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第143回目のラジオ配信。「水不足」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
この番組では香川県丸亀市に住むお坊さん、私かっけいが、雑談のような短いおしゃべりをするラジオです。
2022年7月5日に配信予定の今回は、香川の水不足についてお話していきます。
さて香川と言えば、さぬきうどんが一番有名な感じになっているでしょうが、もちろんそれ以外にもいろんな自慢できる食べ物や産業などがたくさんあります。
ですが、この7月8月ごろになると、香川と言えば、水不足、渇水、取水制限と水に関わることばかりが話題になっているように思います。
実際、香川は水不足になりがちです。
年間降水量は平均的に1200㎜くらいで、全国的にも毎年ワースト10に入るくらい、あんまり雨の降らないところです。
雨の降る年でも1600ミリほど、雨の降らない年だと、1000ミリも降らず800ミリほどの年もあるほどです。
平成の大渇水の年だった平成6年と平成17年のときは、800ミリも雨が降っていませんでした。
香川県は北の岡山にある中国山地と、南の四国山脈の山に挟まれていて、雨雲が香川に届きにくい特徴があります。
瀬戸内式気候といわれているようで、温暖で気候も安定していて、とっても住みやすい場所なんですが、いかんせん雨だけが少なくなりがちです。
香川県の南にある四国山脈の向こう、太平洋側の高知県と比べて、年間降水量に3倍以上の差がつくこともあります。
台風がきても、香川は風もほどほど、雨もほどほど、下手すると晴れ間が見えることもあります。
香川県はそもそも雨が降りにくい場所なんですね。
また香川は南の山から北の瀬戸内海までの距離が短いため、雨が降っても、あっという間に海に水が流れて行ってしまいます。
香川の川はふだんは水の量がすくなく、歩いて渡れるほどなのに、ひとたび雨が降るとあっという間に水かさを増します。
雨が降りにくい場所、雨が降ってもあっという間に流れてしまう。こんなわけで香川県は水不足になりやすいんですね。
さて今年2022年も香川は水不足になりそうな感じです。梅雨らしい梅雨ではなく、ほとんど雨が振らず、6月末現在、四国の水供給を支えている高知県の早明浦ダムも貯水率が40%を下回るほどで、そろそろ第三次の取水制限をするようです。
ただしちょっと補足ですが、案外香川の人って、取水制限という言葉を聞いても、そんなに緊迫感、切迫感というのは感じないんですね。
なんか香川県の外の人からすると、取水制限って生活するのに支障をきたすんじゃないか、満足に生活できなくなるんじゃないかと思われるかもしれませんが、全然そんなことはありません。
言葉の説明を先にしておきますと、早明浦ダムというのは、高知県から徳島県に向かって流れる吉野川に作られたダムで、1975年に完成しました。この早明浦ダムの水は、生活用の水だけでなく、工業用、農業用などの水が、四国四県に供給されています。
ちなみに早明浦ダムからの水の配分は、徳島県が5割ほど、香川が3割弱、愛媛県が2割強、高知県が数パーセントほどです。
高知の早明浦ダムの水が香川県に届けられて、香川の水不足を補っています。取水制限はこの香川に送る水の量を減らすということです。
つまりこれから行われるであろう第三次取水制限だと、早明浦ダムから送られる水の量が50%ほどになるということです。
でこれが注意点ですが、早明浦ダムから香川に送られる水の量が50%になるからといって、香川県で使うことができる水の量・蛇口をひねるとでてくる水の量が50%になるわけではありません。
香川県に住んでいれば分かるでしょうが、早明浦ダムからの取水制限を受けても香川で流れている川の流れはほぼかわらないはずです。また蛇口をひねると出てくる水もほぼ同じです。
取水制限は50%少なくなっても、蛇口から出てくる水の量、給水量は5%から15%ほど少なくなる程度であって、生活するのに困る、生活できない、水がないというわけではありません。
もちろん水やり、お風呂、料理、なんでもできます。
早明浦ダムから来る水が50%減る第三次取水制限があっても、香川の生活はほぼ変わらず、蛇口から出る水も今まで通り、所によって5%から15%ほど減圧給水されている程度です。
どうして渇水の年、早明浦ダムの貯水量が減り、取水制限が強化されていても、香川はまだまだ大丈夫なんでしょうか。
