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第122回目のラジオ配信。「香川で使われる言葉・聞く言葉」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
この番組では、香川県讃岐に住むお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをするラジオです。
2022年2月1日配信の今回は、香川県・讃岐で使われる言葉、耳にする言葉についてお話していきます。
前置きに、今回どうしてこれについてお話しようかと思った理由を先にお話します。
私のスマートフォンには、「おすすめのニュース記事」がピックアップされます。
その中で先日、株式会社モスティープレイスの「【47都道府県】愛してるの方言一覧」という記事に、怪しげな香川の方言が紹介されていました。
内容をそのまま紹介すると、
香川県で「愛してる」は、「愛しじょる」と表現することがあります。
標準語で「~している」は、香川の方言である讃岐弁では「~じょる」と濁したような言い回しになるのです。
いかがですか。
香川県にお住まいの方なら、「愛しじょる」なんて言わないでしょう。
すっごく口に言いにくいですし、耳障りの悪い響きだと思いませんか。
それで気になって、インターネットで「愛している・香川方言」で調べると、さっきの記事とほとんど同じようなことが、並んで検索1位2位にあがっているんですね。
株式会社まぐまぐの記事によると、香川県の方言は、語尾に「〜じょる」「〜りょる」が、標準語の「〜している」と同意。「愛しじょるよ」などと使われるのだとか。
香川の方言で、動作の進行を表すときに「じょるやりょる」などを使うのはホントのことですが、それで愛しているのを愛しじょるというのは、私にとっては、音のつながりが悪いといいますか、語呂が悪い気がします。
もし香川の方言として言いたいなら、「愛している」は「愛っしょる」になります。愛しじょるなんて言いにくいし、違和感があります。
同様の変化は、例えば洗濯ものを干すなら「ほっしょる」、言葉を話すなら「はなっしょる」、電気を消すなら「けっしょる」、物を動かすなら「動かっしょる」、水を流すなら「流っしょる」という様になります。
なんでもかんでも「~じょる」になるのは間違いで、それが通用するなら「干しじょる・話しじょる・消しじょる・動かしじょる・流しじょる」となってしまいます。
おかしいでしょ。
インターネットで紹介される方言は、怪しく使われていることがあり、とっても気にかかりました。
そんなことがあり、今回香川県・讃岐で使われる言葉、耳にする言葉についてお話しようと思ったのです。
さて、皆さんは自分の生まれ故郷の言葉を使っていますか?「方言」とも、「○○弁」とも「御国言葉」とも言いますよね。
テレビやインターネットの影響、また人の行き来が激しくなった現代では、時代の移り変わりとともに、方言が廃れているようにも感じます。
例えば、お隣の岡山で言えば、「ぼっけえ」や「もんげえ」という言葉があります。発音は知りません。
「ぼっけえ」は昨年は岡山県が流行りのヒット曲の替え歌にしたり、お笑いコンビの千鳥が「千鳥のぼっけえTV(ティービー)」の配信をしていたりと、わりと有名な言葉なのですが、私自身は、岡山に住む人に聞いても、実際に生活の中では「ぼっけえ」や「もんげえ」は使わないし耳にすることもないと言います。
いやおそらく今でもしっかり使っている人はいるんでしょうが、言葉の知名度よりかはもっともっと狭い範囲でのオリジナルの言葉なんだと思います。
実際、香川県でもかなり狭い地域で使われる言葉というのもあります。例えば「ごんな」です。
丸亀周辺だけのかなり狭い地域の言葉です。もちろん丸亀お城まつりの時には「踊ってごんな・見てごんな」で始まる丸亀踊りが大きな音で流れるので、ごんなの言葉をご存知の人もそれなりにいると思います。
でも実際に生活の中で、「ごんな」という言葉が使われるのか、耳にするのかと言えば、なかなかそんなことはありません。
ちなみに「ごんな」とは、「してみましょう」とか「一緒にやりましょう」といった意味です。
知識として、こんな郷土の言葉があるんだと知っているだけで、実際に話す耳にするというのがなかなかない言葉がたくさんあると思います。
例えば香川県では「げんしゃ」とは「お金持ちの人」を表わす言葉とされますが、実際にいま、げんしゃを使う香川の人を私は知りません。
前置きが長くなりましたが、そういうことを踏まえて、香川・讃岐にすむお坊さんの私が、実際に使われている言葉、耳にする言葉をいくつかピックアップします。
この配信は10分をめどとしてますから、急ぎますね。
まずは特に有名なものから、香川県では「えらー」や「えらい」という言葉が非常によく使われます。
標準語だと「しんどい」や「疲れた」になります。
私が小学生の頃は、体育の授業の時・マラソンの時は、あっちこっちから、「えらい・えらー」が響いたもんです。
ちなみに「立派な人・地位の高い人」のことを標準語では偉い人と言うと思います。香川でも偉い人と言いますが、親しみを込める時は「えらもんさん」になります。
さて、次は「まけまけ」を紹介しましょうか。
「まけまけ」は香川を含めた四国でよく使われます。
標準語だと「なみなみ」です。
意味は、液体があふれそうなほど、いっぱいいっぱいな状態です。
