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第140回目のラジオ配信。「寺の植物」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
この番組では香川県丸亀市に住むお坊さん、私かっけいが、雑談のような短いおしゃべりをするラジオです。
2022年6月14日配信の今回は、お寺に植えられている植物ってどんなものがあるのかについてお話していきます。
さて、今回お寺の植物について話そうと思ったきっかけですが、私はこの音声を載せている円龍寺のウェブサイトで、円龍寺の蘇鉄の剪定や蘇鉄の種まきなどを紹介しています。
すると先月、蘇鉄の苗と種を分けていただけませんかというメールをいただき、何度かやりとりをして、つい先日蘇鉄の苗と種をお渡しすることができました。
その他にも、蘇鉄に関するお礼のお便りが全国から届きますので、今回は、そんなこともあって、他に寺にはどんな植物が植えられているのかについて話していこうと思いました。
私のいる寺、円龍寺に植えられている植物の他、円龍寺には無いけども、寺によく植えられている植物もお話していきます。
さて、まずは蘇鉄からです。円龍寺のウェブサイトにも写真付きで、蘇鉄の剪定方法、蘇鉄の雄花と雌花、種まきなどを紹介しています。
蘇鉄はもともと日本にはなかった植物だったそうで、室町時代ころから、お城に植えられ、戦国時代頃から寺や学校という教えを伝えていく場所に植えられていったそうです。
蘇鉄は常緑の植物ですが、同じように一年中緑色の植物に松があり、松も寺に植えられます。
蘇鉄や松が植えられる理由はよくわかりませんが、一年中緑色をたもつ蘇鉄や松は、建物の景観をたもつという意味があるとも言われます。
また蘇鉄の葉や松の枝葉は仏花に使えることも理由にあるでしょう。
また浄土真宗では、宗祖親鸞聖人の小さなときの名前が松若丸であったこと、親鸞が長野県の善光寺にお参りする時に、松の枝葉を仏様にお供えしたことも、浄土真宗の寺で松が植えられていることに関係していることでしょう。
ちなみに浄土真宗には高田派があります。高田派は関東にある専修寺が起源の宗派です。松一本・松のみをご本尊の仏様にお供えする習わしがあります。
私もいちど高田派本山でその御荘厳を見ましたが、松一本でありながら、堂々たる迫力で、感嘆しました。
蘇鉄・松につづいて、次はイチョウについてお話します。
蘇鉄・松・イチョウは、ともに裸子植物という点で共通しています。ですが植えられた理由は裸子植物だからではないと思います。
イチョウは水分を多く含む木として知られ、非常に燃えにくく、防火林として、寺が火事にならない願いをかけられて植えられたとされます。
特に有名なエピソードでは浄土真宗の本願寺派の本山に植えられている逆さイチョウ・水ふきイチョウなどの名前がついたイチョウの木があります。今から200年ほど前に起きた京都の大火事のときに、本願寺のイチョウが水をふきだして、お堂を火から守ったという伝説があります。
こんなふうにイチョウは、寺が火事にならず続いてほしいという願いを込められて植えられているのでしょう。
また個人的に思うのが、イチョウは寺の目印になる木なのだと思います。
イチョウは背丈が高くなる木で10m以上にもなります。円龍寺のイチョウも本堂に並ぶほどの高さになり、秋には黄金色の葉が遠くから目にとまります。
昔は大きな建物もなく、お寺の建物もよく見えていたでしょうが、大きなイチョウの木は、それを補うように人びとが集まるための目印になっていたのではないかと思います。
蘇鉄・松・イチョウは円龍寺にもあり、お参りする人の目印となる木となっています。
円龍寺にはその他に、玄関のそばに涅槃桜という桜の木やモミジ、お墓には彼岸花、本堂の裏には、あじさい、また仏様にお供えする青木や樒、塀のそばには、金木犀やつつじやさつきやツバキがあります。
円龍寺では蘇鉄・松・銀杏以外は、人目につきにくいさりげない所に、いろんな植物が植えられていますが、ところによっては、「アジサイの寺」・「つばきの寺」・「ボタンの寺」・「はぎの寺」・「藤の寺」などと呼ばれる寺もあります。
これらは美しい花を咲かせ、お寺の景観を高め、お寺に来られる人を楽しませ、お寺にくるきっかけを作るために植えられています。苔を植えるのも同じような理由です。
ちなみに円龍寺にある桜の木は、涅槃桜という桜で、お釈迦様の亡くなられた旧暦2月15日頃に咲く花で、仏様を偲ぶことができるために植えられた植物でもあります。
アジサイやツバキや萩や藤といったように、美しい花をさかせ、来る人を楽しませる花というのもあれば、仏を思わせる木もまた寺に植えられたりします。
それが涅槃桜であったり、菩提樹や沙羅双樹や蓮という植物です。
ただ菩提樹や沙羅双樹やハスは、仏教で尊い植物なのですが、育てるのが難しいこともあって、アジサイやツバキなどと比べて、どの寺にもあるというわけではありません。
ちなみに私のいる寺・円龍寺には、極楽鳥花を植えています。極楽鳥という鳥に似た花がさくということで極楽鳥花となづけられています。オレンジと青の色の花、スラっとした茎で、とっても美しい花で、仏様にお供えする仏花に極楽鳥花が使われています。
ここまで、蘇鉄・松・イチョウ、樒・青木、桜・アジサイ・つばき・さつき・コケ、また菩提樹・沙羅双樹・蓮などの寺に植えられる植物をいろいろ紹介してきました。
さいごに、2種類の植物を紹介します。
一つは棕櫚の木です。
円龍寺には5年ほど前に最後の一本を切ってしまったので、今は棕櫚の木はありません。
棕櫚の木は、お寺の梵鐘、大鐘をつくときの棒に使われる植物です。
寺では鐘撞きの棒をストックするために、寺の片隅に棕櫚の木を植えていることがあります。
もう一つは楠です。
楠は香川県丸亀市や善通寺市周辺でよく見られる木です。
楠は仏像の木材になります。また寿命は長く、大きな木になり、寺だけでなく、神社でも植えられています。
とくに丸亀市の隣にある善通寺市では、市の木として楠を定めています。
真言宗善通寺派の総本山善通寺は、真言宗の開祖である空海が生まれた寺です。
善通寺の寺には、樹齢が千数百年の巨大な楠があり、空海が生まれたころ、善通寺の創建を偲ばせる木となっています。
ちなみに広島県には世界文化遺産に登録されている厳島神社の鳥居がありますね。
海の中にたつあの鳥居は何度も建て替えられていますが、現在の鳥居の木材は楠で、二つのうち一本は香川県の楠が使われているそうです。
楠は香川県でよく見られ、寺でも神社でも植えられている木です。
棕櫚の木・楠のように、実用的に使われる植物も寺に植えられたりします。
2022年6月14日のかっけいのラジオはここで終了します。来週もまた聞いてくださいな。
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