理由は、早明浦ダムひとつに香川の水を任せているわけではないからです。
香川県は昔から水の少ない地域です。
そのため1000年以上前から大小さまざまなため池が作られています。特に有名なのが、弘法大師空海が修理に携わった日本一の灌漑用ため池の満濃池があります。
満濃池の水は、香川の西を流れる金倉川流域をうるおし、田畑に水を供給します。
時には早明浦ダムからの水を補うために香川用水に供給することもあります。
香川にはその他にも、椛川ダムや宝山湖などなど、生活用水、農業用水を補うダムや池があります。
また工業用水は地下水を利用したりと、早明浦ダムの貯水量が減り、取水制限が起きても、香川の人はそんなに慌てたりはしない感じです。
1975年から運用されている早明浦ダムですが、この50年ほどで、30回ほどの取水制限が行われていて、まとまった雨が降らないと、取水制限があるのが当たり前のように感じるほどです。
もちろん雨の少ない香川の人にとって、早明浦ダムの水は香川県の水利用の半分を占めているので、早明浦の水は常に気がかりです。
小学校の頃から、水の教育、水を大切に利用する事を学びます。
雨の降らない渇水の年だと、学校のプールは禁止、公共の水飲み場、プールも禁止などと、水を使えないこともあります。
また田植えをされる農家は水利のグループを作って、ため池から送られてくる水を適切に分配できるように努力します。
香川では小さな用水路のことを「いで」と表現します。田植えが始まる前の5月ごろは「いで」の掃除をする「いでざらい」をします。
農家の人はもちろんのこと、農家でない人も生活をするために水を流すので、いでの掃除を手伝うことがあります。
最初の方に言いましたが、香川は雨がふるとあっという間に水かさが増します。いでの掃除をするということは、水を大切に利用するという気持ちだけでなく、水の被害を起こさないという側面があるのだと思います。
どうでしょうか。水不足の香川について、なんとなくご理解いただけたでしょうか。
現在、台風4号が近づいているようです。
雨の少ない香川では、台風が水不足を補う貴重な恵の雨になることもよくあります。
過去には貯水率が0%だった高知県の早明浦ダムが一日にして貯水率100%になったこともあります。
被害が出ない程度の、ほどよい雨が降ることを願うばかりです。
以上で、2022年7月5日配信予定のかっけいのラジオはここで終了します。
ちなみに平成6年や平成17年の過去の大渇水を例にすると、早明浦ダムの貯水率が20%を下回ると、香川県民もかなりの危機感を覚えます。
早明浦ダムに頼っている割合は、香川県の市町村によって異なるので一概に言えませんが、場所によっては取水制限は第三次のままでも、給水制限を強化して、水道水の圧力を30%近く減らす可能性があります。給水制限を20%以上にすると、さすがに蛇口からの水が減ったと感じるようです。
早明浦ダムの貯水率が15%を下回ると第四次取水制限になり、香川県への水の取水が75%カットになります。水道水はまだ使えますが、この第四次取水制限レベルになると、給水車による水の給水や、飲食店の時短営業が行われます。
また井戸水を飲み水に利用するところもでてきます。
そして夜間5時間などの夜間断水などの措置が取られたりもします。
こんな風に早明浦ダムの貯水率が20%を下回り、さらに第四次取水制限になると、いよいよ本格的な渇水の年となり、生活に支障がでてきます。
もうひとつ余談をいいますと、仮に早明浦ダムの貯水率が0%になっても、本当に水が0になったわけではありません。まだ早明浦には水が残っています。
かつての平成6年や平成17年の大渇水の年は、0%になっても、発電用の水を緊急に利用しました。
早明浦ダムの貯水率は水道用・農業用・工業用の水の量を表しているので、発電用の水は含めていません。ですので、貯水率が0%になってもまだ早明浦ダムには水が残っているので、香川に水を送ることができ、香川の水が止まることはありません。
またこれまで使われたことはないようですが、発電用の水も使い切った場合は、ダムの底に残ったほんとうに最後の最後の水を使うようです。
0%になってからが正念場ではないですが、節水を積み重ねることで、香川は渇水の年でも何とかのりきってきました。
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