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第18回目のラジオ配信。「ハロウィンのコスプレ衣装。本物のお坊さんの衣との違い」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
2回前の第16回目のラジオ配信の時に、お坊さんの冬服への衣替えの話をしましたよね。
私、うっかりしていて、10月31日がハロウィンというのをすっかり忘れてました。
「渋谷のハロウィン」とか「路上飲酒規制条例」とかのニュースを見ていたはずなのに忘れてて、一週間くらいたってから、急にふと「そういえば先週にハロウィンがあったなあ」と思い出しました。
東京と違って香川のような田舎だとハロウィンといっても、格別何か普段と違う、特別なイベントがあるわけではありません。
まあ、もちろん全くないわけではなく、香川県丸亀市にあるテーマパークのレオマワールドではハロウィンパーティーやパレード・仮装がありました。レオマからうちあがった花火も、私のお寺から見ることができました。
こんな風にハロウィンのイベントが全くないわけではないのですが、お寺の周りではハロウィンだからという行事はなかったですね。
せいぜいお参り先の家で、かぼちゃの置物が飾られていたくらいでしょうか。
東京のような都会。渋谷や池袋とかだと、どこからともなく人が集まって来て通りを埋め尽くして、いろんなキャラクターのコスプレをして、仮装大会みたいなことをしているんでしょう。
私ちょっと気になって、お坊さんのコスプレとかする人いるのかなあと思ったんですね。でもニュースを見ても、お坊さんのコスプレをしている人は見えなかったです。
そこでグーグル検索で、「お坊さん・コスプレ」や「ハロウィン・仮装・お坊さん」で調べてみると、『楽天市場』や『アマゾン』や『ヤフーショッピング』がヒットして、お坊さんのコスプレ衣装が4000円から8000円くらいの値段で売られてました。
値段だけ見ると、安かったです。
でもそれはあくまでもコスプレ衣装。お坊さんになりきるための仮装ということで、伝統ある法衣店が製作しているお坊さんの衣・袈裟とは、雲泥の差がありました。
お坊さんのコスプレ衣装の商品説明には「袈裟はエンジ色に金の文様が施してあり、本格的な法衣のようなデザインになっています。」と書かれていますが、お坊さんの着ている衣・袈裟は、金の文様があるかないかの問題ではないんですね。
お坊さんの着る衣・袈裟に大切なのは、威儀(いぎ)と修多羅(しゅたら)があるかどうかが大事なのです。
コスプレ衣装には威儀と修多羅がないから、本物のお坊さんとは比べて、なんか違うなあと、なんとなく違和感を覚えてしまうのでしょう。
まあひょっとすると、コスプレする衣装は、わざと本物とちょっと違うように安っぽく作るものかもしれませんので、なんとも言えませんが。
で皆さんは、威儀や修多羅と言われても、衣のどこをさしていてどんなデザインをしているのか、わからないでしょう。
内側に隠すのではなく、お参りの人に見えるように、外側に装飾されているのですが、説明されないと意外と気がつかないようです。
威儀や修多羅は、ラジオの言葉だけではイメージしにくいと思いますので、この音声をのせているブログ記事の方に、威儀や修多羅の写真を掲載しておきます。
さて、「威儀を正す」という言葉をご存知でしょうか。身なりを整えて、作法にかなったふるまいをするという意味です。
威儀そのものは仏教の言葉でありますが、お坊さんの衣で言えば、袈裟の両端を結びつける場所をさします。
威儀を正すという言葉は、お坊さんが着ている袈裟の端をきちんと正しく結んでいるのか、威儀の紐が緩んで気持ちもだらけていないかということです。一般の言葉で言えば、「襟を正す」・「ネクタイを締めなおす」ようなものです。
お坊さんのコスプレ衣装には、この威儀がないので、だらしのない雰囲気になるのだと思います。
そしてもうひとつ肝心なのが、修多羅です。
修多羅も仏教の言葉で、仏さまの教えを記したお経の意味があります。
修多羅は、インドの「スートラ」という言葉の発音を漢字に写しとったものです。スートラそのものは織物の縦糸を意味します。そしてお経の「経」という漢字も縦糸・縦の繋がりを表す言葉です。
お坊さんが着ている衣の袈裟には、この修多羅というのが相手に見えるようにデザインされています。
つまり仏さまの大切な教え、またいのちの大切な縦のつながりを象徴するものとして、お坊さんは着ているのです。
お坊さんのコスプレ衣装には、この修多羅がないので、単なるお坊さんの仮装みたいに見えてしまうのだと思います。
ちなみにこれらの威儀や修多羅は、七条袈裟と言われる最上の衣にのみ装飾されているように思われる人もいるかもしれませんが、お坊さんの普段参りする衣にもきちんとデザインされています。
五条袈裟は七条袈裟を簡略化したもの、輪袈裟や墨袈裟は五条袈裟を簡略化したものですので、お坊さんの普段参りする服装にも、人に見えるように、威儀や修多羅があります。
だからコスプレ衣装と比べても、本物のお坊さんの服装の方が厳かな雰囲気があるなあと感じるのではないでしょうか。
ラジオの補足
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