僧侶のかっけいです。
近年では異常気象ともいうべき天候が続いています。梅雨明け以降、35度以上の気温が当たり前であり、関東から西向きに日本上陸した台風もありました。40度以上を観測する地点も増えつつあります。
豪雨が突然発生したり、局所的に許容範囲を超える雨が降り続けたこともあります。
8月の現在では甲子園にて高校球児が全国高校野球を炎天下のなかプレーしています。
夏にはスポーツ大会や花火大会、夏祭り・盆踊り、追悼式典・お盆・灯籠流しなど様々なイベントがあります。熱中症の予防が広くニュースなどで報じられていますが、実際には夏季に5万人もの人が熱中症の疑いで救急搬送されます。
さて今回のテーマは『お坊さんも熱中症を真剣に考えるべきだということ』です。
というのも、お寺には高齢者をはじめ若者・子供が集まるイベントが開かれることがあります。しかしながらお寺というのは熱中症対策が不十分であります。一昔前はそれほど気に留めることもなかった暑い時期のイベントですが、近年では無視することができない状態です。
スポーツの熱中症は審判もなることを忘れられやすい存在
毎年夏の甲子園の時期には球児の熱中症のニュースが話題になります。「指導者はきちんと対策をとりましょう。給仕の安全第一」と講習会が開かれます。
選手は水分補給時間がしっかりと用意され、事前の体調チェックが徹底されたりします。
しかし審判はどうでしょうか。選手以上に過酷な状況ではないだろうか。
先日私は法事の席で、お参りに来ていた親子連れとお話をしました。その子供さんも少年野球をしており、毎週試合があるそうです。
私は「こんなに暑いと熱中症になったりしないんですか?」とたずねましたら、「しっかりと休みの時間をくれるから大丈夫」と教えてくれました。
すると親御さんが、「一番大変なのは審判です。」と説明してくれました。
- 「選手たちは日陰でしっかりと休み、水分補給の時間もあります。それに攻めと守りの時間があるので、実質半分は休憩時間です」
- 「でも審判をしてくれるのは70歳80歳くらいのボランティアのお爺さんであり、常にグラウンドに立ち続けています」
- 「そのため選手よりも審判の方が危険なんです」だそうです。
ああ、なるほどなあと思いました。
どうしてもイベント・大会になると参加者・出演者のことばかりを考えてしまいますが、実際にはそれを支えてくれている関係者にもしっかりとした対策を考えなければなりません。
仏教行事のイベントは熱中症の対策が不十分ではないか
全国で熱中症によって亡くなられる方や搬送される方が相次いでおり、先日には京都祇園祭の後祭花傘巡行が中止されました。
歴史あるお寺の建物は十分な空調設備がありません。
昔は建物の扉や窓を開け放ち、外からのほどよい風を受けることでイベントをすすめることができていたのですが、今では外気温が35度以上と冷房装置の無いお寺ではいつお参りの人が熱中症になっても不思議ではありません。
熱中症患者の約半数は建物内で発生するともいわれています。
「夏のお寺の本堂は涼しいのではないですか」ともご門徒さんから質問されることもありますが、いえいえ外の気温が高い以上、どれほど風通しを良くしても熱風ばかりが入ってきて全く涼しくありません。(「本堂が涼しくない理由」は以前紹介しました)
お寺には高齢者から小さなお子さんまで幅広い年齢の人が来ます。
熱中症対策が不十分である寺院ではこれからの時代、何らかの対策をする必要があるように感じます。イベントを中止するといった英断が求められる時も気候状況によってはあるかもしれません。
お寺は今後どのような熱中症対策をするべきか
屋外で行われた広島や長崎の平和式典ではミストシャワーやミスト扇風機を設置し、冷却材を参列者に配ったそうです。さらには医者・看護師が控えた救護施設を用意したそうです。
お寺もそれになならえばいいのですが、やはり問題は金銭的な話です。地方寺院では無理です。
本堂に冷暖房の空調設備があるお寺は非常に少ないです。この20年ほどに改修したお寺であれば新たに設置しているかもしれませんが、空調設備だけの設置は一般寺院にはハードルが高すぎます。
とくに古いお寺の本堂では柱と壁に隙間が多く天井が高いため、空調効果を感じにくいです。また巨大な室外機は景観を損ないますし発生する音も厳粛なイベントには相応しくありません。
となるとハードではなく、ソフトな対策が求められるでしょう。
自坊でかつて炎天下に法要した時の対策例を挙げると、「本堂縁にお茶を飲み放題できる場所を設けた」・「塩キャラメルを配った、自由におかわりできるようにした」・「うちわを貸しだした」といった対策をしました。
今では「夏の暑い時期にはイベントをなるべく避ける」・「暑い時期の日中のイベントを避ける」・「冷房の効いてない場所でのお勤めは短めにする」といった対応をしています。
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子供や高齢者は熱中症になりやすい。イベントを中止することも大切ではないか
- 乳幼児は体温調節機能が十分に発達していない
- 子供は背が低く屋外でも活発に動くので熱を受けやすい
- 高齢者は暑さを感じにくい・汗をかきにくく熱が体にたまりやすい・喉の渇きを感じにくい
大人と違い、子供や高齢者は熱中症になりやすいとされます。
どうしても主催者側は例年しているスケジュール通りに物事を進めたくなってしまいます。
しかし十分な熱中症対策をすることができていないお寺では、その時の状況によっては時として半ば強制的に中止や延期を決断する覚悟も大切なのではないだろうか。特に屋外でのイベントでは。
建物内でのイベントは上で挙げたように今まで経験したことのないような状況では、自由に塩分や糖分や水分を補給できる場所を設けたりお勤めの時間を短くしたりと、すぐにできるソフトで柔軟な対策をすることも常に考えなければならないだろう。
夏の暑い時期にはお盆や灯籠流しや追悼法要など、家族がそろってお寺のイベントに参加されたりもします。これからの時代、主催するお寺の僧侶は無事にイベント運営を進められるように工夫することが求められるでしょう。
さいごに環境省の熱中症予防情報サイトを紹介します。『夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン 2018』という題で非常に詳しくPDFファイルで対策を説明しています。イベントを開催する人・参加する人は一度は目にしておくべきでしょう。当然、夏にイベントや法要を主催するお坊さんも熟読しましょう。