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第82回目のラジオ配信。「仏間の明るさ」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
つい先日法事のお参りに行きますと、仏間つまり仏壇が置かれている部屋の灯りが薄暗かったんですね。灯りがついているのは、お仏壇の中の灯籠とロウソクの灯り、あとは部屋の真ん中に吊ってある小さな豆電球と、外から入ってくる日の光ぐらいです。
通常の家でしたら部屋の真ん中の蛍光灯・LEDをつけて仏間を明々とされていますが、この前お参りした家では仏壇の中からの灯りがメインで、仏間の空間は薄暗いものでした。
そこで家の人に、「どうしてこんなに仏間を薄暗くしているのですか?」と尋ねましたら、ある浄土真宗のお寺さんから仏間の灯りはこうですよと言われたそうです。
なるほど、お坊さんに聞いたから仏間の照明を落としているんだなあと分かりました。よくそんなお話を覚えていて実際にしてくれたんだなあと感心しました。
ちなみに私も、仏さまにお参りする空間の明るさをおさえるのは同じ意見です。お参りする空間はちょっと薄暗いほうがふさわしいと思います。
家庭にある仏壇。仏壇をおまつりする部屋・仏間はお寺の本堂をコンパクトに表現したものです。お寺の本堂とは仏さまをおまつりする空間のことです。
今ではだいたいどのお寺も、本堂の中は蛍光灯・LEDなどがお参りの人の頭の上・天井に設置されているので、お参りの人は明るい空間の中でお参りできます。
でも昔はお寺の本堂の中は暗いものでした。
電気が無い時代だということもあったでしょうが、お参りの人の空間というのは、基本薄暗く、お堂の外から入ってくる日の光、そして仏様をおまつりする空間のみがロウソクの灯りなどで照らされていました。
お寺の本堂は大きく分けて2つ、仏さまをおまつりする内陣と、参拝者のための外陣に分かれています。お寺のメインは仏様であり、その仏様の安置されている内陣は仏様の世界・お浄土を表現しています。
そのため、仏様の空間の内陣は明るくピカピカとして、内陣の方からお参りの人たちの方を照らすのが本来の形です。
ですから本山とかの宗派の大本の寺。あるいは古いお寺に行きますと、仏様の周りは明るくても、お参りの人側は照明器具が少なく、天井から吊られている灯籠の灯りだけで薄暗かったりします。「なんでこんなにお参りの人の場所は暗いんだ?」と思われるでしょうが、お寺のメインは仏様の内陣であり、お参りの方々の外陣ではないからです。
光は外陣から照らすのではなく、内陣・仏様の方から照らされるからです。
さてそんなわけで、本堂や仏間というのは本来は仏様の周りを明るくして、お参り側はあまり明るくしないものなのですが、現代では事情が違います。
私たちは電気が普及して明るい生活になれましたよね。電気が当たり前にあるんですから、電気をつけて明々とした空間の中でお参りしたいと思うでしょう。
お寺も同じことです。
今では多くの寺の外陣では照明器具がついて、明々としています。仏様の空間・内陣よりも明るいほどです。
昔はお寺は明るくする必要はなかったんですよね。なぜならメインは仏様だったからです。
でも今では仏様からお参りの人が中心になっているような感じです。
例えばお寺の法要で、布教使がお話されると、メモをとられる熱心な人がいます。真っ暗ななかではメモを取るのは難しいですから、灯りをつけないといけません。
またメモをとられる人がいるということは、布教使は黒板・ホワイトボードなどに文字を書きながらお話しようと配慮します。すると、黒板・ホワイトボードを見るためにまた部屋を明るくしないといけません。
昔の浄土真宗の寺での布教・説教というのは、高座(講座)と言われる落語のようにトントントンと高い位置に布教使が座って、お参りの人から目立つような状態で、座ったままでお話しすることもありました。
ですから大した照明もいらなかったのですが、足元が悪いからとか、メモが取れないからとか、布教使が文字を書いて説明するようになったとかで、本堂の外陣、お参りの人の空間もピカピカと明るい空間になるのが当たり前になりました。
もちろん時代時代の流れによって、変化していくのも良いことですよ。
最近では、本堂でなくてもお話を聞けるようにマイクが複数設置されて、スピーカーを何台も設置して本堂でなくても別の部屋からでも聞けるようにしたり、ライブ動画を配信したりと、仏様にお参りする形は変化してきています。
ただ今回のお話のテーマは仏間の明るさです。
昔ながらのお参りの仕方をされるのであれば、お参りのメインは仏様であり、仏様の空間である内陣や仏壇を明るくして、仏様の方から私たちが照らされるような形が、お参りの場ではよりふさわしいと私は思います。
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