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第103回目のラジオ配信。「ポッドキャストの目的と魅力」をテーマにお話します。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
この番組では香川に住むお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをするラジオです。
今回は前回のテーマ「音声配信」に続いたお話です。
前回の内容を振り返りますと、音声配信の魅力はながら聴きができることとされますが、私にはながら聴きが魅力とは思えないことです。音声を聞きながらメインの作業を十分にすることなんてできないんですから、ながら聴きを目当てに音声コンテンツをおすすめするのはどうなのかなあと思います。でも、ニュースといった一日の中で繰り返し放送され、新しい情報もアップデートされていくジャンルであれば、ながら聴きできるかもということを前回お話しました。
さて前回の配信の後で、こんなお便りが来ました。
じゃあ、かっけいさんの思う音声を聞く魅力は何で、どういった目的で他の人の音声を聞いているんですか。かっけいさんはながら聴きしないんですか?
今回はこのご質問にお答えする内容で短くお話していきます。
まず私の結論をお話する前に、日本国内でラジオやポッドキャストといった音声メディアを聞いている人が、どんな目的で音声を聞いているのかを調査したデータをいくつか紹介します。
1つはトレンド総研が2015年にラジオの利用状況を調査したものです。
それによると、聞くシーンで最も多かったのが全体の45%で自宅でくつろいでいるときでした。特に若い世代ほど自宅でくつろいでいるときの傾向が強く、10代では64%が自宅で聞いていました。
ついで多かったのが、通勤通学・車の運転中だったそうです。いわゆる移動しながらのながら聴きというものです。ながら聴きは年代が高くなるにつれて傾向が強くなり、50代では58%が移動中のながら聞きだったそうです。
聴く理由・目的は「作業中などのBGM代わり」が一番多い理由でした。また他にも「気分転換」や「情報収集」や「音楽を聴くため」といった理由・目的も多い結果でした。
2つ目のデータは、株式会社オトナルと朝日新聞社が2020年12月に調査したポッドキャストの利用状況です。
それによると、ポッドキャストの普段聞いているジャンル一位は「ニュース」の54.8%、次いで「音楽」の52.4%と、それぞれ50%以上で高い数値でした。ポッドキャストで音声配信をきいている人の半分以上が、ニュースと音楽を聴いている結果となっています。
ちなみに3番目のジャンルは29.2%で「コメディ・お笑い」となっています。
3つ目のデータは、2021年2月にトレンダーズ株式会社が「音声メディアに関する利用実態」を調査したものです。
それによると「音声メディアを使う理由」の1位は39.8%で「他人の声や会話を聴くのが好きだから」でした。2位は30.1%で「時間を有効に使いたいから」、27.7%で「常に何か音声を聴いていたいから」というものでした。
されこれらの調査データを踏まえて、今回のお便りの返事をします。
私の利用状況もこれらと同じで、音声メディアを聞く理由・他の人の音声コンテンツを聞く理由というのは、情報収集といったものでもながら聴きをするものでもありません。
くどいようですが、私にはメインのことをしながら音声を同時に聞いて情報収集して作業をするといった、二兎追うもの・あぶはち取らずのことはできません。
私が音声を聞く理由は、BGM代わりです。情報取集といった大層な理由ではなく、耳に何か誰かがお話しているスピーチが耳に入ってきて、何か耳に引っかかるような興味のあるような言葉が耳に届けば、ちょっと手を止めて聞いてみようかなあというつもりで聞いています。
ふだんは作業しているときは、まったく耳に入っていません。
それだったらテレビをつけっぱなしでもいいじゃないと思うでしょう。
でもテレビは音声だけでなく視覚の情報が大きいので嫌でも目が行ってしまい、集中力がなくなってしまいます。
一方でポッドキャストといった音声コンテンツは耳だけの情報です。興味が無ければ耳にも触らないので、集中力は維持できるままです。
私の場合はながら聴きをするために音声を聞くのではなく、作業用するときのBGMとして音声を流しています。
そもそもながら聴きではどんな立派なお話の内容も届いてこないので、集中力を維持するため、あるいは作業の気分転換をするために音声を流しています。
これが私かっけいが、音声コンテンツを聞く目的です。
作業をしながら音声も聞くのではなく、作業のために音声を流すです。
続けて私が思う音声を聞く魅力についてお話します。
私が思う他の人の音声配信を聞く魅力は、1つは顔も知らない他人のお話を聞くことができること。もう1つは今までつながりが無かった世界の人のお話も聞くことができることです。
