こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。
枕経(まくらきょう・まくらぎょう)をご存知でしょうか。
医者から死亡確認がされた後、僧侶を呼び、一番最初に読経するお勤めのことです。
枕経は葬儀以上に経験する機会がないでしょう。
そこで今回は枕経とは何のためにするのか・どのような服装にするのか・いつするのか・お飾りの仕方はどうするのかなどを説明します。
急いでいる人のために先にまとめを。
- 意味:枕経は仏様へのお礼参り。本来は生前にするが、現在では残された人が故人に代わり僧侶を招き読経をする。
- いつ・時間:死亡確認されればなるべく速やかにお勤めする。
- お飾り:仏様の前に布団を敷きご遺体を安置し、頭を北に向ける。お飾りは派手にせず、色を控える。
- 服装:略喪服以上が理想だが、普段着に近い平服でもOK。
- お布施:地域・宗派・寺院によって違う。親戚や檀那寺に相談していただければ。
- 対応・心構え:難しく考えず、気負わないこと。
枕経とはどんな意味があるのか。
枕経(まくらきょう)とは「枕のお勤め(おつとめ)」とも言われます。
枕経というお経文はありません。
他には、臨終勤行(りんじゅうごんぎょう)や無常経(むじょうきょう)とも表現されます。
臨終時のお勤めであり、元々は生前まだ生きているうちにご仏前に向かって読経をして、生前に仏様に出あい支えられたことへの感謝をし、またいのち終えた後に、阿弥陀仏のお浄土に生まれさせていただくことへの感謝の念仏をさしていただきます。(←浄土真宗的な考え方)
(他宗では死者にお経を聞かせて、良いところに行ってくれよ~、迷わず成仏してくれよ~と追善供養的・慰霊的なお勤めとされていることもあります。)
生前の息を引き取る前に本人自身がお勤めするのが本来の姿ですが、なかなか生前にお経を読みながら、念仏を申しながら亡くなっていくのは難しいですね。
ですので現在では、死亡確認された遺体を仏様の前に安置し、仏前を荘厳し、残された人が故人に代わり僧侶を招きお勤めするのです。
枕経は仏様への感謝のお勤めであり、地域によって異なりますが、枕のお勤めをした後にご遺体を納棺します。
枕経はいつ・どんな時間にするのか。
枕経は葬儀の中の一つの仏教儀式です。
多くの場合、納棺する前に枕のお勤めをします。
枕経は臨終を迎えた一番最初のお勤めであり、朝・昼・夜といった決まった時間帯にするのではありません。
亡くなった後、速やかに仏様の周りのお飾りを整え、ご遺体を布団の上に安置します。
現代では檀那寺や菩提寺があってもお寺に連絡することなく、いの一番に葬儀社に連絡する家が多くなった印象です。
でも本当は息を引き取りますとお寺に連絡をし、ご遺体を枕(布団)に安置できしだい、お参りに来てもらうように案内します。
基本的に枕経は時間をおいてするものではなく、なるべく速やかにします。
ですので朝の10時や正午、昼の4時や夜の8時といった枕の用意ができたときに枕経をします。(ただお寺にもよりますが、最近では深夜11時から早朝6時の間は枕のお勤めしないケースもあったります。)
また地域によってはお通夜と合わせて読経をするところや、そもそも枕のお勤めをしない宗派もあったりします。
しかし多くの場合、枕経をします。
それは先ほど説明したように仏様への報恩感謝のお勤めであるのですが、もう一つ現実的な意味として、お坊さんと今後の葬儀の段取りを決める目的もあります。
枕に来たお坊さんにお通夜の時間・葬儀の時間・僧侶の人数・法名(戒名)などなど決めなくてならないことがたくさんあります。特に火葬場の時間が決まらないことに葬儀ができないので、葬儀がいつできるか相談するのは大切なことです。
どんなお供えやお飾りをすればいいのか。
ここ10年程度で葬儀社を利用する家がかなり多くなりました。ほぼ100%くらいかな。
葬儀社とは葬儀の用意を代行する業者のことです。
枕のお飾りは元々はご遺体を生前仮のすみかであった自宅に連れて帰り、お仏壇の前にご遺体を安置します。
しかし最近では葬儀会館にご遺体を連れていかれることもあります。そうなってしまうともう葬儀社に枕のお飾りを頼まなければならないでしょう。
枕のお飾り・お供えは家でも葬儀会館でも違いはありません。
- ご遺体を布団に安置する。
- ご遺体は顔を上向きにして、頭が北側になるようにします。
- 仏様をお飾りします。
- ご遺体を安置するのは仏様の正面はできれば避ける。
- ロウソク・お香・お花の3具足を用意。
- 色が付いたものは控え、なるべく白色を基調とする。
細かい点は宗派や葬儀社によって異なります。
ここでは基本的な最低限のお飾りを紹介しました。
