお供えし、仏縁への感謝を表すそうとしても仏様やお寺には手がないので受け取ることができません。
ですのでそのお寺を預かっている(護持運営している)お坊さんが、そのお布施(お金)を代わりに預かって、お寺(宗教法人)に納め、仏様へのお飾りやお寺の維持に役立てているのです。
その結果お寺はいつまでも残り、仏様(ご本尊)がいつまでも大切にまつられ、そして法事や葬儀などの仏事を続けることができているのです。
お坊さんは皆様の気持ちがつまったお布施を、お寺や仏様の代わりに預かっているだけです。
ですのでお坊さんはお布施を受け取る時に「お預かりさせていただきます」というのです。
お坊さんへの対価・報酬ではないので、お坊さんは「ありがとうございます」や「申し訳ありません」とは言わないのですね。
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さいごに。お布施はお坊さんの懐に入らない
お坊さんは皆様からのお布施をお預かりします。
お預かりしたお布施は宗教法人のお寺に納められます。きちんとどれだけ納められたのかも税務署に申告します。
お布施はお寺へのお金、仏様へのお金ですので、お坊さんのお金ではありません。お坊さんはお布施には手を出すことができません。坊主丸儲けという言葉もありますがそれは誤りで、お布施はお坊さんの懐に入るものではありません。
お坊さんは宗教法人である自坊のお寺から決まった金額をお給料としていただきます。お坊さんはこの給料で生活しています。もちろん税金を払っていますよ。
お布施をお坊さんへのお礼として支払っている人も多いかもしれません。
しかしお布施の相手はお坊さんではなく、仏法・仏様とそれをまつり伝えているお寺です。お坊さんにお布施を渡すときにも「お供えください」や「納めてください」というのです。もちろん「ありがとうございました」でもOKですが。
以上がお坊さんがお布施を受け取る時に「お預かりします」と言う理由になります。
布施に関することも他に書いているので、よろしければ読んでください。