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第38回目のラジオ配信。「仏教の小さな虫」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
2020年も4月後半になり、朝晩だいぶ過ごしやすくなりましたね。
これがいつもの年なら涼しくて、多くの人が外に出てお仕事したり遊んだり畑をしたり、子どもたちは新しい学校生活を楽しんだりするのですが、今年はコロナウイルス感染予防の外出自粛でそんな雰囲気は一変しましたね。
ニュースを思い起こせば、年末年始に武漢で未知のウイルスが出たと報じられ、その時はまだ誰もが対岸の火事のように大したことと思ってなかったことでしょう。
1月24日からの春節でも安倍総理大臣も訪日歓迎メッセージ動画を送るなど、まだまだ危機感がありませんでした。どこ吹く風だというように。
それが2月に入り、横浜に停泊した豪華客船ダイヤモンドプリンセス号に感染者が出て隔離をするようになってから、「あれっ。これってちょっと危ないかも?」と風向きが徐々に変わってきましたね。
そして北海道で感染者が続いて2月28日に独自の緊急事態宣言を出し、3月からは全国の学校が休校・イベントの自粛、今では全国すべての都道府県で国からの緊急事態宣言が出されています。
最初は気にも留めないような小さなことだったのに、4ヶ月も立つと収拾もつかないほどの大事になっていますね。
この世の中の一連の流れを見ると、私はお経の中に登場する虫のことを思い出しました。
仏教で非常に非常に小さい虫なのですが、これがコロナウイルスに似ているような気がするんですね。
その虫の名前は、迦羅求羅虫(からくらちゅう)、「からくら」という虫です。
龍樹菩薩の大智度論や、曇鸞大師の浄土論註などに登場する虫です。
どんな虫かというと、普段は目に見ることができない大きさで、そこにいるけども分からない虫です。
でも大きな風を受けると、その虫は受けた風の分、どんどんどんどん大きくなり、あらゆる物を飲み込む大きさになることができます。
大きな風の時はすべてを飲み込み、小さな風の時は気がつかないレベルの大きさであり、自由自在に自分の存在を大きくも小さくもできる虫です。
これってなんとなしにコロナウイルスに似ていませんか。
最初、年末年始に武漢で未知のウイルスがでたと言われても、ほとんどの人は気に掛けることのないどこ吹く風でしたよね。
でも周りでどんどん感染が広がり、自分たちの生活が脅かされるようになると、もう連日コロナコロナと私たちの世界すべてをコロナが包み込んでいるような状況です。
もともと仏教で出てくるこの迦羅求羅虫は、仏の教えがどのように広がるかを分かりやすく説いたたとえ話でした。
迦羅求羅虫は風を受けると、あらゆるものを包み込む大きさになります。しかし風そのものではありません。仏教は仏の教えを届けてくれる人びとや場の縁があることで、私たちは教えに出あい、教えに感化され、教えの輪が風となってまた広がっていくのです。
コロナウイルスも何も風がなければ広がりません。
でも私たちは生きていますし、人と交わらなければなりません。コロナの風が広がるのは人間社会がある限り仕方のないことです。
またコロナウイルスは人以外にも存在するので、終息することはあっても完全に撲滅することはできないでしょう。気がつきにくいレベルで、ウイルスは存在し続けるでしょう。
迦羅求羅虫と同じように考えると、普段は目に見えにくい存在でも、そのときの風を受けるといずれまた大きな存在となるでしょう。
今はコロナを恐れて閉じこもっている時ですが、終息したあとは、コロナとともに生きていく社会なんだと意識するべきでないかと思います。風を大きくするのも小さくするのも、私たちの行動次第ではないでしょうか。
ちなみに自然界にいる世界最小の虫はアザミウマタマゴバチの仲間で、1㎜の大きさのアザミウマに卵を産み付ける虫だそうです。体の大きさは0.2mmないそうです。
玄米1粒の横幅は約2mmから3㎜ですから、米粒の10分の1が世界最小の虫だとイメージできますね。
迦羅求羅虫は仏教に出てくる小さな虫で、自由自在に量ることが無いできない大きさで、ほとんど0から無限に大きさを変えます。
コロナはウイルスで、0.1マイクロメートル (0.1 μm)ほどの大きさです。コロナは自然界最小のアザミウマタマゴバチの1万分の1のサイズでですから、そりゃ見えるわけがないですよね。
肉眼で見えるものだけが私たちの世界なわけではないのですから、目に見えにくい存在も意識していきましょうね。
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