浄土真宗では般若心経を唱えてはいけないのか

浄土真宗僧侶のかっけいです。

私は浄土真宗の僧侶ですが、ときどきご門徒さんから『般若心経(はんにゃしんぎょう)』について質問されます。

  • 浄土真宗では般若心経を唱えてはダメなのですか?
  • 般若心経を写経してはダメなのですか?
  • 般若心経は文字数が少ないから読みやすいのですが、浄土真宗には短いお経は無いでしょ?

ふとその家のお仏壇を見ると、般若心経の経典があり、おそらくふだんから真宗のお仏壇でもお勤めしているのでしょう。

今回は浄土真宗のお坊さんの私が、浄土真宗と般若心経についてお話します。

浄土真宗と般若心経
般若心経と浄土真宗の要点

浄土真宗は、般若心経を唱えるのがダメなのではなく、わざわざ唱える必要がないから使っていない。

ただ、あなたが唱えたいのであれば唱えればいいですし、写経したいのであれば写経すればよろしいです。浄土真宗の門信徒であっても。

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真宗の僧侶は般若心経をお勤めするのか?しないのか?

真宗僧侶は般若心経をお勤めするのか?

いいえ、お勤めしません。

浄土真宗の僧侶の私ですが、仏様の前(阿弥陀仏の前)で般若心経をお勤めしたことは一度もありません。

もっと言えば、般若心経の経典すら持っていません。

しかし誤解があってはいけないのですが、ご仏前でお勤めはしませんが、般若心経の内容については勉強しますよ。

浄土真宗が般若心経を読まない3つの理由

先に説明しておきますが、浄土真宗では「してはいけない」ということは何一つありません。「読んではいけない・唱えてはいけない」のではなく、「あえて読む必要がない。・あえて唱える必要がない」のです。

地域の慣習であったり付き合いによっては、他宗のしきたり・作法に合わせることも大切です。

浄土真宗では「○○してはいけない。・禁止だ」ではなく、「○○する必要がない。」という風に理解していただけると有り難いです。

浄土真宗が般若心経をお勤めしない理由を3つ紹介します。

読まない3つの理由
  • 観音菩薩を拝んでいるから
  • 「羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶」が呪文だから
  • 智慧と慈悲の菩薩道の修行だから

観音菩薩ではなく阿弥陀仏を拝む

浄土真宗の拝む仏さまは阿弥陀仏であり、阿弥陀仏のはたらきによって阿弥陀仏の浄土(西方極楽浄土)に救われるのが、浄土真宗の教えです。

般若心経は冒頭、次のように始まりますね。

観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空……

般若心経

「観自在菩薩(観音菩薩)が、深い仏様の智慧を知るために修行をしていた時に…‥」いう書き出しであり、観音菩薩自身が気が付いた五蘊皆空(ごうんかいくう)を説いた教えです。

浄土真宗の根本となるお経は『仏説無量寿経』であり、無量寿仏(阿弥陀仏)の教えが最も大切です。だから阿弥陀仏の脇侍である観音菩薩の教えの経を、わざわざ読む必要がないのです。

浄土真宗は呪文・真言を唱えない

般若心経は素晴らしいお経なのでしょう。浄土真宗でもお勤めしたらよいのでしょうが、最後に厄介なものがあります。

即説呪曰

羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提僧莎訶

般若心経

「ぎゃていぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい ぼじそわか」などと読みます。

「行こう!行こう!彼岸に行きて、彼岸に到達した人こそ、悟りそのものである。幸あれ」みたいな意味になります。

すべてを漢文にしてくれればよかったのですが、どういうわけか最後の最後を、呪文・真言にして神秘的な密教要素をいれているので、呪文・真言を唱えない浄土真宗では般若心経を使いません。

菩薩の修行をしないから

有名な「色即是空」の言葉に代表されるように、般若心経は空をメインに教えが説かれています。

ただ内容が非常に難しく、般若心経で説かれている仏の智慧を、私たちが理解し自分のものにしていくのは非常に難しいとされます。智慧と慈悲の菩薩道の実践(がんばれ!がんばれ!)が書かれているのですが、これは浄土真宗の教えと合わないのです。

浄土真宗は自分の頑張りによって聖になる教えではありません。浄土真宗は阿弥陀仏の本願他力の教えです。

それは厳しい修行をし煩悩や欲望にとらわれない聖の道を歩める人とは違い、欲や迷いといった俗のなかで生き、誰かの助けを受けお互いに迷惑をかけつつも、阿弥陀仏の私たちにかけられた願いに気づき、阿弥陀仏のはたらきによって救われるのです。

どうしようもないこの私が、阿弥陀仏のはたらきによって救われるのだから、敢えてそれ以外の教え(菩薩の修行を説いた自力の経典)を、浄土真宗ではお勤めする必要がないのです。

般若心経を写経しても読んでも問題ない

浄土真宗は般若心経を否定していませんし、禁止などしていません。写経したいのであれば写経してもよし、読経したいのであれば読経すればよろしいのです。

ただそれは浄土の教えとは異なっていると心にとどめておいてください。

仏教経典に書かれている最終目標は「私が仏となる」ことなのですが、その道が阿弥陀仏のすすめる浄土門と、それ以外の菩薩の修行の聖道門では大きく違っていることに気づかなければなりません。

般若心経に書かれている内容は素晴らしいですが、空の教えを理解して、自分が救われていくようになるのはかなり難しいと思います。それこそ世の中に様々な般若心経の解説本がありますが、悩みや苦しみや欲から離れられず苦しんでいる、私たちの凡夫の世界のままではないだろうか。

般若心経を読むこと書くことでその時だけの気休めになるのではなく、凡夫のままでそのまま救われていく阿弥陀仏の教えにも気が付いていってほしい。それが浄土真宗の人が般若心経に向かうときに心にとどめておくべきことでしょう。


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般若心経に代わる短いお経はないのか

写経や毎日のお勤めをするのに、般若心経の262文字程度が短くて良い

般若心経が好まれる理由に、般若心経が非常に短いお経だというのが挙げられます。

般若心経について補足しておきますと、三蔵法師で有名な玄奘が訳した600巻にもおよぶ『大般若波羅蜜多経』を、いいところだけ集約したのが『般若波羅蜜多心経(般若心経)』の262文字なのです。元ある経典をかなりかなり圧縮しているので、その分、読んでも内容が全く理解できなくなっているのです。

話を戻して、浄土真宗であれば「重誓偈(三誓偈)」や「讃仏偈(嘆仏偈)」がおすすめです。

重誓偈は220文字で書かれた、仏説無量寿経の中の一部です。阿弥陀仏がすべての人々を救う誓いをたてた内容です。

讃仏偈も仏説無量寿経にある320文字のお経文の一節です。阿弥陀仏が自身の師である世自在王仏の徳を讃えている内容です。

5分もあれば読経できますので、お時間が無い時は、阿弥陀仏が説かれている無量寿経の中の重誓偈や讃仏偈をとなえてくださいませ。

ちなみに浄土真宗の宗祖親鸞が書かれた「正信偈」は840文字です。10分ちょっとで読めるでしょうか。

参考に真宗興正派の正信偈の読経音声を紹介します。

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