一昔前でしたら情報発信といえば大きな会社がするテレビやラジオでしたでしょうが、今では小さな一個人でも自由な内容で文字のコンテンツや、動画のコンテンツや、音のコンテンツを発信できるようになりました。
個人で発信しているものですから、手作り感ある粗野なものもあります。私のかっけいの円龍寺ラジオも粗野な作りでしょう。2000円ほどのマイクで収録して、大した編集もしていない簡単なつくりの音声配信です。話し方も下手ですよね。
でもだからこそ音声を聞くことが魅力になるとも思うんですよね。
大手の配信する物や人気ほにゃららが配信する物っていうは、きれいすぎるというか洗練されていて、見ていても面白みがないです。
でも小さな個人が伝えようとしているものって、何か会話しているようなものがあって、私に伝えているようなものがあって、耳にしてもそんなに嫌な感じがしないんですね。
顔も知らない他人のお話を聞くことはけっこう素晴らしいもので、顔もまったく知らない、詳しくどこに住んでいるかも知らない、どんな人柄かも知らないと、謎めいた相手であると、次も配信するのかなあ、次はどんな内容にするのかなあと、いろんな想像力をめぐらすことができるのが面白いんですね。
それが顔も知らない他人のお話をきく魅力だと思います。
加えてお便りを出すのも精神的に楽です。私のかっけいの円龍寺ラジオもそうですが、自分とはつながりもなかった関係のない相手だからこそ、気軽に、いろんな意見・感想を送ってくださるのだと思います。
それって非常に有難いことで、音声を配信している人も顔を知らない人たちに対して、本当に聞いているのかも分からない人たちに対してお話しているのですが、そういうお互いに知らない関係であるからこそやりとりできる関係があり、魅力に感じるんですね。
それともう一つの音声配信の魅力に、自分の知らない世界とつながれることが挙げられます。
音声配信の魅力はその気軽さです。
私かっけいはお坊さんです。
お坊さんはお寺のこと、仏教のこと、お葬式に関することといったことは詳しくても、それ以外のことはあまり知りません。
仏教に詳しくても、世界には日本には他にいろんな宗教や習俗、文化があります。地域が違えば、日本の中でもいろんな形があります。
それらの異なった景色を音声コンテンツでは気軽に聞くことができるのが魅力です。
例えば私がたまに聞くポッドキャスト番組の一つを例に挙げますと、「web礼拝・国分寺キリスト教会」というものがあります。
キリスト教といえば、日曜日の礼拝がありますよね。日曜礼拝は有名ですが、仏教のお坊さんはその中身を全然知りません。私も知りませんでした。
でもポッドキャストで香川県高松市にあるプロテスタントの教会の礼拝音声を聞いて、ああこういったことをしているのだなあと参考になりました。特にお祈りの言葉が参考になります。
仏教でも法要の時には表白があります。表白は仏様の徳を讃え法要の趣旨を明らかにする言葉というものです。でも正直なことを言いますと、表白の内容はテンプレと言いますか、いつもだいたいおんなじことを言っているんですね。
でもポッドキャストで聞いているプロテスタントのお祈りの言葉は、非常に参考になります。
毎週毎週お祈りの言葉が違うんですね。その時の世情と言いますか、今の身の回りのことをお話をして、その時の心の状態、思っていることを神に報告するつもりで言葉にしているんですね。
言葉づかいもさることながら、ありのままに祈る言葉というのも、お坊さんの私は参考になりました。
こういった自分とは違う世界の内容というのは、音声だからこそ知ることができたのだと思います。
私たちはたとえ興味があっても、自分と違う宗教の建物、カトリックやプロテスタント、またイスラムや神道といった空間に行くことは難しいでしょう。
でも音声であれば、自分の知らない世界でも、ああこういったことをしているんだなあというのを、ハードルを下げて知ることができるのが魅力です。
それは宗教だけに当てはまる話ではありません。政治が好きな人でも宗教の話を行かなくても聞けますし、教育好きな人が農業の話を聞くこともできます。
自分と違った分野、自分が普段出あえることができない世界のお話でも、気軽に出あうことができるのが音声の魅力です。
最後に今回の話をまとめます。
- 私はながら聴きしません。
- 私が音声コンテンツを聞く目的は、作業のために音声を流します。
- 魅力は、顔をも知らない相手の話を聞く関係性と、自分の知らない世界のことを気軽に出あえることの二点です。
ラジオでは3つの調査データから、音声を聞くことに関するデータをピックアップしてお話しました。より詳しいデータはリンク先より確認ください。
- 「ラジオ聴取」に関する意識・実態調査(共同通信ピー・アール・ワイヤー)
- オトナル、朝日新聞社と共同で「ポッドキャスト国内利用実態調査」を実施(PR TIMES)
- 「Clubhouse」で注目を浴びる「音声メディア」調査結果(ロボットスタート)
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