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2024年1月1日に石川県能登地方を中心とした最大深度7の地震がありました。
この音声は、その地震発生直後の映像でお寺が倒壊する様子をみて思ったことを話しました。
第215回目のラジオ配信。「本堂の倒壊とお寺の維持」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
私の個人的な意見ですが、お寺の建物が失われても、ゆっくりと復旧再建していけばいいと思います。
最近はクラウドファンディングのように、早急に資金を集めて元に戻そうとする動きもあるかもしれない。
でもそんなに急がずに、何十年もかけて、無理せずにお寺を守っていけばいいのではないでしょうか。
かっけいの円龍寺ラジオ
これは香川県丸亀市にいる浄土真宗のお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをする音声配信です。
2023年あけましておめでとうございます。
それとまた新年早々、石川県・能登地方で、大きな地震にあわれたこと、お見舞い申し上げます。
特に震度7の地域もあった石川県では、断水や停電、火事などなど、いろんな被害が重なって起きているようで、こちらも辛い気持ちになってきます。
中でもニュースで、石川県の珠洲市の地震直後の映像を見ますと、各所で砂埃が舞い上がって建物が崩れているように見え、おそらくお寺の本堂と思われる大きな建物もペチャンコに崩れているように見えます。
お坊さんの私からしたらお寺の建物が崩れるのは、わが身のように思えて、非常にショッキングなことです。
今回は、地震でお寺が崩れることについて、短く雑談していきます。
まず、たしかなデータはなくて私の想像になりますが、地震保険や火災保険に入っているお寺というのは意外と少ないと思います。
実際、私のいる寺、香川県丸亀の円龍寺も地震保険には入っていません。
なぜかというと、お寺の場合、一般のご家庭と比べて、保険料金がべらぼうに高いからです。
それと同時に、仮にお寺が火事や地震で損傷を受けても、降りる保険金はそんなに多くないからです。
もしものために保険に入った方がいいよという声も聞きますが、現実問題、保険に入るのはお寺の継続的な維持には役立たないと思います。
仮に、保険に入って保険料の支払いをしようとすると、ご門徒さんにそれの負担のお金を毎年万単位でお願いすることになるでしょう。
仮の話ですが、お寺のお堂の価値が5億円だったとして、お寺が火事にあったとしますね。それで保険金2億や3億払っていたとしても、1億円ぐらいしか保険がおりなかったりします。
もちろんそれぞれの保険会社のサービスによって保険料も降りるお金も全然違ってくるでしょうが、保険に入ってさえいたら、災害にあっても心配ないなんてことはありません。
さっき、私の寺、円龍寺も地震保険には入っていないことを言いました。
もちろん住職の独断ではなく、総代会の場、総代さんたちの意見も聞いて決めたことです。
私の寺は特殊かもしれませんが、ご門信徒さんに円龍寺の年間の護持金をいただいていません。お寺の護持に皆様の金銭的な負担をかけたくないからです。
もしここで保険に入るとなると、ご門徒の皆様にどれくらいの金額になるかわかりませんが、1万や2万のお金をお願いすることになるかもしれません。
そんなことはできないのが、私のとこの寺の判断です。
それじゃあ、こんな疑問が起こることでしょう。
今回の石川県の地震のように、お寺の本堂がつぶれてしまったらどうするの?お寺が使えなくなるの?
お寺をやめるの?といった疑問です。
心配しないでください。
もしもお寺の本堂が崩れて、本堂が使えなくなってもお寺はなくなりません。
なぜかというと、本堂が一時的になくなったとしても、お寺の機能が失われるわけではないからです。
本堂というのは、皆様の信仰の対象である仏さま、ご本尊様を安置し拝むお堂です。
本堂はお寺の象徴であり、皆様がお参りし、仏法のご縁に出会う場所ですが、一時的に本堂がなくても、お寺がなくなることはありません。
本堂がない時は、仮御堂というのを設けて、本堂の機能を賄います。
それこそ、私の寺、円龍寺は明治13年西暦1880年に火事で本堂が焼けました。
そこから本堂を新しく再建したのが大正9年1920年です。
本堂がない期間が40年続いたということです。
皆さんはお寺の建物が崩れたら、すぐに立て直さなくちゃや、近いうちにお寺から大きなお金をお願いされるかもと思われるかもしれませんが、今回のような広範囲にわたる大きな災害の場合、お寺だけでなく、皆様も生活に大変なときになっているでしょう。
お寺の再建は気長にやっていけばいいんです。
私の寺の場合、大きな寄付も仰ぐことをせず、コツコツと少しずつお寺の再建のお金を貯めてましたので、40年もの期間がたちましたが、それでもお寺が失われたわけではありません。
本堂を失ったこの期間は、仮のお堂、仮御堂を設けて、ご本尊様を安置し、お寺を維持していました。
そんなわけで、もしも火事や地震その他のいろんな災害で、お寺のお堂が失われたとしても心配はいらないわけです。
気長に周りの復興に合わせて、ゆっくりとお寺のお堂を再建していけばいいんです。
それと、もう一つ雑談で、私の寺の本堂の将来像を少し話しておきます。
香川県は、あまり自然災害のない場所といわれていますが、油断は禁物です。
それこそ太平洋を震源とした南海地震が、将来30年以内に70~80%あるらしいです。
私のいる香川県丸亀市も予想最大震度は震度6弱と予想されています。
お寺は古い建物で、震度6を超えるような大地震では、崩れてしまう恐れもあります。
もしかすると、円龍寺も将来発生する南海地震によって、今の本堂を失うかもしれません。
そうなると、先ほども言ったように、仮御堂を設けて、何十年かかるか分かりませんがゆっくりと本堂の再建をしていくことになるんですが、そのときに新しく建てる本堂は、規模をだいぶ抑えたものにしようと考えています。
おそらく皆さんはお寺の本堂といったら、大きな木造の建物、重たい瓦、お堂の中が見えない、お参りするにはたいへんな石の階段といったものをイメージすると思います。
ですが、今私が考えているのは、もしも今度お寺を新しく建てるようなことになれば、本堂を小型・平屋にして、大きさを今のお参りの規模に合わせたもの、段差もないバリアフリーを考えたもの、お堂にあがらなくても外からでもお参りできるものといったように、変えていこうかなあと考えています。
これまでの歴史から、お寺の本堂ってこんな形だよなあというイメージがあるでしょうが、そんな昔ながらのお寺の本堂は、どうもお金がかかる気がしますし、年をとったらお参りもしにくいでしょうから、時代に応じた形にしていこうかなあと考えています。
以上で今回のお話。
地震でお寺が崩れることをテーマにして、いろいろと短く雑談しました。
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