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第12回目のラジオ配信。「瀬戸大橋と親子三世代の渡り初め」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
香川県に住む私にとって瀬戸大橋はなくてはならない橋です。瀬戸大橋を知らない人に向けてどんな橋なのか少し説明しますね。
瀬戸大橋は四国と本州を結ぶ大きな橋です。ひとつの橋ではなくて南北に連続する10個の橋をまとめて瀬戸大橋と言います。今から31年前の1988年に完成しました。
橋ができるまでは四国の人が本州に行くためにはフェリーに乗って瀬戸内海を渡るしかなかったんです。橋が必要だという理想・構想は100年以上前の香川の政治家の大久保諶之丞(おおくぼじんのじょう)という人がすでに提言していたように、四国の人にとって瀬戸大橋は本当に待ち望んだものでした。車だけでなく、鉄道も走ることができる橋なので、今では安全に便利に本州と四国を行き来できるようになりました。
ニュースによると、今、瀬戸大橋はけっこうな人気だそうです。平成10年から毎年数日間、瀬戸大橋を歩くスカイツアーというのが開かれています。普段入ることができないJR瀬戸大橋線の線路の横や管理用通路、海面から175mに位置する塔頂から岡山と香川を眺めるといった内容です。昨年の2018年の応募倍率は30倍弱だったそうです。
人気が高まっているようで、今年2019年の秋のツアーは9月28日から12月1日までにある計32日間に増やしました。でも応募開始からわずか2日で募集定員に達したそうです。
ちょっと説明が長くなりましたかね。こんな説明で瀬戸大橋がどんな橋かわかりましたか?
で今日の話は瀬戸大橋なので、お坊さんらしい話をひとつ絡めようと思います。
「三世代渡り初め」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?渡り初めと書いて、渡りぞめと読みます。書き初めと一緒ですね。渡り初めは橋の完成を記念して、同居する3世代の家族が開通記念に橋の上を歩くことです。日本では江戸時代にはすでに三世代渡り初めがあったようです。
なぜ、三世代の家族が渡りはじめないといけないんでしょうかね。それは「三世代の家族がともに1つの家で支えあうのは素晴らしいことだ。家族のつながりのように、橋もまた末永く続いてほしい」という願いが込められているからです。
瀬戸大橋が開通したのは1988年4月です。前年には香川に住む3世代家族への「三世代渡り初め」の募集がはじまっていました。
私のお寺のご門徒さんにも三世代渡り初めに選ばれた人がいました。1988年は昭和の終わりです。昭和の終わりはすでに核家族が社会の問題として言われ始めたころです。
江戸時代や明治の親子3世代渡り初めは、長生きが難しい時代だったので稀なことで、一家に三代の夫婦が顕在できていることは珍しくおめでたい事だったのですが、昭和の終わりの渡り初めでは事情が変わっており、生きていても同居していない家族が多くなっていました。
そのご門徒さんは瀬戸大橋の「三世代渡り初め」に選ばれました。でも残念なことに完成前に祖父が亡くなってしまいました。本当ならば渡り初めから外されることでしょう。しかし家族がバラバラに住むようになっていた社会の状況もあり、特別に亡き人のお写真をもって親子三世代の渡り初めをすることができました。
2019年令和元年の香川県は、人口95万人・世帯数40万と、一世帯の人数が2人をギリギリ超えてる状況です。どうでしょうか、70歳代でなくなると「まだまだお若いのに」と言われ、80歳以上の年齢も多くいるこの時代ですが、3世代が同居している家が近くにありますか。
お坊さんの私は親子三世代が同居する家が本当に稀であると感じます。
お坊さんは「子は親の背中を見て育つ」ことを言います。仏様に参ること、敬うことというのは、言葉で説明していくものではありません。分かるから参る、分からないから参らない、信じるから手を合わす、信じないから手を合わさないということでもありません。
現代では仏壇を構える家がかなり減りました。それは家庭の中で敬う空間を失ったということです。親子三世代が1つの家で住んでいた時代は、家庭内でのすれ違い・喧嘩もあったことでしょう。でも子は親の姿を見ていました。親もその親の姿を見ていました。どんなに厳しいことをいう親・理不尽そうなことをいう親であっても、神仏に対して頭を下げていた敬う姿を見ていきました。
核家族が進み孤独になった現代ではどうでしょうか。家の中で敬うこと、頭を下げることがあるでしょうか。家庭のすれ違いをまとめてくれる存在はあるでしょうか。
三世代のつながりというのは、ただ珍しいからおめでたいことではありません。ともに1つの所で支えあっているから、言葉によらずとも共に思いやり、影響力を受けることができるということです。
ラジオの補足
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