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第221回目のラジオ配信。「旧正月のお参り」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
これは香川県丸亀市にいるお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをする音声配信です。
2024年の今年は、2月10日が旧正月でしたね。
今回は旧正月にするお参りをテーマに短く雑談していきます。
皆さんは旧正月のお祝いをしますか?
旧正月と言ったら、中国や韓国でする旧暦のお正月のことでしょう。中華圏の国から観光客が大勢やってくるあの春節の時期のことなんでしょう。他所の国のイベントといった印象かもしれませんね。
日本では旧正月のお祝いはしない。ましてや旧正月にお寺や神社にお参りに行くもんなんですか?とイメージする人も多いかもしれませんね。
でも私の住んでいる地域、香川県の丸亀市金倉町では、旧正月のお参りがあります。
旧正月のお参りの一例として、私のいる香川県丸亀市金倉町のお話をしますね。
この地域では、毎年旧正月の日に、老人会の主催で金倉町内にある神社一つと五つのお寺を順番に歩いてお参りしています。
金倉一社五か寺参りという名前がついている旧正月のお参りです。
金倉町に住むお年寄りたちが、午前中に地域の産土神の八十主神社に集まります。その神社から町内にある5つのお寺を順番に歩いてお参りしていきます。
私のところ円龍寺も金倉町にある5つのお寺の内の一つです。
5つのお寺をお参りする順番は毎年違っていて、最後のお寺も毎年違います。最後にお参りするお寺では、そのお寺の住職がお勤め・読経をし、住職による法話があります。
金倉町では旧正月に地域のお年寄りたちがそろって地域の神社とお寺を巡ってお参りし、読経し、法話を聞きます。神社とお寺参りのあとは、集会所に集まってお食事をして懇親会をしています。
参加人数は天候にもよりますが、30人から40人ほどが旧正月のお参りをしています。
この話を聞いて皆さんはどう思いますか?
旧正月にお寺や神社にお参りするなんて変わっているねと思うでしょうか?
いやいや、別に変ではないですよ。
お年寄りの人たちから聞いたお話によると、つい70年ほど前は、お正月は1月1日よりも旧正月の方がお正月らしかったといいます。
金倉町以外の周りの地域でも、戦後間もないころや、1950年代は旧正月にお餅をついて食べたり、お正月のお祝いのお飾りをしたり、お寺や神社に初詣に行っていたそうです。
その旧正月の習慣が私の住む丸亀の金倉町ではまだ残っているというわけです。
それでも最近は旧正月のお参りというのは、私の住む地域を除いてはあまり聞かなくなりました。
昔のように旧正月をお祝いする地域はかなり減っています。
理由は2つほどあるらしいです。
一つ目は、戦後間もないころには明治の人たちが大勢いたことです。
戦前のときも新暦の暦はごく当たり前のように使われていたそうですが、明治生まれの人たちは、旧暦のイベントも大事にしていて、お正月のお祝いやお参りは旧正月の方をメインにしていたそうです。
それが明治の人たちがいなくなるにつれて、しだいに旧暦のお正月を使わなくなり、旧暦を祝わなくなったというのが一つ目の理由です。
2つ目の理由は、紅白歌合戦や年賀ハガキというものです。
1950年代の後半になると、紅白歌合戦や年賀ハガキの熱がすごかったらしいです。
あれだけ賑やかに紅白歌合戦の番組や新年の年賀はがきのやりとりをしていたら、年末年始の気持ちが旧暦から新暦に移るのは自然なことだったとのことです。
そんなことがあってか、1960年代以降、旧暦から新暦の日にちの方で、新年のお祝いをしたりお寺や神社にお参りするように変わっていったと言います。
旧正月にしていた新年のお参りやお祝いのイベントが、徐々に新暦の1月1日に変わるようになって、結果として、今、旧正月のお参りをしているところは減ったとのことです。
それでも私のところのように、地域でする旧正月のお参りが残っているところもあります。
旧正月にお寺や神社にお参りするのは、何もおかしな話・変ではありません。
むしろお坊さんの立場から言えば、せっかくの新しい節目のご縁なのですから、ぜひ旧正月にもお寺や神社にお参りされることをおすすめします。
ちなみに旧正月のお参り場所は、新年の初詣と一緒で、お寺でも神社でもどちらにお参りしても構いません。
私の地域のように、両方お参りするのももちろんOKです。
もっといえば、新年の初詣でも同じことが言えますが、こういった新年のお参りは、有名なお寺や神社に行きがちですよね。
でもお住まいの近くのお寺や神社、大切な人のお骨を納めているお墓や檀那寺、そういった身近なところをお参りすることを私はおすすめします。
それと家のお仏壇に手を合わせるのもいいでしょう。
お勤めができなくても、お花を供えて手を合わせるだけでも十分なお参りだと思います。
今回は「旧正月のお参り」をテーマにお話をしました。
新暦でのイベントが当たり前になっている今の時代ではありますが、旧暦のイベントも大切にしている地域も残っています。
それにまた、自分たちが知らないだけで、私たちの身近なところでも、旧暦由来や月遅れのイベントというのもあったりします。
そういった一つひとつのご縁を大切にして、人や地域との交流、お寺・神社にお参りするきっかけとなれば幸いです。
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