もう少し細かく説明しますが、以下私の地域での浄土真宗の作法だと思ってください。
- 医師による死亡確認がありましたら、まずお仏壇にお光を灯します。
- 続けてお香をお供えし、お花もお飾りします。お花は色花ではなく、樒(しきみ)や青木を用意します。
- ご遺体を布団に安置し、お釈迦様が亡くなられた時のお姿である頭北面西に整えます。(顔を白布で無理に覆う必要はないです)
- 葬儀会館ではお仏壇がないので枕元に白布で覆った机を用意しお飾りしますが、原則ご遺体前にはお飾りせずに、お仏壇内にロウソク・お香・花の3具足を用意します。
- お仏壇がある場合はお仏壇の扉を開けますが、お仏壇がない場合は南無阿弥陀仏の名号や絵像の掛け軸や仏像を別に用意します。(枕経は仏様へのお礼参りですから)
- お飾りは派手にしません。色は控えめにし、打敷も白色のものを用意する。(白い打敷が無ければ、打敷を裏返して使う場合もあります)
浄土真宗ではまじない的なことをしませんので、日時の吉凶・逆さ屏風・守り刀・死に装束・草鞋・六文銭・お水のお供え・枕の団子・山盛りの一膳飯・清め塩などなどは飾りません。
繰り返しますが地域や宗派によってお飾りの仕方は異なります。また最近では葬儀社主導・葬儀社任せになってしまっているので、浄土真宗ではしないようなお飾りもされていることがあります。
どんな服装にするのか。
続けて枕経の服装を説明します。
枕のお勤めとは急にやってくるものです。そしてなるべく速やかにします。
そのため親戚や知人の中でも、比較的すぐにお参りに来れる人のみが参列します。
最近では家族や故人の兄弟のみといった数名の少人数の枕経が増えつつあります。
本格的なお参りはお通夜以降なので、枕のお勤めや納棺の時は気心の知れた人のみでしょう。
ですので、普段着に近い平服で充分です。
もちろん丁寧に略喪服以上の服装で枕経にお参りできればいいのですが、分秒を争うお参りでしょうから、ガチッとした服装でなくても大丈夫です。
普段着に近い平服とは、サンダルや短パン、ジャラジャラしたアクセサリーといった浮ついて見える服装をしていなければOKです。見苦しくなければ大体OKです。
枕経のお布施とは。相場は。
さてお布施が一番難しいです。お坊さんにとって。
なぜなら私もよく分かっていないから。
最近では葬儀屋が「何々のお勤めは○○万円」・「このお勤めは□□万円」、またインターネット上でも「このお布施は相場○○円」と知ったように説明したりします。
もちろんお寺によっても最近では定額制にして、「このお勤めなら・この規模ならこの金額」ということもあります。
ただ本来的に言えば、お布施に金額は定まっていないので「お布施の金額はこれだ」と私は説明できません。
(また日を改めて、なぜお布施を定額にできないのかを説明します)
枕経も葬儀の中の一つの仏教儀式です。
ですので地域やお寺によって考えは違うかもしれませんが、私の所では、枕経・お通夜・葬儀式・火屋勤行・還骨勤行・初夜勤行の一連の葬儀が終わった後で、まとめて葬儀のお布施を預かっています。法名料金も別にいただいたりません。
ですので「このお勤めならこのお布施の金額」とは私からは明確な答えを提示することはできません。
一番の解決策は、親戚に尋ねたり、葬儀を請け負った檀那寺の僧侶に尋ねていただければおおよその目安は分かると思います。
正直お住まいの地域によって全く相場が違います。
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さいごに。枕経は急な出来事。落ち着いて。
枕経はそうそう経験することはないので、知識や経験の豊富な人は少ないでしょう。
また今ここで枕経がどんなものかを知った人でも、いざ家族の死に立ち会いますとパニックになり落ち着いて考えることができなくなるやもしれません。
葬儀社は自社で葬儀法要をしてほしいので病院からいきなり葬儀会館にご遺体を連れていくこともありますが、枕経(臨終勤行)とは生前お世話になった仏様へのお礼参りです。
できれば家のお仏壇前で枕のお勤めをし、気心を知れた有縁の人たちと故人を偲んでほしいです。
お飾りの仕方を今回説明しましたが、難しいことを考えず、最近なら葬儀社に任せてもいいでしょうし(お飾りがおかしくてもお坊さんは指摘しないでしょう)、服装に無理に拘ったりする必要もありません。もちろん挨拶文を練る必要もありません。
枕経はまだまだ葬儀の中の前段階です。
お通夜や葬儀式(本葬)には服装も挨拶も丁寧にしなければならないですが、枕経は急な出来事です。マナーがおかしくても目に余ることでなければ、仕方ないなあと周りの人も思ってくれますよ。
完璧にしようと思わずに、もっと気楽に構えてください。