例えば、お酒をどれくらい注ぎましょうかという場面で、「まけまけについで」と言われたら、器からあふれてこぼれそうなギリギリくらいまで、たっぷりと注いで下さいということになります。
まけまけはよく耳にする言葉で、別の言い方をすれば、「まけるぐらいついで」とも言います。香川ではあふれる・こぼれることをまけると言います。
ただし注意しないといけないのが、肌がかぶれることも「まける」と表現するので、ごっちゃにしないようにしましょう。
さて、「えらい・まけまけ」は生活の中でもよく耳にする言葉でしょう。
次はちょっと特殊な香川の言葉を紹介します。それは「何がでっきょんですか。なんしょんですか。」です。
これは2つの意味があります。
一つは、何ができているのか、何をしているのかといったことを本当に相手に質問する場合に使います。
もう一つは、挨拶です。
あいさつで使う場合は、私がなにをしているのか、本当に聞きたいわけではありません。
例えば私が、家の外で大きな鋏をもって、木に登り、枝葉を整えていたとしましょう。
そこにたまたま近くを通り過ぎようとした人が、私に向かって、「なんがでっきょんですか・なんしょんですか」と声をかけたとします。
見たら私が何をしているのか分かるのに、なぜ聞いてくるのだろうかと思われるかもしれませんが、これは単なる挨拶です。本当に何をしているのか、聞きたいわけではありません。
香川では、この時には、「どちらえか」と返答する人もいます。
ニュアンスとしては、「どういたしまして」です。
「なんがでっきょんですか・なんしょんですか」という挨拶に対しては、「どういたしまして、おかげさまでなんとかやっています」といった意味合いのある「どちらえか」を使います。あるいは「おかげさんで」を使います。
おそらく関西弁だと、「ぼちぼち」と同じ感じだと思います。
なんがでっきょんですか・なんしょんですかに対する、どちらえかの返事は、英語で言えば、「How are you?」「I’m fine. thank you」と「調子はどうですか、元気ですよ、ありがとう」と同じでしょう。
ちなみに人によっては、「どちらいか」 の人もいますが、私は「どちらえか」の方です。
もちろん「どちらえか・どちらいか」で返答せずに、具体的に、いまこれこれやってるんですよと答えても、何の問題もありません。
でも向こうからしたら、そんな丁寧に言わなくても、と思うかもしれませんね。
お互いの関係性と、その時の状況で、単なる挨拶で「なんがでっきょんですか・なんしょんですか」と言っているのか、それとも本当になにをしているのか質問しているのかを見極めないといけませんね。
初対面の関係性なら、何をされているんですかと質問でしょう。ご近所さんといったよく会う関係性なら、ご機嫌いかがですかと挨拶になりますね。
ちなみに補足すると、「どちらえか・どちらいか」はあんまり若い人は使わないように感じます。若い人は、「なんちゃでっきょらん」や略して「なんちゃ」という風に、いわゆる「別に~たいしたことはしてないよ」いった意味で答えることもあります。
「なんがでっきょんですか・なんしょんですか」はとっても便利な香川の挨拶です。
ただし注意しないといけないのが、「なんしょん・なんしょんな」は語気を強めて言うと、叱る時の言葉になるので注意しましょう。
10分のめどがやってきてるので、さいごは「ひしてがい」を紹介しましょうか。
香川の方言として有名なのに「がいに・がいな」があります。
強いとかすごいといった意味があって、例えば香川県の独立野球チームのオリーブガイナーズもこの「がいに・がいな」が由来とされます。
ですが、「ひしてがい」というのは、全く別の意味の言葉です。
これは知らないと面くらうと思います。
「ひしてがい」は「一日おき」という意味です。
例えば、ひしてがいに畑に行く、ひしてがいに病院にいく、ひしてがいに天気が変わる、といったように使います。
なかなか若い世代で、「ひしてがい」を使う人は多くないでしょうが、ご年配の方は意外とよく使う印象です。「ひしてがい」は「一日おき」と覚えておけば、香川に旅行に来たときに面くらわないかもしれませんね。
ちなみに私の推測のお話ですが「ひしてがい」は「ひして」と「かいがい」が合わさった香川の方言だと思います。
香川では一日中・一日を通してのことを「ひして」と言います。
例えば、今日はひしてお寺にお参りしてくると言えば、今日は一日中、お寺にお参りしているから、いないよ、帰りが遅くなるよといったことですね。
ひして勉強したと言えば、一日中勉強をしていたということですね。
香川では代わる代わるのことを「かいがい」とも言います。かいがいすると言えば、取り換えっこするという意味です。
一日中が交代交代していくことから「ひして」と「かいがい」で「ひしてがい」になったんじゃないのかなあと勝手に思ってます。
さてこれで2022年2月1日の122回目の配信。香川で耳にする言葉使う言葉についてのお話をいったんやめます。
一年ほど前の68回目の配信でも香川の方言をいくつか紹介したので、そちらも合わせて聞いてくれたら嬉しいです。
まだまだ紹介できていない香川の言葉はたくさんあるので、また別の機会に紹介できればと思います。
かっけいのラジオはここで終了します。来週もまた聞いてくださいな。
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